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Best of Tour 72 / Pink Floyd  72年音源の最高峰 『狂気』プロトタイプ [ピンク・フロイド]

 ライヴはアーティストのニュー・アルバムのリリースにあわせて行われることが多く、「○○(アルバムの名前)ツアー」と呼ばれたりもする。演奏される曲は観客が知っているというのが前提で、だからこそ盛り上がるわけだ。しかし70年代のピンク・フロイドはリリース前の新しい曲をステージで演奏し、曲に少しずつ修正を加えていくという、今思うととんでもないことをやっていた。まさに「プログレッシヴ」だ。
 1973年3月にリリースされた『狂気』のレコーディングは、前年の72年6月から73年の1月まで断続的に行われているが、彼らがレコーディングに取りかかる前、72年3月に行われた日本公演でも『狂気』が演奏されている。71年の箱根アフロディーテでの「エコーズ」も同様にリリース前の演奏だったが、まったく知らない曲を聴いた当時の日本のファンはどう感じたのだろう。

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 フロイドの72年の音源は、「狂気」のプロトタイプはどうだったのかを確かめるという点で興味深い。これら72年の音源で最も有名なのは、2月20日のロンドン、レインボー・シアター公演だろう。同会場における4日連続公演の最終日で、1月からスタートした英国ツアーの最終日でもあるが、この日の公演には「Derek・A」「Steve・B」「The John Baxter」という3つのソースがあり、それぞれ一長一短....というのは、まるでツェッペリンの『ブルーベリーヒル』や『バッジホルダーズ』みたい。

①「Derek・A」音源 Recorder1
 最も音がよいソースで、最初にアナログ盤『The Best Of Tour '72』としてリリースされた。オーディエンスだが、「BBCで放送された音源」と言われたほど音が良い。「BBC伝説」には尾ひれがつき、1982年に邦訳が出たマイルズ編『ピンク・フロイド』(CBSソニー出版)では「2月17日の公演」とあるが、「17日のステージをBBCが収録して、20日に放送した」などという言説まで流布している(コピー盤『IN CELEBRATION OF THE COMET』の日付は17日になっている)。残念ながらこのソースには所々に欠落があり、さらにステージ前半の「狂気パート」だけの音源である。そのため、幸か不幸か「多くの人はフロイドの最新公式アルバムだと思って買った」そうである(マイルズ編『ピンク・フロイド』)。今でもヤフオクやメルカリでよく見かけるTSPの『The Best Of Tour '72』や、例の「Alive The Live」シリーズの『ライヴ・イン・ロンドン 1972』(の前半)もこのソースを使っている。30年ほど前、雑誌『GOLD WAX』におけるTSP盤の紹介記事「スクラッチ・ノイズなしのクリアー・サウンド。とても良質な作品といえる。」を読んで私も購入し(確か西新宿のRockawayだった)、感動したものである。
②「Steve・B」 Recorder2
 「Derek・A」より音は落ちるものの、収録時間は長い。
③「The John Baxter」音源 Recorde3
 ステージ完全収録ながら、3つの中では音質が最も劣る。

フロイド専門レーベルのSIGMAからは、以下の3アイテムがリリースされている。
①Sigma180 The Best Of Tour 72 1CD (Derek・A)
https://www.giginjapan.com/pink-floyd-72best-of-tour-sigma/
②Sigma196 Rainbow Theatre 1972 Final Night 4CD(The John Baxter+Steve・B)
https://www.navyblue-sound.jp/product/971
③Sigma246 The Best Of Tour 72 Definitive Edition 2CD
https://www.giginjapan.com/pink-floyd-best-of-tour-72-definitive-edition/

①はオリジナルで、音は良いものの前半だけ。②は聞き比べができるアイテムだが、「Derek・A」を押さえてこそ楽しめる。③は3つのソースを駆使して、ステージ全体を再現したもの。当然ながら③がベスト。

LIVE - the best Of Tour72 Pink Floyd
(「Derek・A」音源:KDBO製アナログ盤より)


Pink Floyd - 20th February 1972 (Live at Rainbow Theatre) - Definitive Edition
(使用されたソースが変わった補填箇所がわかるチャプター分割付き)




Live In London 1972

Live In London 1972

  • アーティスト: Pink Floyd
  • 出版社/メーカー: Alive The Live
  • 発売日: 2021/03/28
  • メディア: CD



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箱根アフロディーテ [ピンク・フロイド]

