SSブログ

ZIGGY STARDUST : THE MOTION PICTURE / DAVID BOWIE and THE SPIDERS FROM MARS [デヴィッド・ボウイ]

 1972年の1月にイギリスからスタートした「ジギー・スターダスト・ツアー」は、北米と日本ツアーを間に挟み、翌73年7月3日・4日のハマースミス・オデオン(ロンドン)2daysで幕を閉じる(この間73年4月には『アラジン・セイン』がリリースされている)。最終日の7月4日のステージは『ジギー・スターダスト:ザ・モーション・ピクチャー』として映画化され(D・A・ペネベイカー監督)、1983年に公開され、またこの日の公演を収録したライヴ・アルバムも同時にリリースされた。2013年には「30周年記念エディション」として2枚組CDがリリースされ、「チェンジズ」が映像版と同じ位置に修正されるなどの変更が行われている。またDVDは映像・音声ともにリマスタリングされ、監督のD・A・ペネベイカーとトニー・ヴィスコンティのコメンタリーが収録されている。

IMG_1544.JPG


ZIGGY STARDUST : THE MOTION PICTURE
30th Anniversary 2CD Set (2003)
【Disc 1】
 01. Intro (incorporating "Beethoven's Ninth Symphony")
 02. Hang on to Yourself
 03. Ziggy Stardust
 04. Watch That Man
 05. Wild Eyed Boy From Freecloud
 06. All the Young Dudes
 07. Oh! You Pretty Things
 08. Moonage Daydream
 09. Changes
 10. Space Oddity
 11. My Death

【Disc 2】
 01. Intro (incorporating "William Tell Overture")
 02. Cracked Actor
 03. Time
 04. The Width of a Circle
 05. Let's Spend the Night Together
 06. Suffragette City
 07. White Light/White Heat
 08. "Farewell Speech"
 09. Rock 'n' Roll Suicide


 音だけでも十分楽しめるが、シアトリカルなステージが魅力であるボウイのこと、一度映像を見てしまうと音だけではやはり物足りなくなってしまう。「ジギー・スターダスト」のオープニングでの「ah!」というため息、ドヤ顔とも言えそうな不敵で妖しい微笑、山本寛斎デザインの「出火吐暴威」マントを羽織ってマウス・ハープを吹く「クラックト・アクター」などカッコいいボウイが十分に堪能できる。がしかし、この映像ではミック・ロンソンもまたカッコよく撮られている。「円軌道の幅」(トニーヴィスコンティ曰く「クリーム風の曲」)で端正な顔を歪めながらひたすらドライヴ感溢れるギターを弾きまくる姿には、思わず引き込まれてしまう(この曲の最初と最後では、故リンゼイ・ケンプに師事していたボウイがパントマイム風の動きを見せる)。右手を挙げ、左手だけでギブソン・レスポール(トニー・ヴィスコンティも磨くのを手伝ったという)を弾く姿にもシビれる。

 ラストの「ロックンロールの自殺者」の前では有名な解散宣言を行い、会場から悲鳴が上がるが、ヴィスコンティによれはロンソンだけは解散宣言を事前に知らされていたそうで、この点でもボウイのパートナーだったロンソンに対する「特別扱い」がうかがえる。知らされていなかったウッディ・ウッドマンジーとトレヴァー・ボルダーは、解散宣言直後の「ロックンロールの自殺者」では演奏に動揺が感じられたとヴィスコンティは語っているが、あまりよくわからない。

 「グラム・ロック」というと、メイクや煌びやかな衣装から中性的~女性的な印象を持ってしまうが、このDVDを観ると、ボウイのステージは確かにグラマラスではあるが、一方ではパワフルでアグレッシヴでもある。トニー・ヴィスコンティがDVDコメンタリーで「アメリカのグラムはマッチョだった」とコメントしているが、こうしたエネルギッシュなステージもアメリカ・ツアーの成功には良い方向に働いたのかもしれない。

 さてこの日のステージにはジェフ・ベックが飛び入りしたことでも知られているが、オフィシャル盤には収録されていない。飛び入りの様子は音も映像も残されており(アメリカのABCで放送された)、「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」の後にボウイがベックを紹介し、「ジーン・ジニー~ラヴ・ミー・ドゥ」、チャック・ベリーの「アラウンド&アラウンド」を一緒に演奏している(例の解散宣言は、ベックとの共演の後に行われた)。ベックとの共演部分について、ヴィスコンティはDVDのコメンタリーで興味深いエピソードを紹介している。曰く「ベックはギターソロに不満があるというので、後日スタジオでオーバーダビング用のソロを録りなおしたが、とても素晴らしい演奏で、2つのテイクを1つにつなげた」という。ベックもその演奏に満足していたようで、当然発売OKになると思っていたのだが、後日ベックから「やはり使わないで欲しい」という連絡が来た。ヴィスコンティは憤るわけだが、その理由というのが「ステージ上で自分のファッションだけが浮いている」というものだったらしい。確かに「ロック史上に残る記録」としては極めて重要なシーン&演奏だが、コンセプチュアルな映画作品という点から考えれば、やはりベックは「異物」感が強い。そのことをベックもわかっていたに違いない。
 
 トニー・ヴィスコンティは、ボウイとマーク・ボランという2大グラム・スターのどちらにも深く関わっており、DVDコメンタリーでもたびたびボランに触れている。ヴィスコンティはボウイについて「完全燃焼した」とコメントしてるが、片や完全燃焼できなかったボランは、ボウイがジギーに終止符を打った後もグラム路線からキャラクターの変更が出来なかった。結果的に、アメリカ市場でも着々と成功したボウイと明暗を分けてしまったのだろう。

 音源の方は良好なSBで、開演前にキーボードのマイク・ガーソンがピアノでボウイ・ナンバーのメドレーを華麗に弾く様子や、ジャック・ブレルのシャンソン・ナンバー「マイ・デス」を弾き語りする際に、静かにするように観客に求め、ざわめきがおさまらないため、スタートした演奏を中断する様子も記録されている(ABC版にも収録)。 

この日のコレクターズ盤としては、解散宣言中の言葉を引用したタイトルのEmpress Valley Supreme Disc『THE LAST SHOW THAT WE'LL EVER DO』(2CD+1DVD)が、音も映像も楽しめるよいアイテムである。

IMG_1545.JPG



Ziggy Stardust


The Width of a Circle


David Bowie & Jeff Beck - The Jean Genie / Love Me Do,Round And Round

ジギー・スターダスト・ザ・モーション・ピクチャー(CCCD)

ジギー・スターダスト・ザ・モーション・ピクチャー(CCCD)

  • アーティスト: デヴィッド・ボウイ
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2003/03/29
  • メディア: CD
ジギー・スターダスト [DVD]

ジギー・スターダスト [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • メディア: DVD


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。