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LIKE AN OLD FASHIONED WALTZ / SANDY DENNY [サンディ・デニー]

 30年前、私が大学を卒業して就職した年の改元は、自粛ムードで暗い雰囲気だった記憶がある。今回の改元は明るく祝賀ムードが感じられ、それだけでも感謝したい。心穏やかに平成を送り、そして新しい元号「令和」を迎えたい....という気持ちで平成最後の日に耳を傾けたのは、サンディー・デニーの3枚目のソロ・アルバム『オールド・ファッションド・ワルツ』である。


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LIKE AN OLD FASHIONED WALTZ (+14) / SANDY DENNY

【DISC 1】
 01. Solo
 02. Like An Old Fashioned Waltz
 03. Whispering Grass
 04. Friends
 05. Carnival
 06. Dark The Night
 07. At The End Of The Day
 08. Until The Real Thing Comes Along
 09. No End
 10. Walking The Floor Over You (1973 Version)
 11. No End (Piano Version)
【Disc 2】
 01. Solo (BBC Session 1973)
 02. Until The Real Thing Comes Along(BBC Session 1973)
 03. Like An Old Fashioned Waltz (Witout Strings)
 04. Whispering Grass (Demo)
 05. Friends (Alternate Take Witout Strings)
 06. Dark The Night (Alternate Take Witout Strings)
 07. At The End Of The Day (Alternate Take Witout Strings)
 08. No End (Alternate Take Witout Strings)
 09. Solo (BBC Session 1973)
 10. Like An Old Fashioned Waltz (BBC Session 1973)
 11. Who Knows Where The Time Goes? (BBC Session 1973)
 12. Whispering Grass (Live Version)

 アメリカ南部を流れるゆったりとした空気を、音にしたらこんな感じになった....という雰囲気の作品。収録されている曲のうちの何曲か(01/04/07/09)は、73年の米国ツアー中にロサンゼルスのA&Mスタジオでレコーディングされ、またアメリカ滞在中に書かれた曲もあるようだが、そうしたことも影響しているかもしれない。フォーク/トラッドのシンガーというそれまでの彼女のイメージを覆すこのアルバムは、曲、アレンジ、バックの演奏、声、歌、ジャケットのアートワーク等すべてが上手く一体化している奇跡的な一枚。

 ストリングスがフィーチャーされるなどゴージャスなアレンジの曲もあるが、余裕を感じさせつつも朗々と歌い上げる彼女のヴォーカルとうまくマッチしている。リンゴ・スターもカヴァーしている03、ビリー・ホリディやエラ・フィツジェラルド、カーメン・マクレエ、ナット・キング・コールといったジャズの大物女性シンガーが取り上げた08など、スタンダードを正統派アレンジで歌い上げる歌の巧さ。このアルバムがリリースされた1974年当時(本来は73年にリリースされる予定が、第4次中東戦争に伴うオイルショックでレコードの原料である塩化ビニールが不足したことから、彼女のアルバム・リリースは後回しになったらしい)、彼女は27歳。一体どんな人生経験を重ねれば、20代半ばの若さで01や02のようなノスタルジックで味わい深い曲を書くことができるのだろう。

 印象的なold fashionedのジャケット写真は、『レコード・コレクターズ』誌で興味深いエピソード満載の特集「A Life of Photographing Legends ~ 写真家ゲレッド・マンコヴィッツが語る英国ロックの伝説」を連載していたゲレッド・マンコヴィツである。アルバム・ジャケットに採用された写真は凛とした感じだが、ブックレットには当時のプレス・キットに使用された笑顔の写真や微笑を浮かべた写真などが掲載されている。いい感じの写真ばかりだが、彼女のエピソードも『レコ・コレ』誌で述べられていたのかどうか。

 生憎と、平成最後の今日は雨模様。半袖だと少々寒い天気で、「アメリカ南部のような」とはいかないが、彼女の声は「少々寒い春の雨の休日の午後」雰囲気にも馴染むように思われる。



Solo

 「ソロ」におけるリード・ギターについて、CD5枚組ボックス『Sandy Denny : A Boxful of Treasures 』(2004)付属のブックレットではジェリー・ドナヒューとクレジットされているが、『デラックス・エディション』の邦訳解説ではリチャード・トンプソンだという記述がある。果たして真相は。




Like An Old Fashioned Waltz



How I'd love to remain with the silver refrain of an old fashioned waltz.



