Illusion イリュージョン 幻想の翼 [オリジナル・ルネッサンス~イリュージョン]
Illusion / Illusion
1. マドンナ・ブルー
2. ネヴァー・ビー・ザ・セイム
3. ルイのテーマ
4. 波濤を越える翼
5. クルージング・ノーホエア
6. 奇跡の男
7. ザ・レヴォリューショナリー
イリュージョンとなったオリジナル・ルネッサンスの2枚目のアルバム(1978年)。イリュージョンとしては事実上のラスト・アルバムである(1990年に未発表曲集『エンシャンテッド・カレス』、2001年にルネッサンス・イリュージョンというバンドの名義でニュー・アルバムがリリースされた)。ジム・マッカーティのヤードバーズ時代の僚友、ポール・サミュエル=スミスがプロデューサーで、ポールはバッキング・ヴォーカルとしてもクレジットされている。
前作『醒めた炎』同様、イリュージョンの魅力である「哀愁・叙情・メロディアス」の3拍子がそろった名作である。ピアノがメイン楽器になっているぶんクラシカルで、それにジェーン・レルフの優しくてちょっと儚いヴォーカルが乗る夢心地の楽曲群だ。「泣きの旋律」を奏でるセンチメンタルなギターと、時折出てくる英国フォーク感覚もこれまた良い。中でも「波濤を越える翼(Wings Accross The Sea)」はファンタジックなジャケットのイメージそのままの曲で、イリュージョン時代を代表する1曲だと思う。ロック寄りの「クルージング・ノーホエア」はシンセが印象的で、よいアクセントになっている。大半の曲はジム・マッカーティ作だが、メロトロンやフェンダーローズの導入など、アレンジ面ではジョン・ホウクンが大きな役割を果たしたと思われる。
ILLUSION Illusion 04 Wings Accross The Sea
Illusion - Cruising Nowhere
OUT OF THE MIST / ILLUSION [オリジナル・ルネッサンス~イリュージョン]
『醒めた炎』
01. イサドラ
02. 自由への道
03. ビューティフル・カントリー
04. ソロ・フライト
05. エヴリホエア・ユー・ゴー
06. フェイス・オブ・イエスタデイ
07. キャンドルズ・アー・バーニング
イリュージョン名義ではファースト・アルバム(1977年リリース)だが、オリジナル・ルネッサンスとしては一応3枚目と考えてよかろう。オリジナル・ルネッサンスが2枚のアルバムを残して消滅し、ルネッサンスのバンド名がアニー・ハズラムのバンドに引き継がれた後、元オリジナル・ルネッサンスのメンバーを中心に再結成されたのがイリュージョン。オリジナル・ルネッサンスの2枚目のアルバム・タイトルが、そのままバンド名になっている。
メンバーは、ジム・マッカーティとジェーン・レルフ、ルイス・セナモ、ジョン・ホウクンのオリジナル・メンバー4人のほか、ギターにジョン・ナイトブリッジ、ドラムにエディ・マックニールを迎えた6人。かつてジムとともにオリジナル・ルネッサンスの中心だったキース・レルフはギターの感電事故により、この作品がリリースされる前年(1976年)に不慮の死を遂げている。彼は死の直前までオリジナル・ルネッサンスの再結成を目指しており、バンド名は「ナウ」だったという。したがってこのイリュージョンは、キースの遺志を継ぐという形で再結成されたオリジナル・ルネッサンスと言える。
オリジナル・ルネッサンス時代に比べると、「ソロ・フライト」のエレクトリック・ギターなどとってつけたようで、やや鼻につく。しかしピアノを前面に出し、メロトロン、ストリングスも効果的に使用した叙情的なメロディーは、ジェーンのしっとりとしたヴォーカルによく合っており、「泣き」のプログレという感じ。「自由への道」「ビューティフル・カントリー」「エヴリホエア・ユー・ゴー」「フェイス・オブ・イエスタデイ」の4曲は、「哀愁・叙情・メロディアス」の3拍子がそろったイリュージョンの魅力が堪能できる名曲群。特に「フェイス・オブ・イエスタデイ」をオリジナル・ルネッサンスの2枚目収録のテイクと聞き比べると、そこはかとなく哀感も感じられ素晴らしい出来である。ラストの大曲「キャンドルズ・アー・バーニング」では、キースとジムのツイン・ヴォーカルが味わい深い。
