アビイ・ロード 50周年記念 スーパー・デラックス・エディション [ビートルズ]
CD 2: セッションズ
01.アイ・ウォント・ユー(トライデント・レコーディング・セッション&リダクション・ミックス)
02.グッドバイ (ホーム・デモ)
03.サムシング (スタジオ・デモ)
04.ジョンとヨーコのバラード (テイク7)
05.オールド・ブラウン・シュー (テイク2)
06.オー!ダーリン (テイク4)
07.オクトパス・ガーデン (テイク9)
08.ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー (テイク36)
09.ハー・マジェスティ (テイク1‐3)
10.ゴールデン・スランバー/キャリー・ザット・ウェイト (テイク1‐3)
11.ヒア・カムズ・ザ・サン (テイク9)
12.マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー (テイク12)
CD 3: セッションズ
01. カム・トゥゲザー (テイク5)
02. ジ・エンド (テイク3)
03. カム・アンド・ゲット・イット (スタジオ・デモ)
04. サン・キング (テイク20)
05. ミーン・ミスター・マスタード (テイク20)
06. ポリシーン・パン (テイク27)
07. シー・ケイム・イン・スルー・バスルーム・ウィンドウ (テイク27)
08. ビコーズ (テイク1 – インストゥルメンタル)
09. ザ・ロング・ワン (トライアル・エディット&ミックス)
10. サムシング (テイク39 – インストゥルメンタル- ストリングス・オンリー)
11. ゴールデン・スランバー/キャリー・ザット・ウェイト (テイク17 – インストゥルメンタル – ストリングス&ブライス・オンリー)
マーク・ルウィソ-ン著『ビートルズ・レコーディング・セッション』(シンコー・ミュージック)の1969年4月14日(月)の項には「ジョンとヨーコのバラード」について「第4テイクに入る前には、ジョンがドラマーのポールに「テンポを少し上げてくれ、リンゴ!」と言い、ポールがギタリストのジョンに「OK、ジョージ!」と答える微笑ましい場面も。」という記述がある。今回収録されている第7テイクにはそのやりとりがつけくわえられており、二人の言葉の間には笑い声も聞こえる。マーク・ルウィソーンも書いているが、「グループ末期のメンバーは仲が悪かった」という通説を覆すようなやりとりで、大変興味深い。
一番の聞き物は、CD3に収録されている「ザ・ロング・ワン (トライアル・エディット&ミックス」。このセットに収録されている様々な曲を編集で1つにつなげたテイクだが、ルウィソーン本の1969年7月30日を読みながら、オリジナルと聞き比べてみるとなかなか楽しい。
(1)オリジナル盤ではラストの「ハー・マジェスティー」が、このミックスでは「ミーン・ミスター・マスタード」と「ポリシーン・パン」の間に位置している。
(2)「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」と「サン・キング」のクロスフェイドのつなぎがオルガンで、オリジナル版のSE(カウベルや虫の声:ルウィソーン本によれば8月5日にポールが付け加えた)が入っていない。
(3)「ゴールデン・スランバー/キャリー・ザット・ウェイト」「ジ・エンド」にストリングス(8月15日)が入っていない。「ジ・エンド」のオーケストラについて、ルウィソーン本の8月15日の項に「ほんの数秒のため」「念の入った入ったオーケストラ・オーバーダブ」という興味深い記述がある。オリジナル版では「Is equal to the love you make」の「love」にかかって入るオーケストラのことだろう。「ジ・エンド」にはヴォーカルも素晴らしいギターソロも短いピアノ(8月18日)も入っていない。
「マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー」のリリース版はヴォーカルから始まるが、テイク12はドラムからはいる前奏がついたテイク。最初にポールが入り方を指示しているのが面白い。ルウィソーン本によればテイク12のレコーディングは7月9日で、あの素晴らしいムーグがオーバーダビングされたのは8月6日。したがってムーグはまだ入っていない。8月5日の項によると、ポールはリボン・コントローラー(キース・エマーソンがステージで振り回していた)でムーグを演奏したらしい。前奏にムーグをオーバーダブしたテイクもあり、これを収録して欲しかった。
色々と興味深い『アビイ・ロード』音源だが、結局は「聴くならやはり公式オリジナル・アルバム」という点に落ち着く。「オクトパス・ガーデン (テイク9)」で歌詞の入りを間違えるリンゴ 、「マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー (テイク12)」で歌詞を忘れて鼻歌でごまかすポールなど、聞き所は多い。が、それは「オリジナル盤を相当に聞き込んだ人にとって」という条件がつく。インストのストリングスだけのテイクなど、ある程度ビートルズ音源を聴聞き込んできた私でさえも「一度聴いたら十分」的なマテリアルにすぎないし、ムーグ抜きの「マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー 」、ヴォーカルとギターソロなしの「ジ・エンド」、そしてムーグとコーラス、手拍子なしの「ヒア・カムズ・ザ・サン」なんかを聴いて喜ぶのは相当なマニアだけだろう。収録されているボツテイクを聴いて、改めてオリジナル盤を聴いてみるとその凄さが再認識できる。そういうセットである。
アビイ・ロード【50周年記念スーパー・デラックス・エディション】(完全生産限定盤)(3SHM-CD+Blu-ray Audio付)
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Universal Music =music=
- 発売日: 2019/09/27
- メディア: CD
コメント 0