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デヴィッド・ボウイ 1974年「ダイヤモンド・ドッグス・ツアー」の音源②~Strange Fascination [デヴィッド・ボウイ]

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 1974年6月にスタートしたボウイの北米ツアー「ダイヤモンド・ドッグス・ツアー」は、8月の『ヤング・アメリカン』のレコーディングで一時中断するが、9月に再開する。再開して最初のロサンゼルス公演は9月2日~8日の連続7日公演で、中日の5日の模様が、オフィシャルの『クラックド・アクター』。この日の音源は1990年に『Strange Fascination』(TOM001/002)というタイトルでリリースされ、その後も様々なコピー盤がリリースされた。雑誌『GOLD WAX』No.7でも紹介され、私も同誌の記事を読んで購入したものである。オフィシャル盤では2分足らずに編集されていたオープニング・ナンバー「1984」につながるSEが、このアイテムでは10分以上収録されている点がポイント。9月までは巨大なセットを使用して「ハンガーシティ」という架空の都市を模したシアトリカルなステージが行われていたので、犬の遠吠えや車の音、警察無線らしきSEが荒涼とした都市の情景をイメージさせる。犬の遠吠えがだんだん近づいてきて、ボウイが登場すると女性の声に変わっていくことで、会場の雰囲気も徐々に盛り上がっていく様子を考えれば、長いSEも悪くない。

 Empress Valleyからは『仮面の舞踏者 未来人間D』というタイトルのボックスがリリースされてる。本編の9月5日はミックス違いのサウンドボード2種(CD2枚×2セット)、ボーナスディスクとしてロサンゼルス初日(9月2日)と三日目(9月4日)をそれぞれCDr2枚が付属した8枚組。本編のミックス違いは、あまりよくわからない。また初日・三日目はあくまでオマケで、音はよくない。特に初日はあくまで資料的価値のレベル。

 74年ロサンゼルス7daysの音源としては、六日目(9月7日)を収録した『BOWIE 74 LIVE』が良い。オーディエンスながら『未来人間D』のボーナス・ディスクよりもはるかに高音質で、バランスがよいため9月から加わったバックヴォーカル隊の声がよく聞こえる。なかでも「ダイヤモンドの犬」を聴くと、オフィシャルでは目立たなかったバック・ヴォーカル隊の活躍がよくわかる。後半部だけというのが残念なアイテム。

 オフィシャル盤『クラックド・アクター』にバック・ヴォーカルでクレジットされているのは以下の7名。ロサンゼルス公演では、他の日もこのメンバーがバック・ヴォーカルだったと思われる
  ・ルーサー・ヴァンドロス
  ・ガイ・アンドリサーノ
  ・ウォーレン・ピース
  ・アンソニー・ヒントン
  ・アヴァ・チェリー
  ・ダイアン・サムラー
  ・ロビン・クラーク.
 このうち、『デヴィッド・ライヴ』にもクレジットされているのはガイ・アンドリサーノとウォーレン・ピースの2名だけで、「フィリー・ドッグ・ツアー」になるとガイ・アンドリサーノの名前はなくなり6人となっている。アルバム『ヤング・アメリカンズ』のレコーディングにも7人のうちガイ・アンドリサーノだけクレジットされていないので、何か事情があったのだろう。同年12月のディック・カヴェット・ショーではこの6人がバック・ヴォーカルで参加している。映像を見る限り、カルロス・アロマー以下、ほとんどツアー・メンバーである。





向かって左からルーサー・ヴァンドロスとロビン・クラーク(カルロス・アロマーの妻)、ウォーレン・ピースとアヴァ・チェリー(金髪で短髪の女性)、後列左がダイアン・サムラーとアンソニー・ヒントン。ボウイの声が酷い....。その後アンソニー・ヒントンとダイアン・サムラーの2人は、ルーサー・ヴァンドロスがつくったヴォーカル・ユニット、ルーサーに参加した。


 ルーサー・ヴァンドロス以外で成功を収めたのは、ロビン・クラーク。彼女が脚光を浴びたのは、シンプル・マインズの大ヒットアルバム『ワンス・アポン・ア・タイム』(85年)に参加したときで(カルロス・アロマーとともに夫婦で参加)、レコーディングのみならず「All the Things She Said」「Alive and Kicking」「Sanctify Yourself」の3本のPVにも出演し、ツアーにも同行して圧倒的な存在感を見せつけた。


  ロビン・クラークのウェブサイト:https://www.robinclarkmusic.com/



Simple Minds - Sanctify Yourself



Simple Minds - Alive And Kicking



Simple Minds - All The Things She Said



Simple Minds - All The Things She Said (Live) Rotterdam 1985 (Stereo)


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Isolar – 1976 Tour の音源 [デヴィッド・ボウイ]

