Bela Session / BAUHAUS [バウハウス]
01. Bela Lugosi's Dead (Official Version)
02. Some Faces
03. Bite My Hip
04. Harry
05. Boys (Original Version)
デビュー・シングル「Bela Lugosi's Dead」をレコーディングしたセッション(1979年1月26日)の記録。この日の6時間のセッションでレコーディングされた5曲がすべて収録されている。「ゴシック・ロック」(「ゴス」)はここから始まった。
01はシングル・ヴァージョン。02/03/05は初出。03は「Lagartija Nick」の歌詞違い。「Bela Lugosi's Dead」のシングルにカップリングされていた「Boys」は、05の再録ヴァージョンらしいが、両者に大きな違いはない。ブロンディのヴォーカリストだったデボラ・ハリーのことを歌った04は、シングル「Kick In The Eye」のB面としてリリースされた。
Small Wonderからリリースされたシングルのジャケットには、20世紀初めのサイレント映画のワンシーンが使われている。表が『The Sorrows of Satan』(1926)で、裏は『カリガリ博士』(1920)。BAUHAUSというバンド名からは、イメージ的に『カリガリ博士』の方がしっくりくる。アナログ盤には青盤のほか、ピンクや緑、透明など5つのヴァージョンがある。
SHOULD THE WORLD FAIL TO FALL APART / PETER MURPHY [バウハウス]
01. Canvas Beauty (Romance Version)
02. The Light Pours Out Of Me
03. Confessions
04. Should The World Fail To Fall Apart
05. Never Man
06. God Sends
07. Blue Heart
08. The Answer Is Clear
09. Final Solution
10. Jemal
人気バンドの解散後に、フロント・マンだった人物がリリースする1stソロはイヤでも注目を集める。マニアックな人気を集めたバンドならなおさら。『Should The World Fail To Fall Apart(邦題:凍てついた世界へ)』は、83年に解散したバウハウスのヴォーカリストだったピーター・マーフィーが、86年にリリースした1stソロ・アルバムである(この間、84年には元ジャパンの故ミック・カーンとのユニット、ダリズ・カーの名義で『The Waking Hour』をリリースしている)。
「ゴス(Gothic)の帝王」ともよばれたバウハウスは、独特の空気を感じさせるバンドだった。ピーター・マーフィーとダニエル・アッシュによる暗いステージ・パフォーマンスやアヴァンギャルドな曲調など、アーティスティックな雰囲気が魅力でもあった。
バウハウス時代と比べると、この1stソロ・アルバムは純粋に音楽のみで勝負できる作品だ。ファンタジックとも言えるバックのサウンドとしっかりしたメロディーは、ピーターのヴォーカルによく合っている。ピーターによくマッチしたサウンドづくりに貢献しているのは、アイヴォ(プロデューサー)、ジョン・フライヤー(エンジニア)の4AD黄金時代を支えた二人。さらにレコーディングもブラックウィング・スタジオである。『ブルガリアン・ヴォイス』でもわかるように、アイヴォとピーターは相通じる感性を持っているように思われるが、4AD組によるサウンド・プロダクションは、ピーターのよさを引き出すことに成功している。
白眉はオープニングの「Canvas Beauty」とタイトル・ナンバーの「Should The World Fail To Fall Apart」。メロディーよし、声よし、演奏よし、そして雰囲気よし。「The Light Pours Out Of Me」はマガジン(『リアル・ライフ』に収録)、先行シングルともなった「Final Solution」はペル・ウブのそれぞれカヴァーだが、よい仕上がりになっているのは「ピーターの声質にあった曲」を選んだからだろう。「Final Solution」はオリジナルよりもハード・エッジでソリッドな感じがピーターらしい。
Canvas Beauty
Should The World Fail To Fall Apart
Final Solution
ペル・ウブの「Final Solution」
別の意味で注目なのは、元バウハウスのダニエル・アッシュがノイジーなギターを聴かせる「The Answer Is Clear」。この曲は、ダニエル・アッシュが同じく元バウハウスのケヴィン・ハスキンスとともに結成したバンド、トーンズ・オン・テイルのアルバム『POP』に収録されていた「Movement of Fear」へのアンサー・ソングである。自分のことを批判するかのような曲に対する返歌に、元曲をつくった本人を参加させるというのも何とも不思議だが、このことに関しては雑誌『フールズ・メイト』No.62に掲載されているピーターのインタビューで語られている。
2011年にはチェリー・レッドから2枚組のデラックス・エディションがリリースされた。神リリースである。
2-01. Canvas Beauty (Fast Version)◎※
2-02. The Light Pours Out Of Me (Original Version)
2-03. Confessions (Remix)★
2-04. Should The World Fail To Fall Apart (Version 3)
2-05. Stay
2-06. Tale Of The Tongue (12" Version)○
2-07. Blue Heart (12" Version)※
2-08. The Answer Is Clear (Version)☆◎
2-09. Final Solution (Club Mix)☆◎
2-10. Jemal (Version 2) ★
2-11. Should The World Fail To Fall Apart (Version)★○
