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VASHTI BUNYAN ヴァシュティ・バニアン [伝説のSSW]

 2019年の10連休は、ジョニ・ミッチェルなど女性ヴォーカルモノをよく聴いた(そしてプリンスもよく聴いた)。5月に入っていい天気の日はヴァシュティ・バニアン。木漏れ日差す森の中を、逍遥するイメージである。バックの演奏はアコースティックな楽器による最低限のシンプルなもので、純粋に彼女の流れるような優しい歌を楽しむ作品群。歌い上げる感じではなく淡々とたゆたうようなヴォーカルだが、聴く手の心にじわりと染みこんでくる歌声だ。

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JUST ANOTHER DIAMOND DAY 
1970年リリースのファースト・アルバム。プロデュースはフェアポート・コンヴェンションをてがけていたジョー・ボイド。彼の人脈からデイヴ・スウォーブリックとサイモン・ニコルのフェアポート勢が参加。




LOOKAFTERING
 一時引退していた彼女がカムバックして発表したセカンド・アルバム(2005)。プロデュースはピアノ・サーカスのマックス・リヒター。前作よりもしっとりした感じで、癒し度はさらにアップ。前作が田園とすれば、この2枚目は森の中のイメージ。1945年生まれの彼女、このアルバムリリース時には60歳の還暦。高音はちょっと苦しそうな感じだが、声の質は変わらないことに驚かされる。


SOME THINGS JUST STICK IN YOUR MIND – Singles and Demos 1964 - 1967
 2007年にリリースされた初期音源のコンピレーション(2枚組)。彼女自身による解説によれば、彼女の弟が実家の屋根裏から発見した1964~67年のテープがソースだという(この解説はまるでドラマのようである)。彼女のルーツがうかがえて興味深い。声が10代の頃からほとんど変わっていないことに驚かされる。このコンピの聴きどころは、彼女が3つのレーベルに残したシングル(とシングル予定だった)曲である。まずデッカからリリースされた最初のシングル「Some Thing Just Stick In Your Mind」(1965)は、ローリング・ストーンズのミック・ジャガー&キース・リチャーズによる曲で、しかもオーケストラがはいっているという、後の彼女のイメージとはまったく異なる曲である。次の2枚目のシングル「Train Song 」は翌66年にコロムビアからのリリース。ギターとチェロだけをバックに歌われるこの曲は、短いながらも後の彼女の作品群につながるシンプルで美しい曲だ。このシングルのB面「Love Song」は、ファースト・アルバムの再発時にボーナス・トラックとして収録されている。そしてイミディエイトに移籍してレコーディングされた「Winter Is Blue」「Coldest Night Of The Year」「I'd Like To Walk Around In Your Mind」の3曲は、シングル予定だったが結局リリースされなかった。珍しくフォーク・ロック調の「Coldest Night Of The Year」は、彼女自身も2001年のインタビューで「特に素晴らしいと思う」と語っているが、実際いい曲だと思う。「I'd Like To Walk Around In Your Mind」は、4ADのラッシュがカヴァーした。
 デビューシングルがデッカからのリリースでジャガー&リチャーズの曲、そしてイミディエイトへの移籍など、彼女はアンドリュー・ルーグ・オールダムとの関係が深い。アンドリュー・オールダムについては、大鷹俊一氏による「イミディエイトの雑然とした魅力」(『レコード・コレクターズ増刊ブリティッシュ・ロックVol.1』所収)に詳しい。ヴァシュティ自身も解説の中でオールダムとの関係に触れているが、山師的なイメージのオールダムを、彼女が好意的に書いている点は興味深い。
 
HEARTLEAP
 2014年リリースの3枚目は、前作から9年ぶりのリリース。セルフ・プロデュースの本作は、ほとんど浮世離れした音楽である。静かでささやくようなヴォーカルと、シンプルなバックの演奏の絶妙なブレンドは素晴らし過ぎる。「今日で連休も終わり」という寂寥感を忘れるため、しばし身をゆだねたい。60年という長いキャリアの間にわずか3枚のアルバムしかリリースしていないにもかかわらず、高い評価を受けるヴァシュティ・バニアン。


 ストレンジ・デイズ増刊『ブリティッシュ・フォーク&トラッド・ロック』には、2001年に行われたインタビューが掲載されている。ここでも彼女はアンドリュー・オールダムについて好意的だが、それよりも興味深いのは、ジョー・ボイドつながりで彼女がニック・ドレイクとコラボする企画があったことだ。結局実現しなかったそうだが、生きながら伝説となった彼女と死して伝説となったニック、この二人がコラボした音をぜひとも聴いてみたかった。


ジャスト・アナザー・ダイアモンド・デイ(紙ジャケット仕様)

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Webkoo
  • 発売日: 2005/11/29
  • メディア: CD



サム・シングス・ジャスト・スティック・イン・ユア・マインド

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Hostess Entertainment
  • 発売日: 2007/10/27
  • メディア: CD



Lookaftering

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Fat Cat
  • 発売日: 2006/02/01
  • メディア: CD



Heartleap[解説・歌詞対訳つき/ボーナストラック1曲のDLコードつき]

Heartleap[解説・歌詞対訳つき/ボーナストラック1曲のDLコードつき]

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Yacca
  • 発売日: 2014/10/26
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