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 私が一番音楽を聴いていた時期は、高校生~大学生だった1980年代だ。その頃の7インチシングルを整理するため「洋楽パラダイス」というサイト[https://e9913110.blog.fc2.com/]をやっているのだが、先日ダリル・ホールとジョン・オーツの「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」[https://e9913110.blog.fc2.com/blog-entry-482.html]について書いた折にふと思い出したのが、デヴィット・ボウイは『ソウル・トレイン』に最初に出演した白人アーティストだったということ。マイケル・ジャクソンは「ビリー・ジーン」のベース・ラインを「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」から頂戴したそうだが[https://en.wikipedia.org/wiki/I_Can%27t_Go_for_That_(No_Can_Do)#Influence_on_%22Billie_Jean%22]、ボウイは「フェイム」のギター・リフをフレアーズの「フット・ストンピン」がら流用した[https://en.wikipedia.org/wiki/Fame_(David_Bowie_song)#Composition_and_recording]。ダリル・ホール&ジョン・オーツを功労者とすれば、ボウイは先駆者だ。LINEのプロフィールで流れるBGM、私はボウイの「ゴールデン・イヤーズ」に設定している。

 『ステイション・トゥ・ステイション』がリリースされたのは1976年1月。直後の2月2日のヴァンクーヴァーを皮切りにツアーを敢行し、5月18日のパリまで65公演が行われた。Isolar Tourと名付けられたこのツアーからは、1stレグの終盤、3月23日のニューヨーク公演が『ライブ・ナッソー・コロシアム''76』として公式リリースされている。もともとは「キンビスケット・フラワー・アワー」で同年4月に放送された音源で、うち「ワード・オン・ア・ウィング」と「ステイ」の2曲は1991年にライコからリイシューされた『ステイション・トゥ・ステイション』にボーナス・トラックとして収録されていた。その後2枚組CDとして『スティション・トゥ・ステイション』のデラックス・エディションに収録され、さらに2016年にボックス『Who Can I Be Now?』に収録されたことを機に、翌2017年に単体でリリースされるに至った。単体リリースされたことからも分かるように、ボウイ自身のコンディションの良さと充実したバックの演奏、ヒット曲連発というセットリストの良さとも相まって、充実した作品となっている。ツアーに同行したキーボード奏者が、イエスのファーストからサードまでと再結成『90125』に参加していたトニー・ケイというのも特筆事項。
 しかし、「パニック・イン・デトロイト」の後半におけるデニス・デイヴィスのドラム・ソロがカットされて、もともと13分あった長さが半分になっている。かつてはiTunes Storeなどのデジタル・ダウンロードで聴くことができたが、現在ではダウンロード版もCD版と同じ仕様になっている。Youtubeでも聴くことができるが、アイテムとしては『DAVID BOWIE NASSAU 1976』(Wardour-298)がとてもよい。「ファイヴ・イヤーズ」が未収なのは残念だが、公式リリース用に手を加える前の会場の空気感が伝わってくる。
メーカーインフォ https://www.giginjapan.com/david-bowie-76nassau/

David Bowie - Panic In Detroit (Unedited Alternate Mix - Live Nassau Coliseum '76)

  このツアーの1stレグにおけるロサンゼルス公演終了後にボウイはそれまで住んでいたを同地を引き払い、ヨーロッパに拠点を移すことになる。そしてベルリンで制作されたのが、『ロウ』である。




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デヴィッド・ボウイ 1974年「ダイヤモンド・ドッグス・ツアー」の音源① [デヴィッド・ボウイ]

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 コロナ禍の影響でリリースが遅れたものの、今年のレコード・ストア・デイ(RSD)の目玉でもあったデビッド・ボウイの74年ライヴが発売された。ボウイのRSD関係では2017年に74年ロサンゼルス(『クラックド・アクター』)、2018年では78年のアールズ・コート(『ウェルカム・トゥ・ザ・ブラックアウト』)がそれぞれ目玉的にリリースされてきたが、今年の『I'm Only Dancing』はそれらに劣らぬ名盤である。これでボウイの74年USツアーは、1stレグ『デヴィッド・ライヴ』、2ndレグ『クラックド・アクター』、そして今回リリースされた3rdレグ『I'm Only Dancing』とすべてのレグがオフィシャルでリリースされ、ツアーの全貌が明らかとなった。

 7枚目のアルバム『ダイヤモンドの犬』がリリースされた直後、1974年6月14日からカナダ(モントリオール)を皮切りに「The Diamond Dogs Tour」がスタートする(当時ボウイのマネージャーだったトニー・デフリーズがメディアに対して「このツアーはThe Year Of The Diamond Dogsと呼ぶように」と語っていたことから、ボウイのファン・サイトの中には「The Year Of The Diamond Dogs Tour」と表記しているものもある)。ツアーは同年12月まで続くが、このツアーは6/14(モントリオール)~7/20(ニューヨーク)、9/2(ロサンゼルス)~9/16(アナハイム)、そして10/5(セントポール)~12/1(アトランタ)の3期に分けられる。1stレグと2ndレグの間の中断期間となった8月から、フィラデルフィアのシグマ・スタジオで次作『ヤング・アメリカンズ』のレコーディングに取り掛かった。


