Coming Up / Suede [スウェード]
ブレッド・アンダーソン(ヴォーカル)とバーナード・バトラー(ギター)の双頭バンドだったスウェードだが、 セカンド『ドッグ・マン・スター』(94年)完成直前にバーナードが脱退してしまう。このため新たなギタリスト、リチャード・オークスとさらにキーボードのニール・コドリングも加入して制作されたのが、3枚目の『カミング・アップ』(96年)。今年はリリースから25周年ということで、夏には2枚組の25th Anniversary Edition がリリースされた。コロナにより延期されていた記念ツアーは、11月に行われる予定とのこと。
1作目に比べて2作目のセールスが不調だったことや、さらにバンドの中心であったバーナードの脱退により、『カミング・アップ』発売直前のスウェードは、大方の感覚では「落ち目ののバンド」であった。加えて『ドッグ・マン・スター』がリリースされた94年と言えば、オアシスのデビュー・アルバムがリリースされた年であり、みな「ビートルズの再来」に注目し「過去のバンド」など顧みられることはないと思っていた。ところが大方の予想に反して『カミング・アップ』はキラキラしたポップさが受け、デビュー・アルバムを上回るヒットになったのだからわからないものである。個人的には2枚目の退廃的なクールさが好きなので、このアルバムの煌びやかさにはとまどったものだが、それでも1枚目の雰囲気を持った「ビューティフル・ワンズ」からグラム・ロックっぽい「スタークレイジー」の流れは十分カッコいいし、ミディアム・テンポの「ケミストリー・ビトウィーン・アス」からしっとりした「サタディ・ナイト」へのセンチメンタルな流れも心地よい。口ずさめるポップな「レイジー」から、よく晴れた秋の海辺をイメージさせる「バイ・ザ・シー」は、独特のエコーがかかったブレッド・アンダーソンのヴォーカルが魅力的。そしてなんと言ってもSONYのウォークマンのCMに使われた、心が高揚するようなオープニング・ナンバーの「トラッシュ」。前作同様、捨て曲なしの大傑作。
Youtubeのスウェード公式チャンネルのアイコンにも使われているイエローを基調としたジャケットはスウェード史上の最高傑作だと思う。「cool」という表現がしっくりくるジャケットだ。手がけたのはピーター・サヴィルとニック・ナイト(二人は日本の服飾デザイナー山本耀司のカタログ制作時にもコラボしている)。このジャケット写真撮影から十数年後、ニック・ナイトはレディー・ガガの「ボーン・ディス・ウェイ」のPVを監督した。
スウェード トラッシュ SONY 美・ウォークマン
Suede - Trash (Official Video)
Suede - Beautiful Ones (Official Video)
Brett Anderson from Suede talking about Coming Up 25th Anniversary on BBC Breakfast 5th May 2021
年をとってもカッコいいブレッド・アンダーソン。
Coming Up: 25th Anniversary Edition
- アーティスト: The London Suede
- 出版社/メーカー: Edsel Records
- 発売日: 2021/09/10
- メディア: CD
DOG MAN STAR / SUEDE [スウェード]
01. Introducing The Band
02. We Are The Pigs
03. Heroine
04. The Wild Ones
05. Daddy's Speeding
06. The Power
07. New Generation
08. This Hollywood Life
09. The 2 Of Us
10. Black Or Blue
11. The Asphalt World
12. Still Life
13. Modern Boys
衝撃の1stと大ヒットの3rdにはさまれ、今ひとつ地味な印象の2nd(94年)だが、陰影・憂鬱・退廃・耽美・妖艶というスウェードを語るときのキーワードがすべて詰まっている傑作。この作品を最高傑作にあげるスウェードのファンも少なくない。
宗教歌のように重々しく呪文のようなヴォーカルが印象的なオープニングに続く2曲目は、官能的なギターとヴォーカルの絡みが印象的。エコーの効いた4曲目のヴォーカルを聴いていると、暗闇の中を光に向かって墜ちていくような感覚になる。タイプは違うけど、コクトー・トウィンズに通じる耽美感。6と7はともにメロディアスな耳に残る作品だが、ややアコ-スティックで叙情的な6に対して7は正統派ロック。9はピアノだけをバックに朗々と歌い上げるドラマティックな曲。彼方へ運んで行かれそうな感覚。壮大なオーケストラが魂ゆさぶる12、それに続くシークレット・トラック13は力の抜けたネオアコ的雰囲気も感じられるポップでメロディアスな佳曲。スウェードのよさが十分に発揮された、捨て曲なしの大傑作アルバム。
