SYSTEMS OF ROMANCE / ULTRAVOX [ウルトラヴォックス]
システムズ・オブ・ロマンス / ウルトラヴォックス
01. Slow Motion
02. I Can't Stay Long
03. Someone Elses Clothes
04. Blue Light
05. Some Of Them
06. Quiet Men
07. Dislocation
08. Maximum Acceleration
09. When You Walk Through Me
10. Just For A Moment
ウルトラヴォックスの3rdアルバム(78年)。アイランドからリリースした最後のアルバムで、フロント・マンだったジョン・フォックスが在籍した最後のアルバムでもある。
ゲイリー・ニューマンがジョン・フォックス~初期ウルトラヴォックス!からの影響を公言していたこともあり、最初に『HA!HA!HA!』(77年)を聴いてみたのが、パンキッシュな攻撃性が自分には今ひとつピンと来なかった。どこがテクノ~エレポップなの?と。しかしこの3枚目は、流れるようなシンセ、エッジの効いたギター、そしてメロディアスな曲調など、ポスト・パンクからテクノ~エレ・ポップに向かう方向性を明確に示した作品だ。前作『HA!HA!HA!』はノイジーなギターがアルバム全体のイメージを攻撃的なものにしていたが、本作ではキーボードとドラム・マシーンが前面に出ており、テクノ系ニューウェーヴの原型を見ることができる。『HA!HA!HA!』から本作への流れをたどってみると、そのまま70年代パンクから80年代ニューウェイヴへの移行となる。プロデュースはドイツのコニー・プランク。そのつながりか、ラストの「Just For A Moment」には、ボウイの「ワルシャワ」に通じるようなヨーロッパ的耽美感が漂っている。アソシエイツの『サルク』と並ぶUKニューウェイヴの傑作だと思う。
Slow Motion
Can't Stay Long
Maximum Acceleration
Dislocation
岡崎京子さんの名作『ヘルター・スケルター』の主人公りりこを、彼女を追う検事は親しみを込めて「タイガー・リリィ」と呼ぶ。tiger lilyとは植物のオニユリ(鬼百合)のことで、ピーターパンに登場するキャラクターの名前でもある。だけど僕にはジョン・フォックスがつくっていたウルトラヴォックス!の前身バンドの名前。僕は、岡崎さんがジョン・フォックスのファンだったのではないかと思っている。あの事故からもう20年以上がたってしまった。