【1stレグ~デヴィッド・ライヴ】
 1stレグの模様を収録したオフィシャル『デヴィッド・ライヴ』は、7/10~13のペンシルベニア州アッパーダービーのタワーシアター公演を元にしたライヴ盤。ツアー終了後の74年10月にリリースされ全米8位を記録し、11月にはゴールドディスク認定というチャートアクションは、2枚組ライヴ盤ということも考えあわせるとアメリカにおけるボウイの成功ぶりがうかがえる。アナログ時代は2枚組全14曲だったが、1990年にリリースされたRYCO盤は「Here Today,Gone Tomorrow」「Time」の2曲プラス「Band Intro」の計3トラックが追加収録された。そして2005年リマスター盤ではRYCO盤のボーナストラックが正しい位置に挿入され(RYCO盤のボーナストラックはディスク2の最後にまとめて収録されていた)、さらに「Panic in Detroit」と「Space Oddity」の2曲が追加された。RYCO盤はボウイの声に変なエコーがかかっていて観客の歓声もくぐもった感じだったが、現行盤ではヴォーカルがクリアになり、デヴィッド・サンボーンのサックスもよく聞き取れるようになった。ボウイの声が苦しそうな部分もよくわかるようになったが、それはそれで味わいである。特に2枚目、デヴィッド・サンボーンがファンキーなサックスを聴かせるR&Bのカバー「ノック・オン・ウッド」、メランコリックなピアノがリードする「スペース・オディティ」、アール・スリックの歪んだような不思議にカッコいいギターでスタートする「ダイヤモンドの犬」、ジギー時代とはまったく違うアレンジで演奏される「円軌道の幅」、そしてラストの「ロック・ロールの自殺者」といった曲からはソリッドなギリギリ感が伝わってきて、ある種の「凄み」を感じる。そうした緊張感が放つ危ういカッコよさが聴きどころで、巷間「残念な作品」という評価も少なくないようだが、私は名作ライヴ盤だと思う。

DAVID LIVE
【CD1】
 01.1984
 02.Rebel Rebel
 03.Moonage Daydream
 04.Sweet Thing / Candidate / Sweet Thing (Reprise)
 05.Changes
 06.Suffragette City
 07.Aladdin Sane
 08.All the Young Dudes
 09.Cracked Actor
 10.Rock 'n' Roll with Me
 11.Watch That Man
【CD2】
 01.Knock on Wood
 02.Here Today, Gone Tomorrow
 03.Space Oddity
 04.Diamond Dogs
 05.Panic in Detroit
 06.Big Brother
  I. Big Brother
  II. Chant of the Ever-Circling Skeletal Family
 07.Time
 08.The Width of a Circle
 09.The Jean Genie
 10. Rock 'n' Roll Suicide

Space Oddity



【2ndレグ~クラックド・アクター】
 7月20日のニューヨーク公演を最後に一旦ツアーを中断したボウイは、8月11日からフィラデルフィアのシグマ・スタジオで『ヤング・アメリカンズ』のレコーディングにはいっている。シグマ・サウンドのエネルギーを吸収したのか、9月に入って間もなくツアーを再開させたが、再開の地はロサンゼルス、それも9月2日~8日という同一会場での一週間連続公演である。彼の復調ぶりがうかがえるというものだ。2ndレグからはギターにカルロス・アロマーが加わり、またルーサー・ヴァンドロスをはじめとするバック・ヴォーカル隊も7名となって2倍以上の大部隊となった。さらにリズム隊はドラムにグレッグ・エリコ(元スライ&ザ・ファミリー・ストーン)、ベースにダグ・ローチ(当時サンタナ)といったファンク系の名手が参加しており、1stレグよりもブラック・ミュージックへの接近が感じられる。
 2ndレグのライヴはロサンゼルスの中日である9月5日のステージが、『クラックド・アクター』というタイトルでオフィシャル・リリースされている。この日の公演は1990年に『Strange Fascination』というタイトルのブートレッグがリリースされ、多くのコピー盤が作られた超のつく有名音源である。レコーディング中だった『ヤング・アメリカンズ』セッションからは「イッツ・ゴナ・ビー・ミー」(1991年リリースのRYCO盤『ヤング・アメリカンズ』にボーナス・トラックとして収録された)と「ジョン、アイム・オンリー・ダンシング(アゲイン)」の2曲しか演奏されていないが、「アラジン・セイン」にドリフターズの「オン・ブロードウェイ」を組み込み(ジョージ・ベンソンのカヴァーが大ヒットする1978年よりも早い!)、また「ノック・オン・ウッド」に新曲「イッツ・ゴナ・ビー・ミー」をつなげるなどブラック・ミュージックへの傾倒が随所に感じられる。特に「ダイヤモンドの犬」を『デヴィッド・ライヴ』収録版と比べると、ボウイのヴォーカルの復調ぶりと新たに加わったファンキーなピアノが印象的で、1stレグと2ndレグとの違いを象徴しているようだ。セットリストから「円軌道の幅」を外したのも、わかるような気がする。