「女性ヴォーカリストを擁したフォーキーなプログレ・バンド」という共通点も相まって、このイリュージョンとルネッサンスはよく対比される。日本人的な判官贔屓で、こちらのイリュージョンを「不運な名バンド」と推したいところだが、いかんせんアニー・ハズラムという稀代の女性ヴォーカリストを擁して『燃ゆる灰』などの名盤をリリースしているバンドが相手ではどうしても分が悪い。そこで「陽のルネッサンスと陰のイリュージョン」的な言い方をされたりもするが、この作品を聴くとそうした表現も十分頷ける。『醒めた炎』とは、よく言ったものだ(トム・ヴァーレインのソロに同じタイトルがあったように思うが)。
INNOCENTS & ILLUSIONS / RENAISSANCE [オリジナル・ルネッサンス~イリュージョン]
【ディスク1】 RENAISSANCE
1. キングズ・アンド・クイーンズ
2. イノセンス
3. アイランド
4. さすらい人
5. 銃弾
6. アイランド(シングル・バージョン~ボーナス・トラック)
7. ザ・シー(ボーナス・トラック)
【ディスク2】 ILLUSION
1. ラヴ・ゴーズ・オン
2. ゴールデン・スレッド
3. ラヴ・イズ・オール
4. ミスター・パイン
5. フェイス・オブ・イエスタディ
6. パスト・オービッツ・オブ・ダスト
7. 陽のあたる大地(ボーナス・トラック)
8. 孤独な堕天使(ボーナス・トラック)
9. プレイヤー・フォー・ライト(ボーナス・トラック)
10. ウォーキング・アウェイ(ボーナス・トラック)
「3大ギタリスト」を輩出したことで知られるヤードバーズが、あとから加入したジミー・ペイジのバンドになってしまった後、ヤードバーズのヴォーカリストであったキース・レルフはヤードバーズ時代の僚友ジム・マッカーティー(ドラムス)とともに、トゥゲザーというフォーク・デュオを結成します(シングル盤1枚のみ)。この後、キースとジムの2人が新たにルイス・セナモ(ベース)、ジョン・ホウクン(キーボード)、キースの妹のジェーン・レルフ(ヴォーカル)の3人を加えて結成したのが、ルネッサンスです。
この2枚組CDは、第1期ルネッサンスが残した2枚のアルバムに、計6曲のボーナストラックを加えたアンソロジー。まずディスク1は、プロデューサーに元ヤードバーズのポール=サミュエル・スミスを迎えて制作された1stアルバム(70年)から。ボーナストラックの2曲は、シングル・カットされた「アイランド」のシングル・ヴァージョンとそのB面曲です。1stアルバムは、ジョン・ホウクンのピアノを全面に出した音作りで、クラシカルな要素を感じさせますが、まだまだ試行錯誤といったところ。シングル・カットされた「アイランド」のような、ジェーンのヴォーカルを大々的にフィーチュアーすれば、また違ってたと思いますが。
一方ディスク2は71年にリリースされた2ndアルバム『イリュージョン』で、4曲のボーナストラックが追加されています。『イリュージョン』のレコーディングはかなり混乱したようで、参加メンバーの多様さがそのことを物語っています。なかでも「ミスター・パイン」は、ジョン・ホウクンが集めたメンバーによってレコーディングされた曲であり、ほとんど別のバンドといってもいいくらい。ただこの「ミスター・パイン」をつくったのは、のち新生ルネッサンスの中心となるマイケル・ダンフォードで、彼はギターでこの曲に参加しています。このアルバムでは、ピアノ中心としたクラシカルな雰囲気が強くなり、のちのルネッサンス・サウンドのコンセプトができあがったと言っていいでしょう。中でも「フェイス・オブ・イエスタディ」の美しいメロディーと構成は秀逸。ボーナス・トラックのうち、「陽のあたる大地」は、キース・レルフとジム・マッカーティが、ヤードバーズ解散直前の68年6月にレコーディングしていた曲。「孤独な堕天使」ともども、ヤードバーズの『リトル・ゲームス』収録の「トゥゲザー・ナウ」とあわせて聴くと、フォークにもベースを持ったルネッサンスのルーツを垣間見ることができ、興味深いものがあります。