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 ピンク・フロイドが初めて来日したのは1971年、レッド・ツェッペリンの初来日と同じ年である。私は1966年(ビートルズが来日した年)の生まれなので1971年というと、5歳。ツェッペリンもフロイドも、後追い体験である。箱根アフロディーテについては雑誌などの断片的な記事から「なんだかスゴそうだ」という印象があったが、このたびリリースされた『原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤)』に伴う企画 デジタル・ブックレット『追憶の箱根アフロディーテ1971』[https://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Special/PinkFloyd/Aphrodite/book.html ]を読むにつけ、ああやはりスゴかったのだなぁと改めて実感する。

「箱根アフロディーテ」目撃者が語る真相(保科好宏)
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/36315/4/1/1

 『50周年記念盤』付属のブルーレイだが、観た当初はその時間的短さとコラージュ映像だったことにかなりガッカリした。音と映像がシンクロしていない.....しかし見ているうちに思いは変わっていく。風でメンバーの髪がなびく様子や霧が出ている様子など会場の雰囲気はよく伝わってくるし、そのほかの映像もなかなか面白い。記者会見の様子はともかく、新幹線を待っている様子や列車内での様子、さらには箱根のバックステージ(屋外)で何やら食べている様子など、よくもまぁこんな様子をバンド側が撮らせていたもんだと驚く。

『原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤)』の内容
https://www.110107.com/s/oto/page/pinkfloyd_AHM50th?ima=3921

 ブルーレイには「Scott & Watts」と題された2人のツアークルーを追いかけたドキュメンタリーが収録されている。3分くらいの短い映像だが、これはスペシャル・ブックレットの亀渕昭信氏による「覚書」と併せて観ると面白さが倍増する。亀渕氏が書いている、雨の中を機材を運ぶ様子をカメラが捉えていたのである。NHKでビートたけしがやっている「その時カメラは捉えた」(かつてウッドストックの特集があった)という番組で特集して欲しい。

 「Scott & Watts」でもっとも印象深いのは、フロイドの機材を積んだトラックをブルドーザーが先導しているシーン。悪天候で泥濘となった道に車が足を取られるため、立ち往生しないようブルの後ろをトラックが走っている。トラックの上で見守るスタッフ、ブルを運転するオペレーターの真剣な表情、彼らとは対照的になぜか楽しそうな笑顔を見せ、上半身裸でタオルを首にかけて走る男性作業員。NHKには、「あの日、偶然そこにいて」で、ここに写っている人たちに当時の証言をとって欲しい。世界文化遺産レベルの映像だと思う。
 
〈箱根アフロディーテ〉発掘秘話 https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/29269

 この『50周年記念盤』リリースにより、コレクターズ市場はまた盛り上がるのではないかとも思う。これまで初日(8月6日)とされてきた音源はすべて翌日7日の音源だったという事実がEmpress Valleyによって昨年明らかとなり、コレクター界隈がざわついたのは記憶に新しい。

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 私が最初に「アフロディーテ」を耳にしたのは、『Echoes Of Japanese Meddle』(STTP153)というCD。演奏された曲順が実際とは異なるといった点はあるものの、良質なオーディエンスで十分満足できるアイテムだった。その後リリースされた様々なアイテムのうち、『Aphrodite 1971 Remaster』(Sigma210)という3枚組が、なかなか良かった。これは8月7日の代表的な2つ(モノラルのソースと、ステレオのソース)をベースに、欠落部分を他のソースで補填したもの(8月7日のソースは、全部で6種類あるらしい)。このアイテムのディスク3を初めて聴いたとき、そのクリアーさに驚いたものである。「グリーン・イズ・ザ・カラー」の歌い出しの部分と、「エコーズ」の歌いだしの部分には幻想的なエコーがかかっていいて、特に好きな部分。71年という時代、しかも屋外でここまでクリアーに録音できたことは奇跡としかいいようがない。最近GRAF ZEPPELINからも同企画の『HAKONE APHRODITE 1971 2ND NIGHT』がリリースされている。

メーカーインフォ https://www.giginjapan.com/pink-floyd-aphrodite-1971-remaster-stereo/







原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤) (特典なし)

原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤) (特典なし)

  • アーティスト: ピンク・フロイド
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2021/08/04
  • メディア: CD



ピンク・フロイド ライヴ・ツアー・イン・ジャパン 1971-1988

ピンク・フロイド ライヴ・ツアー・イン・ジャパン 1971-1988

  • 作者: -
  • 出版社/メーカー: シンコーミュージック
  • 発売日: 2021/05/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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WISH YOU WERE HERE / PINK FLOYD [ピンク・フロイド]

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   『炎~あなたがここにいてほしい~』
    1. クレイジー・ダイアモンド(第1部)
    2. ようこそマシーンヘ
    3. 葉巻はいかが
    4. あなたがここにいてほしい
    5. クレイジー・ダイアモンド(第2部)