2-12. Final Solution (Full Version)☆
2-13. Final Solution (Third And Final Mix)◎
☆:「Final Solution」の12インチ(BEG143T)に収録
※:「Blue Heart」の12インチ(BEG162T)に収録
「Canvas Beauty (Fast Version)」は「Up Version」という表記。
Alison Limerickがバック・ヴォーカル
○:「Tale Of The Tongue」(BEG174T)に収録
★:「Should The World Fail To Fall Apart」の12インチ(BEG179T)に収録
◎:「THE FINAL SOLUTION EP」(VERTIGO SOVE2359)に収録
企画モノ『5ALBUMS』には、以下の5曲がボーナス・トラックとして収められている。
11. Canvas Beauty (Up Version)
12. Should The World Fail To Fall Apart (Version)
13. Stay
14. Final Solution (Club Mix)
15. Tale Of The Tongue (12" Version)
2枚組の「Canvas Beauty (Fast Version)」(5分54秒)と『5ALBUMS』の「Canvas Beauty (Up Version)」(5分11秒)は同じヴァージョン。長さが違うのは、『5ALBUMS』版の収録時間が77分を越えているためエディットされたのが理由ではないだろうか。音は『5ALBUMS』版の方が良く、リマスターされているように感じる。
Should The World Fail To Fall Apart
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Cherry Red
- 発売日: 2014/04/01
- メディア: CD
BAUHAUSのバイオ本『Undead』 [バウハウス]
『undead』は2018年3月に発売されたバウハウスのバイオ本。発売元はロサンゼルスの音楽レーベル、クレオパトラ[http://cleorecs.com/]で、著者は元メンバーでドラマーだったケビン・ハスキンス。したがって、かなりレアな写真やネタが満載である。2003年に発売されたデヴィッドJによるアート本、『For Bauhaus Lovers』(ピエ・ブックス)よりもはるかに楽しめる。
公式ページ[https://cleorecs.com/store/shop/bauhaus-undead-the-visual-history-and-legacy-of-bauhaus-book/]
値段は$69.98だが、直接オーダーすると1万円以上の出費は覚悟しなければならない。ということで、私はアマゾンJPで購入した。プレオーダーでは、ケビンのサイン入り限定版($99.98)もあったが、現在は売り切れている模様。
5ALBUMS/ PETER MURPHY [バウハウス]
バウハウスの『5ALBUMS』同様、ピーター・マーフィーの『5ALBUM』も超オススメである。収録されているのは、『凍てついた世界へ』(86年)から『カスケード』(95年)まで、ベガーズ・バンケットに残した初期5枚で、豪華なハードカバーのブック仕様ケース入り。それぞれに収録時間ギリギリまでボーナストラックが収録してあり、シングルのB面曲はもちろん未発表テイクやプロモ盤のみ収録されているヴァージョンなどレア・テイクが多数。なかでも『カスケード』のボーナス・トラックは5曲全てが初出だ。値段も送料込みで4000円程度と、オリジナルを全部持っていても買って損はない。
以下、各作品のボーナス・トラック。
★:初出テイク
☆:プロモオンリー
Should The World Fail To Fall Apart
11. Canvas Beauty (Up Version)
12. Should The World Fail To Fall Apart (Version)
13. Stay
14. Final Solution (Club Mix)
15. Tale Of The Tongue (Extended Version)
Love Hysteria
10. Tale Of The Tongue (Single Edit)
11. I've Got A Miniature Secret Camera
12. Critic's Choice ★
13. All Night Long (U.S.A. Edit)
14. Socrates The Python (Demo) ★
15. Fun Time (Cabaret Mix) (Demo) ★
Deep
10. Roll Call (Reprise)
11. A Strange Kind Of Love (Version Two)
12. The Line Between The Devil's Teeth
(And That Which Cannot Be Repeat) (12" Remix)
13. Cuts You Up (U.S.A. Alternate Edit) ☆
14. A Strange Kind Of Love (Remix Edit Version) ☆
15. Deep Ocean (Instrumental) ★
Holy Smoke
11. The Sweetest Drop (Rave Edit) ☆
12. Cool Cool Breeze ★
13. You're So Close (Radio Edit) ☆
14. The Sweetest Drop (Radio Edit #1) ☆
15. Hit Song (Single Edit)
16. The Sweetest Drop (Rave 12" Mix) ☆
Cascade
12. Wild Birds Flock To Me (Production Rough Mix) ★
13. Groovy Place (Demo) ★
