WHEEL IN THE ROSES / REMA-REMA [4AD]
WHEEL IN THE ROSES / REMA-REMA
SIDE 1
1.Feedback Song
2.Rema-Rema
SIDE 2
1.Instrumental
2.Fond Affections
『ミュージック・マガジン』1987年6月号の4AD特集掲載のディスコグラフィを見ると、初期4ADのカタログナンバーは、AXIS時代からシングル・アルバムも含めてすべて通し番号になっている。したがって、このレマ・レマが残した唯一のレコード(80年)のBAD5という番号から、4AD最初期の作品の一つだということがわかる。4ADがスタートした1980年に同レーベルからリリースされた19作品のうち、アルバムは2枚しかない。4AD発足当初は、シングル主体だったのである。
レマ・レマは、マーク・コックス(キーボード)、 マイケル・アレン(ヴォーカル&ベース)、ゲイリー・アスクィス(ヴォーカル&ギター)、 マルコ・ピローニ(ギター)、マックス(ドラムス)の5人組。重くうねるようなビートにノイジーな感覚は 麻薬のよう。オープニングの「Feedback Song」は、ジャケットのブリミティヴで呪術的な雰囲気と、うまくマッチしている。私が最初に買ったアナログシングルは、再発CDと異なり、オープニングの♪We're REMA-REMA~というヴォーカルがはいっていない。ラスト・ナンバーの「Fond Affections」は静謐なナンバーで、暗い海の底を漂っているような感覚。のちにディス・モータル・コイル の2ndアルバムに収録されたが、そのテイクにはマーク・コックスがDX7で参加している。 耽美・内省・虚無・諦観....私が初期4ADに抱いたイメージは、このレコードからだった。4ADの最高傑作は?と問われたとき、アルバム単位ならばディス・モータル・コイルの1枚目かコクトー・トゥインズの『Treasure』をあげたいところだが、シングルならばこのレマ・レマ。
ジャケットの元になった写真を、写真家集団「マグナム・フォト」の作品集で見つけた。1949年にスーダンのコルドファンで撮影されたもので、「仲間の部族民にかつがれて勝ち誇るヌバ族のレスラー」というタイトルがつけられている。レスラーの右手に見える花は、オリジナルにはない。フォトグラファーはジョージ・ロジャー。Wikipediaによれば、第二次世界大戦中戦争カメラマンとして活躍したロジャーは、解放されたナチスの強制収容所で見た光景がトラウマとなって戦争カメラマンを辞め、アフリカをテーマにした写真を撮っていたという。『LIFE AT WAR』にロジャーが撮った写真が掲載されているが、骨と皮ばかりになった人たちの折り重なる死体の脇を、一人の少年が歩いているという写真である。
2019年、レマ・レマの音源をまとめた2枚組CDが4ADからリリースされた。『Fond Reflections』と題されたセットは、1枚目がデモやリハーサル音源で、2枚目はオリジナルEPにボーナス・トラックを加えた編集盤。
Demos And Demolitions
01. Feedback Song(Halligans Live Rehearsal Version)
02. Rema-Rema(Halligans Live Rehearsal Version)
03. Gallery/Oh Rock N Roll
04. Lost My Way
05. Short Stories
06. International Scale
07. Fond Affections(Portobello Road Version)
08. Why Ask Why
09. Instrumental(Halligans Live Rehearsal Version)
10. Entry(Halligans Live Rehearsal Version)
1枚目の05/06は、2014年にInflammable Materialというインディー・レーベルがアナログ7インチとして限定リリースした音源。
Extended Wheel In The Roses
01. Feedback Song
02. Rema-Rema
03. Entry
04. Instrumental
05. Fond Affections
06. No Applause
07. Murdermuzic
2枚目の7曲のうち、オリジナルは01/02/04/05の4曲。再発CDにはいっていたオープニングの♪We're REMA-REMA~というヴォーカルはカットされ、オリジナルに戻されている。03/04は01/02と同時にレコーディングされたトラック。06/07は04/05が収録された日と同じ1979年7月にロンドンのThe Albany Empireで収録されたライヴ・テイク。
イギリスで1981年にリリースされた『The Men With The Deadly Dreams』というコンピレーションには、79年4月26日にロンドンのAcklam Hallで行われたライヴから「Why Ask Why?」「Christopher」という2曲が収録されているらしいが、このコンピレーションには収録されていない。このコンピはWhite Stains Tapesというカセットオンリーのレーベルが200セット限定でリリースしたとのこと。
http://noiseaddiction2.blogspot.com/2015/03/rema-rema-acklam-hall-london-4-26-79.html
