Stuart Moxham & Louis Philippe 」元ヤング・マーブル・ジャインツと元エルレーベル、2人の才人のコラボ・ユニット [ギター・ポップ系]
元ヤング・マーブル・ジャイアンツのスチュワート・モクサムと、かつてエル(él)・レーベルで一世を風靡したルイ・フィリップによるコラボ作はこれまで2枚がリリースされている。いずれも高水準のネオアコ名作。ともに「ネオアコ系」として語られることの多い2人だが、YMGはシンプルの極地、方やエル・レーベルはお洒落なラウンジ系と両者の持ち味はかなり異なる。
最初の1枚『The Huddle House』は、2007年にルイ・フィリップ自身のインディー・レーベルWonderからリリースされ、スチュワートの弟アンドリューもクレジットされている。かつての木漏れ日フォーク的な雰囲気をたたえた、牧歌的でメロディアスな作品集だが、シンプルでデモ集のような趣のアルバム。しかし2020年にリリースされた2作目『The Devil Laughs』は、アレンジやコーラスワークも作り込まれており、より高い完成度を誇る作品に仕上がった。ゆったりとした流れるような曲からジャス調の曲まで、流麗なコーラスワークとアコギが耳に心地よい。ルイ・フィリップ2枚目のアルバム『アイヴォリー・タワー』のオープニング・ナンバー「ゲス・アイム・ダム」は、ブライアン・ウィルソン(とラス・タイトルマン)がつくった曲で、山下達郎もカヴァーした曲。この曲の雰囲気をを引き算していって、ちょうどよい感じにしたらこうなったという感じのアルバムである。YMG風オルガンが流れる曲もあって、いい感じの作品である。
The Huddle House
The Devil Laughs
- アーティスト: STUART MOXHAM&LOUIS PHILPPE
- 出版社/メーカー: CA VA? RECORDS / HAYABUSA LANDINGS
- 発売日: 2021/03/17
- メディア: CD
THE TROUBADOURS [ギター・ポップ系]
ザ・トルバドールズは、ジョン・レッキー(ストーン・ローゼスやラーズを手がけたプロデューサー)がプロデュースしたシングル「ギミ・ラヴ」で2008年にデビューした。「ギミ・ラヴ」は、リヴァプールのDNAを受け継ぐ名曲だという思いは今も変わらない。キャッチーなメロディーと流麗なコーラスワーク、ポップでどこかノスタルジック....80年代ギターポップの影響を感じさせつつもモダンな感じが実に心地よいサウンドで、「ラーズ(The La's)の後継者はザ・トルバドールズだ」と思ったものである。リヴァプール出身という思い入れだけではなく、良い曲がたくさんあって....「たくさん」と言ってもアルバムはこれ1枚だけ....というのもThe La'sそっくり。
アルバムが「日本先行発売」というアナウンスがされたときからなんとなくイヤな予感がしていた。しかもリリース(9月)されたアルバムは、大方の予想と異なりジョン・レッキーではなかった。アルバムリリース直前の8月にはサマソニで来日しており、リリース後の11月には単独で来日公演も行うなど日本では着実に人気を博していたと思う。アルバムの出来も良かった。久しぶりに「良いバンドが出てきたなぁ」と思ったものである。しかし結局本国ではアルバムはリリースされず、トルバドールズは2009年に解散がアナウンスされた。2011年12月には地元リヴァプールで一夜限りのライヴを行ったと伝えられたものの、その後バンドとしての活動は伝わってこない。リーダーのマーク・フリスはソロで活動している。「ギミ・ラヴ」のEP盤、アマゾンJPのマーケットプレイスでは投げ売りだが、アマゾンUKでは結構な値段で売られている。
マーク・フリスのフェイスブック
https://www.facebook.com/FrithOfficial/
アルバムが「日本先行発売」というアナウンスがされたときからなんとなくイヤな予感がしていた。しかもリリース(9月)されたアルバムは、大方の予想と異なりジョン・レッキーではなかった。アルバムリリース直前の8月にはサマソニで来日しており、リリース後の11月には単独で来日公演も行うなど日本では着実に人気を博していたと思う。アルバムの出来も良かった。久しぶりに「良いバンドが出てきたなぁ」と思ったものである。しかし結局本国ではアルバムはリリースされず、トルバドールズは2009年に解散がアナウンスされた。2011年12月には地元リヴァプールで一夜限りのライヴを行ったと伝えられたものの、その後バンドとしての活動は伝わってこない。リーダーのマーク・フリスはソロで活動している。「ギミ・ラヴ」のEP盤、アマゾンJPのマーケットプレイスでは投げ売りだが、アマゾンUKでは結構な値段で売られている。
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Where the Rain Falls
Gimme Love
THE LA'S / THE LA'S [ギター・ポップ系]
最初のアルバムが名盤で、おまけにシングルは名曲。そんなラーズ(The La's)は「不運なバンド」なのかもしれない。『クロスビート』1991年4月号に掲載されているベーシストのジョン・パワーのインタビューで、彼は「ブレイクするまで4年半かかった」と語っているが、1986年から活動していた彼らが「現役時代」にリリースしたオリジナル・アルバムはたった1枚、シングルは5枚だけ。シングルのうち「ゼア・シー・ゴーズ」は2度に渡ってリリースされたので、厳密には4枚(活動停止中の99年に3度目のリリース)。2005年には再結成して来日公演も行っているが、ニュー・アルバムがリリースされたわけではない。あくまでアルバムはこれ1枚。