 『狂気』と『アニマルズ』にはさまれたこの作品は、シド・バレットのことが歌われているということは話題になりますが、音楽自体が話題になることは少ないようです。おそらく、フロイド=哲学的というイメージが災いし、難解ではないからかもしれません。フロイドにしては間口が広く、誰にでも楽しめてわかりやすい=安直ということになってしまったのでしょう。

 この作品で重要なのは、デヴィッド・ギルモアのギターと故リック・ライトのキーボード。1曲目の霧が立ちこめるようなキーボードと、その中にきらめく閃光のようなギター。幽玄で荘厳な雰囲気は、イマジネーションを刺激します。その後に続く曲でも、むせび泣くようなギターと、映画『ブレードランナー』での夜の街を思い出させるキーボードが素晴らしい。時に虚無的で、時に優しい。「クレイジー・ダイアモンド(第2部)」のエンディングのキーボードを聴くたび、曇り空から陽が差してくるような感覚にとらわれます。後にはレイオフされたリック・ライトですが、このアルバムにおいて彼が果たした役割は、決して小さくないでしょう。

 アコースティックな「あなたがここにいてほしい」も素晴らしい出来です。フロイドによるフォーク調の曲は、どの曲も名曲揃い。

 「葉巻はいかが」のヴォーカルは、ロイ・ハーパー。

 アナログ時代は、英盤と米盤でジャケットの写真が若干違っていました。米盤は、英盤に比べると燃えている方の男性が背を伸ばしていて、炎も大きいです。現行のジャケットはすべて英国仕様に統一されています。写真は旧米盤です。オリジナルハーフスピードマスター(番号:HC33453)で、私の持っている数少ないレア盤の1つ....だと思う。




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DARK SIDE OF THE MOON / PINK FLOYD [ピンク・フロイド]

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『狂気』 ピンク・フロイド
1. (a)スピーク・トゥ・ミー / (b)生命の息吹き
2. 走り回って
3. タイム
4. 虚空のスキャット
5. マネー
6. アス・アンド・ゼム
7. 望みの色を
8. 狂人は心に
9. 狂気日食

 狂気は月の作用によるということで、lunaticとかmoonstruck という言葉が生まれたそうですが、確かに暗い夜空に浮かぶ月を眺めていると、不思議な感覚にとらわれます。月夜に聴きたいアルバムの1つ。
 リスナーにどれだけ豊かなイメージを与えてくれるかという点は、いわゆる「プログレ」の重要なファクターだと思います(その意味では、ツェッペリンの「ノー・クォーター」「イン・ザ・ライト」「カシミール」などは僕にとってプログレなんですが......)。その意味でこの作品は、イマジネーションを刺激する傑作アルバムです。オープニングの心臓の鼓動音をはじめ、SEの使い方も効果的です。私はiPodにいれてこのアルバムを聴くようになってから、この作品のダイナミックさを改めて認識しました。
 意識を包み込んで、月が輝く夜空に運んでいくかのような音楽。それでいて、難解ではない解りやすさを備えていることも大きな魅力です。アメリカでも受け入れられたことは、そのことを示しています。特に「マネー」以降のB面は圧倒的。


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A SAUCEFUL OF SECRETS / PINK FLOYD [ピンク・フロイド]

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 『神秘』ピンク・フロイド
  1.光を求めて
  2.追想
  3.太陽讃歌
  4.コーポラル・クレッグ
  5.神秘
  6.シーソー
  7.ジャグバンド・ブルース

 1968年リリースのセカンド・アルバム。このアルバムがイギリスで発売されたのは1968年6月29日。先日この世を去ったシド・バレットは、この年の3月2日に、正式に脱退したことになっています。デヴィッド・ギルモアは68年の初頭からバンドに参加しており、ピンク・フロイドは一時的に5人編成で活動した時期もあります。マイルズ(アルバ・フォーラム訳)『ピンク・フロイド』やボックス『シャイン・オン』付属の解説には、5人メンバーの写真が掲載されていました。
 全7曲中、3曲はシド、残り4曲がデイヴによるレコーディング(5人でスタジオにはいることはなかったらしいです)。前作の延長線上にあるような気もしますが、オープニング・ナンバー「光を求めて」のギターや、ライヴでの重要なレパートリーとなる「太陽賛歌」とアルバムではB面のトップにあたる「神秘」で感じられる、意識を遠くへと運んでいくような、催眠と覚醒が交錯する浮遊感はフロイドそのものの世界。でも僕が一番好きな曲は、牧歌的な雰囲気が感じられる「シーソー」かな。
 ちなみに2は前作のアウト・テイク(とはいえ、僕には『夜明けの口笛吹き』に収録されている他の曲よりも、ずっと良い曲だと思える)で、ラスト・ナンバーはシングル曲として67年にレコーディングされていた曲。
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