音源も興味深いが、ドラマーのマックス・ドロシーによるライナーには彼女がバンドに参加した経緯やバンド名の由来、マルコとスージー&ザ・バンシーズの関係などにも触れてあってこれまた興味深い。メンバーはパーラメントやブーツィー・コリンズ、モータウンなどのブラック・ミュージックなども好きだったという。確かに「レマ・レマ」はファンクっぽい。
Fond Reflections [輸入盤 / 2CD] (4AD0069CD)
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: 4AD
- 発売日: 2019/03/01
- メディア: CD
MESH & LACE / MODERN ENGLISH [4AD]
MESH & LACE / MODERN ENGLISH
01. Gathering Dust
02. 16 Days
03. Just A Thought
04. Move In Light
05. Grief
06. The Token Man
07. A Viable Commercial
08. Black Houses
09. Dance Of Devotion (A Love Song)
10. Smiles And Laughter
11. Mesh And Lace
12. Tranquility
13. Home
14. Swans On Glass
15. Incident
4ADの初期から現在まで活動しているほとんど唯一のバンドが、モダン・イングリッシュ(途中2回ほど数年にわたり活動停止した時期があった)。デビューシングルは1979年に自主製作のレーベルLimp Recordからリリースしたシングル「Drowning Man」で、エセックス出身の5人組である。4ADのアイヴォに見いだされて80年に4ADから「Gathering Dust」「Swans On Glass」 の2枚のシングルをリリースしたのち、ジョン・ピールの番組にも出演した。その後4ADからリリースした1stフルアルバムが『メッシュ&レース』だ。ジョイ・ディヴィジョンやバウハウウスの暗さにドライヴ感を加えたようなサウンドをベースに、時々感じるキラキラした感じや虚無的な雰囲気は初期4ADのイメージ。耽美のコクトーにソリッドなバウハウス、ビートのモダン・イングリッシュというのが私のイメージだった。
ノイジーでアグレッシヴな面に耳がいってしまいがちだが、実はメロディアスでもあった。4ADオールスターズのディス・モータル・コイルの最初のシングル「Songs to the Siren」(AD310)の12インチ「This Mortal Coil」(BAD310)には、A面すべてをつかってモダン・イングリッシュの9分に渡るカヴァー「Sixteen Days - Gathering Dust」が収められており、B面にはティム・バックレーのカヴァー「Songs to the Siren」のほか「Sixteen Days (Reprise)」が収められている。この「This Mortal Coil」のレコーディングには、モダン・イングリッシュのメンバーが2人、ギターのゲイリー・マクドウェルとベースのマイケル・コンロイが参加していた。このディス・モータル・コイルのシングルにキーボードでクレジットされているマーティン・ヤング(当時カラー・ボックスのメンバーだった)は、87年にM/A/A/R/Sの一員として「パンプ・アップ・ザ・ヴォリューム」の全英No.1ヒットを飛ばした。
現行CDのうち、オリジナルアナログLPに収録されていたのは02~09の8曲。残りは7インチや12インチのみに収録されていた曲である。オリジナルに収録されていなかった「Gathering Dust」を最初にもってきたのは、「16days」とつなげてディス・モータル・コイルをイメージさせることを狙ったのだろう。
幸か不幸か、彼らが2ndアルバム『After The Snow』をリリースした1982年は、折しも第2次ブリティッシュ・インベイションが本格化してくる時期。アルバムからカットされた2枚目のシングル「I Melt With You」がビルボードの全米チャート78位というヒットとなってしまい、アメリカ市場を意識したサウンドへと変貌してしまう。3枚目のアルバム『Ricochet Days』(84年)は陰鬱さが影を潜め、アメリカ狙いがあからさまな作品だったが失敗に終わり(全米93位)、第2のシンプル・マインズを目指すべく4ADを離れてアメリカのSIREと契約して4枚目のアルバム『Stop Start』をリリースするも鳴かず飛ばず(全米154位)。ところが90年には「I Melt With You」をリメイクしたところ、また76位まで上がるという何ともコメントのしようがない結果となった。現在のところ2016年にリリースした『Take Me to the Trees』が最新作で、オリジナル・メンバー5人のうちリチャード・ブラウン(ドラム)を除く4人が参加し、”PLEDGEMUSIC"を通じたクラウドファンディングによって制作された。プロデュースは前述のマーティン・ヤング、カヴァーアートはは元23エンヴェロープのヴォーン・オリヴァーという、原点回帰?な作品。
ERA / IN CAMERA [4AD]
ERA / IN CAMERA (DAD 3508 CD)
【CD1】
01. Die Laughing
02. Final Achievement
03. Fragments Of Fear
04. The Attic
05. The Conversation
06. Legion