The La's
01. Son Of A Gun
02. I Can't Sleep
03. Timeless Melody
04. Liberty Ship
05. There She Goes
06. Doledrum
07. Feelin'
08. Way Out
09. I.O.U.
10. Freedom Song
11. Failure
12. Looking Glass
リーダーのリー・メイヴァースはこのアルバムについて、「本当に大嫌い」「曲本来の魅力が25%も出てない」「たとえ今あのレコードを気に入ってる人も、俺たちの本当に満足行くものが出たときには驚くと思う」と語っており(『クロスビート』1991年8月号)、 ジョン・パワーも「(プロデューサーのスティーヴ・リリーホワイトは)僕らのサウンドを生かしてはくれなかった」と述べている(同91年4月号)。にもかかわらず、アルバム収録曲はどれもメロディアスで素晴らしい曲ばかり。「ロックの名盤」という評価は不動だ。「名盤」という評価を得るには、30年くらいは聴き継がれる普遍性が必要だと思うが、このアルバムは十分その資格を持っている作品だ。1990年代初期、『クロスビート』誌などでラーズより大きく扱われていた新人バンドはいくつもあったが、ラーズほど今なお語り継がれているバンドはあるまい。アルバム1枚で訳のわからないままうやむやのうちに消えてったラーズが、「一発屋」と揶揄されることもあまりなく、カムバックのたびに歓迎されているのは、このアルバムの素晴らしさに起因していると思う。
There She Goes
Timeless Melody
Way Out
Feelin'
Doledrum~There She Goes (2005)
『ラーズ+8』(POCD-1982)のオビには「この音(サウンド)が'90年代を生み出した」とあるけど、僕にとって彼らは80年代のバンド。というよりもっと前の60~70年代の雰囲気をより強く感じる。実際、日本公演ではザ・フーの「マイ・ジェネレイション」やストーンズの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」も演奏したようで、リー・メイヴァースのヴォーカル・スタイルには、ミック・ジャガーを意識しているのではないかと感じるときがある。この作品は、60年代から80年代までの英国ロックの本質かつ良質の部分が見事に結晶した奇跡的なアルバムだと思っている。しかし奇跡は何度も起きない。作った側の自己評価と、リスナー側との評価の違いが、バンドのその後を狂わせてしまったのかもしれない。しかし、奇跡をもう一度と望んでいる人は少なくないはず。
インタビューでリー・メイヴァースは「7人のプロデューサーが3ヶ月交代でやってきた」と語っている。実際彼らは相当数のレコーディングを行ったようで、この1stアルバムも、後に「ボーナストラック8曲入り」と「2枚組デラックス・エディション」がリリースされた。そしてオリジナル・アルバムは1枚だけなのに、2010年にはなんとCD4枚組のボックスまでリリースされた。
The La's +8
13. Knock Me Down (1stシングル「Way Out」のカップリング曲)
14. Endless( 〃 )
15. Come In Come Out(2ndシングル「There She Goes」のカップリング曲)
16. Who Knows (「There She Goes」12インチのカップリング曲)
17. Man I'm Only Human ( 〃 )
18. All By Myself
19. Clean Prophet(3rdシングル「Timeless Melody」のカップリング曲)
20. There She Goes (Original Single Version)
The La's - Deluxe Edition
【DISC 1】Original Album
Bonus Trcks
13, Son Of A Gun
14. Doledrum
15. I Can't Sleep
16. Way Out
17. I Am The Key
18. That'll Be The Day
-
【DISC2】Mike Hedges Album
01. I.O.U.
02. I Can't Sleep
03. Knock Me Down
04. Way Out
05. Doledrum
06. There She Goes
07. Feelin'
08. Timeless Melody
09. Son Of A Gun
10. Clean Prophet
11. Come In, Come Out
12. Failure
13. Looking Glass
Bonus Tracks
14. Doledrum (John Porter mix)
15. Way Out (Andy MacDonald mix)
16. There She Goes (John Leckie mix)
17. Man I'm Only Human (John Leckie mix)
18. Feelin' (Bob Andrews mix)
19. Clean Prophet (Bob Andrews mix)
20. I Can't Sleep (Jeremy Allom mix)
『+8』のボーナストラックはシングルのカップリング曲で、一方『2枚組』のボーナストラックは別ヴァージョン。というわけで、両方買っても損はないという有り難い編集である。『2枚組』のディスク2はマイク・ヘッジズ(キュアーなどをてがけた)がプロデュースした1stアルバムだけど、軍配は明らかにスティーヴ・リリーホワイトがプロデュースした正式版にに上がる。レーベルの判断は正しかった。「ゼア・シー・ゴーズ」が3ヴァージョン収められており、名プロデューサー、ジョン・レッキーのヴァージョンも悪くはないが、耳に慣れているスティーヴ版の勝ち。
There She Goes: the Collection
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Imports
- 発売日: 2015/03/31
- メディア: CD