2011年には2CD+1DVDのデラックス・エディションがリリースされたが、これがまた素晴らしい。
【DISC1】
01. Introducing The Band
02. We Are The Pigs
03. Heroine
04. The Wild Ones
05. Daddy's Speeding
06. The Power
07. New Generation
08. This Hollywood Life
09. The 2 Of Us
10. Black Or Blue
11. The Asphalt World
12. Still Life
13. Squidgy Bun (Introducing The Band)
14. Ken (The Wild Ones)
15. Man's Song, A (Heroine)
16. Banana Youth (The Power)
17. The 2 Of Us
【DISC2】
01. My Dark Star
02. Living Dead, The
03. Stay Together
04. Killing Of A Flash Boy
05. Whipsnade
06. This World Needs A Father
07. Modern Boys
08. Eno's Introducing The Band
09. La Puissance
10. Living Dead, The
11. We Believe In Showbiz
12. Still Life
13. The Wild Ones
14. Asphalt World, The
【DVD】
01. Stay Together
02. Heroine
03. We Are The Pigs
04. 2 Of Us, The
05. Killing Of A Flash Boy
06. Pantomine Horse
07. Asphalt World, The
08. This Hollywood Life
09. The Wild Ones
10. Still Life
11. The Drowners
12. This Hollywood Life
13. We Are The Pigs
14. Metal Mickey
15. My Insatiable One
16. Animal Nitrate
17. New Generation
18. So Young
19. Sleeping Pills
20. Stay Together
21. Dolly
22. High Rising
23. Animal Nitrate
24. Still Life
25. Brett Anderson And Bernard Butler 2011 Interview
すべてリマスターされており、エコーの響きに深みが増した感じ。
ディスク1の13~17はデモ・ヴァージョン。
2015には、リリース20周年記念としてこのアルバムを忠実に再現したライヴ・アルバムがリリースされた。収録は2014年3月30日ロイヤル・アルバート・ホール。ブレッドの声は少し枯れた感じだが、声自体はよく出ており。これもまた味がある。限定2万セットのアナログLP4枚+CD2枚のボックスもあり。
SUEDE / SUEDE [スウェード]
1. ソー・ヤング
2. アニマル・ナイトレイト
3. シーズ・ノット・デッド
4. ムーヴィング
5. パントマイム・ホース
6. マイ・インセイシャブル・ワン(ピアノ・ヴァージョン)
7. ザ・ドラウナーズ
8. スリーピング・ピルズ
9. ブレイクダウン
10. メタル・ミッキー
11. アニマル・ラヴァー
12. ザ・ネクスト・ライフ
スウェードは、いわゆる「ブリット・ポップ」の先駆けと言ってもいいでしょうね。この作品は、ヴォーカルのブレット・アンダーソンとギターのバーナード・バトラーを中心にした1stアルバム(1993年)。中性的で情感溢れるヴォーカルと、ギターの絡みが最大の魅力です。バーナードのギターは、もう一つのヴォーカルという感じ。
音楽的には、よく言われるようにデヴィッド・ボウイとザ・スミスの影響を受けていることは間違いないでしょう。ロックン・ローラーとしてのボウイと、ギター・バンドととしてのザ・スミス。シングル・カットされた「ソー・ヤング」「アニマル・ナイトレイト」「ザ・ドラウナーズ 」などは、確かにそうです。とはいうものの、「シーズ・ノット・デッド」「ブレイクダウン」など、浮遊感ある耽美的な曲には、コクトー・トウィンズと同じ美意識を感じます。同性愛・近親相姦(ジャケットは兄弟同士のキス....だよね、たぶん)などを歌った歌詞が取りざたされることが多いバンドですが、彼らの最大の魅力は、美しいメロディーと秀逸なアレンジです。1stアルバムにしてこの楽曲のよさは、特筆すべきでしょう。