OUT OF THE MIST / ILLUSION [オリジナル・ルネッサンス~イリュージョン]
『醒めた炎』
01. イサドラ
02. 自由への道
03. ビューティフル・カントリー
04. ソロ・フライト
05. エヴリホエア・ユー・ゴー
06. フェイス・オブ・イエスタデイ
07. キャンドルズ・アー・バーニング
イリュージョン名義ではファースト・アルバム(1977年リリース)だが、オリジナル・ルネッサンスとしては一応3枚目と考えてよかろう。オリジナル・ルネッサンスが2枚のアルバムを残して消滅し、ルネッサンスのバンド名がアニー・ハズラムのバンドに引き継がれた後、元オリジナル・ルネッサンスのメンバーを中心に再結成されたのがイリュージョン。オリジナル・ルネッサンスの2枚目のアルバム・タイトルが、そのままバンド名になっている。
メンバーは、ジム・マッカーティとジェーン・レルフ、ルイス・セナモ、ジョン・ホウクンのオリジナル・メンバー4人のほか、ギターにジョン・ナイトブリッジ、ドラムにエディ・マックニールを迎えた6人。かつてジムとともにオリジナル・ルネッサンスの中心だったキース・レルフはギターの感電事故により、この作品がリリースされる前年(1976年)に不慮の死を遂げている。彼は死の直前までオリジナル・ルネッサンスの再結成を目指しており、バンド名は「ナウ」だったという。したがってこのイリュージョンは、キースの遺志を継ぐという形で再結成されたオリジナル・ルネッサンスと言える。
オリジナル・ルネッサンス時代に比べると、「ソロ・フライト」のエレクトリック・ギターなどとってつけたようで、やや鼻につく。しかしピアノを前面に出し、メロトロン、ストリングスも効果的に使用した叙情的なメロディーは、ジェーンのしっとりとしたヴォーカルによく合っており、「泣き」のプログレという感じ。「自由への道」「ビューティフル・カントリー」「エヴリホエア・ユー・ゴー」「フェイス・オブ・イエスタデイ」の4曲は、「哀愁・叙情・メロディアス」の3拍子がそろったイリュージョンの魅力が堪能できる名曲群。特に「フェイス・オブ・イエスタデイ」をオリジナル・ルネッサンスの2枚目収録のテイクと聞き比べると、そこはかとなく哀感も感じられ素晴らしい出来である。ラストの大曲「キャンドルズ・アー・バーニング」では、キースとジムのツイン・ヴォーカルが味わい深い。
「女性ヴォーカリストを擁したフォーキーなプログレ・バンド」という共通点も相まって、このイリュージョンとルネッサンスはよく対比される。日本人的な判官贔屓で、こちらのイリュージョンを「不運な名バンド」と推したいところだが、いかんせんアニー・ハズラムという稀代の女性ヴォーカリストを擁して『燃ゆる灰』などの名盤をリリースしているバンドが相手ではどうしても分が悪い。そこで「陽のルネッサンスと陰のイリュージョン」的な言い方をされたりもするが、この作品を聴くとそうした表現も十分頷ける。『醒めた炎』とは、よく言ったものだ(トム・ヴァーレインのソロに同じタイトルがあったように思うが)。
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