07. The Fatal Day
08. Co-Ordinates
09. Apocalypse
【CD2】
01. Scars
02.Apocalypse
03. Colour In The Home
04. The Conversation
05. Deflowered
06. On The Retina
07. Legion
08. Fragments Of Fear
09. The Attic
10. Co-Ordinates
11. The Fatal Day
1978年にロンドンで結成されたイン・カメラは、1980年に両A面の7インチ・シングル「Final Achievement / Die Laughing」(AD8)で4ADからデビューした。メンバーはデヴィッド・スタイナー(Vo/Key)、アンドリュー・グレイ(G)、ピート・ムーア(B)、ジェフ・ウィルモット(Dr)の4人。デビュー・シングルの「Die Laughing」は、大鷹俊一氏が監修したコンピレーション『暗闇の舞踏会』にも収録されており、このことからもわかるように、イン・カメラは、レマ・レマやマスなどと同様に初期4ADの雰囲気~80年代初期のポスト・パンク色が強いバンドである。エッジの効いた鋭いギターと、地を這うような重々しいベース、そしていささか神経症的なヴォーカルは、ジョイ・ディヴィジョン直系のスタイル。彼らはバウハウスのオープニング・アクトをつとめて注目されるようになり、80年にはジョン・ピール・セッションにも出演したものの(CD1の7~9の3曲は、このときの音源)、翌81年に解散した。結局彼らが活動中に残した作品は、前述の両A面7インチに加えて、80年にリリースした「IV Songs」 (BAD19)、解散後の82年にリリースされたジョン・ピール音源の「Fin」 (BAD205)という2枚の12インチをあわせた計3枚のシングルである。
この『Era』は、イン・カメラの音源を集めた2枚組コンピレーションで、2015年にリリースされた当初、マニアの間では結構話題となった2枚組である。CD1はオフィシャルにリリースされたすべてのシングル音源を集めたもので、01・02がデビューシングル、03~06が「IV Songs」、残りの3曲が「Fin」に収録されていた曲。そしてCD2は、デモ・ヴァージョン(01・02)やライヴ・テイク(03~06)、リハーサル(07~11)などのレア音源集であり、この2枚組セットで、伝説のバンドと言ってもいい彼らの全貌を知ることができる。CD2に収録されている曲を聴いていると、重苦しく閉塞感漂う当時のロンドンの空気感が伝わってくるようだ。
1992年に『13 (Lucky For Some)』というタイトルのコンピレーションもリリースされているが、『13』には、『Era』のCD1全曲のほか、「Pins And Wax」「On The Retina」「Colour In The Home 」「Deflowered 」の4曲が「1991Remix」として収録されている。私は『13』を持ってないので確認できないが、「Pins And Wax」は『Era』未収録、その他3曲も『Era』収録の音源(ライヴ・テイク)とは異なる音源ではないかと想像している。
イン・カメラ解散後、アンドリュー・グレイは元レマ・レマ~マスのマイケル・アレン、マーク・コックスとともにウルフギャング・プレスを結成した。
LABOUR OF LOVE / MASS [4AD]
LABOUR OF LOVE / MASS (CAD107CD)
01. Mass
02. Why
03. Ill
04. Why
05. Isn't Life Nice
06. Elephant Talk
07. F.A.H.T.C.F.
08. Cross Purposes
09. Innocence
[Bonus Track]
10. You and I
11. Cabbage
レマ・レマが1枚のEPを残して解散した後、マルコとマックスの2人を除く3人がダニー・ブリオテットを新たに迎えて結成したのがマス。1980年に4ADからシングル「You and I / Cabbage」、翌81年にアルバム『LABOUR OF LOVE』をリリースして解散した。
マス(MASS)というバンド名は、カトリック教会の典礼「ミサ」のことだが、そのネーミング通り「黒ミサ」をイメージさせる暗黒サウンド。闇の底から呼びかけてくるようなヴォーカル、ノイジーなギター、重いリズム....ポスト・パンクのいわゆる「ゴス」のお手本のようなサウンド。オープニング・ナンバーの「MASS」は、このバンドの特徴がもっともよく伝わってくる曲。オープニングのオルガンにプリミティヴで祈るかのようなヴォーカルか被さり、徐々に音に厚みが増していく。緩急つけた構成は素晴らしい。
オリジナルのジャケットはいかにもゴスバンドらしいものだったが、2005年にCD化されたときは、イラストのジャケットに変更されてしまった。オリジナルの方がよかったような気がする。
You And I
Mass
Innocence
Why / Ill
マスの解散後、マイケル・アレンとマーク・コックスは、元イン・カメラのアンドリュー・グレイを迎えてウルフギャング・プレスを、ゲイリー・アスクィスとダニー・ブリオテットはレネゲイド・サウンドウェイヴをそれぞれ結成する。シングル曲の「You and I」は、大鷹俊一氏監修の4ADオムニバス『暗闇の舞踏会』にも収録されているが、前身のレマ・レマと後身のウルフギャング・プレス両方の雰囲気を持った曲。虚無的で厭世的な雰囲気は、このバンドのカラーをよく示している。