14. Wish (Production Rough Mix) ★
15. Sail On White (Production Rough Mix) ★
16. Satin Nights (Cascade) (Production Rough Mix) ★
「Stay」はデビッド・ボウイのカヴァーで、2011年にチェリー・レッドからリリースされていた『凍てついた世界へ』のデラックス・エディションに収録されていた曲。シングル曲でもない既発曲だが、やはりボウイのカヴァーという理由で収録されたのだろう。
「The Line Between The Devil's Teeth (And That Which Cannot Be Repeat) (12" Remix)」
(7:55)や「The Sweetest Drop (Rave 12" Mix) 」(8:29)、 「Satin Nights (Cascade) (Production Rough Mix) 」(7:14)など、7分を越える長尺ヴァージョンも複数収録されているが、このうち「Satin Nights (Cascade) (Production Rough Mix) 」は、アルバムのタイトル・トラック「Cascade」の別ヴァージョン。「Production Rough Mix」というミックスがどのようなミックスを指すのか不明だが、デモ・ヴァージョンではなく完成形と言ってもいい形である。
THE SKY'S GONE OUT / BAUHAUS [バウハウス]
バウハウス3枚目のアルバム『ザ・スカイズ・ゴーン・アウト』(82年)のオリジナルには、最後の曲「Exqisite Corpse」のあとに「My baby....」という言葉で始まるモノローグが収録されているが、このモノローグは収録されている盤とそうでない盤がある。私の手元にある『ザ・スカイズ・ゴーン・アウト』のうちモノローグが入っているのは2種、カナダのヴァーティゴ盤のみだった。
・ビクター盤アナログ(VIL-6053) なし
・日本コロムビア盤CD(28CY-2397) なし
・ヴァーティゴ盤アナログ(VOGX-1-3326) あり
・ヴァーティゴ盤CD(836 167-2) あり
2004年に日本のインペリアル・レコードがベガーズ・バンケットのカタログをリイシューしたときの『ザ・スカイズ・ゴーン・アウト』にも、モノローグは収録されていなかった。当時、その理由をインペリアル・レコードに問い合わせてみたところ「CD化の際に何らかの理由(アーティストもしくはプロデューサーの意向)、でカットされたようです。これ以上の理由はベガーズバンケットにも分からないそうです。」 という回答だった。「CD化の際にカットされた」というのは確かにありそうな話であるが、最初に日本でリリースされたビクター盤アナログには収録されておらず、一方で90年にリリースされたヴァーティゴ盤CDに収録されているのは何とも不思議だ。
しかし最近アマゾンで売っている輸入盤「5Albums」の『ザ・スカイズ・ゴーン・アウト』には、このモノローグが収録されている。この手の企画はけっこう安易なつくりのボックスも多い中、バウハウスの「5Albums」はなかなかに良心的だ。バウハウスのオリジナル・アルバムは4枚なので、ボーナストラックは1枚にまとめてある。ディスクはすべてピクチャー・ディスク仕様(『ザ・スカイズ・ゴーン・アウト』はデヴィッドJの写真)だ。
ヴァーティゴ盤はオリジナルと異なりシンプルなジャケットであり、これはCD化されてもそのままだった。アナログには、A面:「Ziggy Stardust」、B面「Lagartija Nick」「Kick In The Eye」の3曲が収められた12インチシングル(KICK 1)がつけられていた。 過去に日本でリリースされた『ザ・スカイズ・ゴーン・アウト』のボートラは、「Ziggy Stardust」「Party Of The First Part」「Spirit(シングル・ヴァージョン」「Watch That Grandad Go」の4曲だったが、ヴァーティゴ盤CDのボートラは、アナログのボーナス・ディスクと同じで「Ziggy Stardust」「. Lagartija Nick」「Kick In The Eye」の3曲になっている。
ZIGGY STARDUST (David Bowie Cover Top Of The Pops)
SPIRIT
“My baby, how big you' ll be in a very little while. You' ll be going to school and you won' t want your daddy then, will you darling? Oh, I wish you could be my baby all the time. I wonder what the future holds…?”
これはドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒト(1898~1956)の作品『バール(Baal)』の一節であり、声の主はドラマーのケヴィン・ハスキンス。 『バール』は才能あるものの直情的な詩人バールの破滅型の生涯を描いた戯曲で、『ザ・スカイズ・ゴーン・アウト』がリリースされたと同じ1982年に英BBCがデヴィッド・ボウイ主演で映像化している。ブレヒトはクルト・ヴァイル(クルト・ワイル)との関係も深く、ボウイのミニアルバム『バール』に収録されている曲「The Drowned Girl」(バールに捨てられた娘ヨハンナの歌)は、クルト・ヴァイルの曲である(エルレーベルのモーマスも歌っている)。
クルト・ヴァイルは多くのミュージシャンにリスペクトされている作曲家で、「アラバマ・ソング」はボウイをはじめサイケデリック・ファーズのリチャード・バトラーやドアーズのジム・モリソンなど多くのミュージシャンが取り上げている。
Bowie in Bertold Brecht's "Baal"(BBC)
David Bowie - The Drowned Girl
Momus: The Drowned Girl (Bowie / Brecht cover)