オールド・ファッションド・ワルツ+14(デラックス・エディション)(紙ジャケット仕様)

オールド・ファッションド・ワルツ+14(デラックス・エディション)(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: USMジャパン
  • 発売日: 2012/06/27
  • メディア: CD
Like An Old Fashioned Waltz: Deluxe Edition

Like An Old Fashioned Waltz: Deluxe Edition

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Universal UK
  • 発売日: 2012/05/29
  • メディア: CD


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WHEEL IN THE ROSES / REMA-REMA [4AD]



WHEEL IN THE ROSES / REMA-REMA
 SIDE 1
  1.Feedback Song
  2.Rema-Rema
 SIDE 2
  1.Instrumental
  2.Fond Affections

 『ミュージック・マガジン』1987年6月号の4AD特集掲載のディスコグラフィを見ると、初期4ADのカタログナンバーは、AXIS時代からシングル・アルバムも含めてすべて通し番号になっている。したがって、このレマ・レマが残した唯一のレコード(80年)のBAD5という番号から、4AD最初期の作品の一つだということがわかる。4ADがスタートした1980年に同レーベルからリリースされた19作品のうち、アルバムは2枚しかない。4AD発足当初は、シングル主体だったのである。 

 レマ・レマは、マーク・コックス(キーボード)、 マイケル・アレン(ヴォーカル&ベース)、ゲイリー・アスクィス(ヴォーカル&ギター)、 マルコ・ピローニ(ギター)、マックス(ドラムス)の5人組。重くうねるようなビートにノイジーな感覚は 麻薬のよう。オープニングの「Feedback Song」は、ジャケットのブリミティヴで呪術的な雰囲気と、うまくマッチしている。私が最初に買ったアナログシングルは、再発CDと異なり、オープニングの♪We're REMA-REMA~というヴォーカルがはいっていない。ラスト・ナンバーの「Fond Affections」は静謐なナンバーで、暗い海の底を漂っているような感覚。のちにディス・モータル・コイル の2ndアルバムに収録されたが、そのテイクにはマーク・コックスがDX7で参加している。 耽美・内省・虚無・諦観....私が初期4ADに抱いたイメージは、このレコードからだった。4ADの最高傑作は?と問われたとき、アルバム単位ならばディス・モータル・コイルの1枚目かコクトー・トゥインズの『Treasure』をあげたいところだが、シングルならばこのレマ・レマ。



 ジャケットの元になった写真を、写真家集団「マグナム・フォト」の作品集で見つけた。1949年にスーダンのコルドファンで撮影されたもので、「仲間の部族民にかつがれて勝ち誇るヌバ族のレスラー」というタイトルがつけられている。レスラーの右手に見える花は、オリジナルにはない。フォトグラファーはジョージ・ロジャー。Wikipediaによれば、第二次世界大戦中戦争カメラマンとして活躍したロジャーは、解放されたナチスの強制収容所で見た光景がトラウマとなって戦争カメラマンを辞め、アフリカをテーマにした写真を撮っていたという。『LIFE AT WAR』にロジャーが撮った写真が掲載されているが、骨と皮ばかりになった人たちの折り重なる死体の脇を、一人の少年が歩いているという写真である。



 2019年、レマ・レマの音源をまとめた2枚組CDが4ADからリリースされた。『Fond Reflections』と題されたセットは、1枚目がデモやリハーサル音源で、2枚目はオリジナルEPにボーナス・トラックを加えた編集盤。

Demos And Demolitions
 01. Feedback Song(Halligans Live Rehearsal Version)
 02. Rema-Rema(Halligans Live Rehearsal Version)
 03. Gallery/Oh Rock N Roll
 04. Lost My Way
 05. Short Stories
 06. International Scale
 07. Fond Affections(Portobello Road Version)
 08. Why Ask Why
 09. Instrumental(Halligans Live Rehearsal Version)
 10. Entry(Halligans Live Rehearsal Version)



 1枚目の05/06は、2014年にInflammable Materialというインディー・レーベルがアナログ7インチとして限定リリースした音源。

Extended Wheel In The Roses
 01. Feedback Song
 02. Rema-Rema
 03. Entry
 04. Instrumental
 05. Fond Affections
 06. No Applause
 07. Murdermuzic

2枚目の7曲のうち、オリジナルは01/02/04/05の4曲。再発CDにはいっていたオープニングの♪We're REMA-REMA~というヴォーカルはカットされ、オリジナルに戻されている。03/04は01/02と同時にレコーディングされたトラック。06/07は04/05が収録された日と同じ1979年7月にロンドンのThe Albany Empireで収録されたライヴ・テイク。

 イギリスで1981年にリリースされた『The Men With The Deadly Dreams』というコンピレーションには、79年4月26日にロンドンのAcklam Hallで行われたライヴから「Why Ask Why?」「Christopher」という2曲が収録されているらしいが、このコンピレーションには収録されていない。このコンピはWhite Stains Tapesというカセットオンリーのレーベルが200セット限定でリリースしたとのこと。
http://noiseaddiction2.blogspot.com/2015/03/rema-rema-acklam-hall-london-4-26-79.html

 音源も興味深いが、ドラマーのマックス・ドロシーによるライナーには彼女がバンドに参加した経緯やバンド名の由来、マルコとスージー&ザ・バンシーズの関係などにも触れてあってこれまた興味深い。メンバーはパーラメントやブーツィー・コリンズ、モータウンなどのブラック・ミュージックなども好きだったという。確かに「レマ・レマ」はファンクっぽい。



Fond Reflections [輸入盤 / 2CD] (4AD0069CD)

Fond Reflections [輸入盤 / 2CD] (4AD0069CD)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: 4AD
  • 発売日: 2019/03/01
  • メディア: CD



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