CRACKED ACTOR
【CD1】
 01. Introduction
 02. 1984
 03. Rebel Rebel
 04. Moonage Daydream
 05. Sweet Thing/Candidate/Sweet Thing
 06. Changes
 07. Suffragette City
 08. Aladdin Sane
 09. All The Young Dudes
 10. Cracked Actor
 11. Rock 'n' Roll With Me
【CD 2】
 01. Knock On Wood
 02. It’s Gonna Be Me
 03. Space Oddity
 04. Diamond Dogs
 05. Big Brother
 06. Time
 07. The Jean Genie
 08. Rock 'n' Roll Suicide
 09. John, I’m Only Dancing (Again)

Cracked Actor


【3rdレグ~I'm Only Dancing】
 続いて10月~12までの3rdレグは「The Soul Tour」「Philly Dogs Tour」とも呼ばれている通り、ブラック・ミュージック色が全開となっている(ドラマーが以後ボウイを支えるデニス・ディヴィスとなった)。2020年のレコードストアデイにリリースされた『I'm Only Dancing』は10月20日(デトロイト)・11月30日(ナッシュヴィル)を収録しており、ボウイの声は相変わらず荒れているものの、厚いバック・コーラスとも相まって『デヴィッド・ライヴ』よりも余裕が感じられる。セットリストも大きく変わり、『ヤング・アメリカンズ』からの曲が演奏されているが、コーラス隊とデヴィッド・サンボーンのサックスを従えた「ヤング・アメリカンズ」→「恋のささやき」→「イッツ・ゴナ・ビー・ミー」→「幸運の神」のソウル4連発から「サフラジェット・シティ」への流れはエグい。出来れば「ヤング・アメリカンズ」をCD2の一曲目にして、この5曲は通しで聞きたかった。ナッシュヴィルの音源として収録されているメドレー「Foot Stompin' / I Wish I Could Shimmy Like My Sister Kate / Foot Stompin'」の「Foot Stompin'」におけるギター・リフが、ツアー終了後にニューヨーク(エレクトリック・レディ・スタジオ)でジョン・レノンとともにレコーディングされる「フェイム」へと発展していく。「Footstompin / Wish I Could Shimmy Like My Sister Kate」メドレーは『Rarest One Bowie』にもThe Dick Cavett Showの音源が収録されていたが、こちらの方がドライヴ感・音質ともに上である。

Can You Hear Me



Footstompin' (Live Dick Cavett Show 1974)



I'm Only Dancing
CD1
 01. Introduction - Memory Of A Free Festival
 02. Rebel Rebel
 03. John, I'm Only Dancing (Again)
 04. Sorrow
 05. Changes
 06. 1984
 07. Moonage Daydream
 08. Rock 'N' Roll With Me
 09. Love Me Do / The Jean Genie
 10. Young Americans
CD2
 01. Can You Hear Me
 02. It's Gonna Be Me
 03. Somebody Up There Likes Me
 04. Suffragette City
 05. Rock 'N' Roll Suicide
 06. Panic In Detroit
 07. Knock On Wood
 08. Foot Stompin' / I Wish I Could Shimmy Like My Sister Kate / Foot Stompin'
 09. Diamond Dogs / It's Only Rock 'N' Roll (But I Like It) / Diamond Dogs



Rarest One Bowie

Rarest One Bowie

  • アーティスト: David Bowie
  • 出版社/メーカー: Trident
  • 発売日: 1995/05/18
  • メディア: CD



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Isolar II Tour の音源(その3:映像) [デヴィッド・ボウイ]

 Isolar II Tour のステージ映像としては、4月10日のダラス、5月22日のウィーン、5月27日のマルセイユ、6月30日&7月1日のアールズ・コートといったところをYoutubeで見ることができる。

1978年4月10日 ダラス



1978年5月22日 ウィーン



1978年5月27日 マルセイユ



1978年6月30日 ロンドン(アールズ・コート)


しかし決定版映像はツアー千秋楽の12月12日の東京公演だろう。この映像はNHKのテレビ番組「ヤング・ミュージック・ショー」のために収録されたもので、場所が前日までの武道館ではなく渋谷のNHKホール(「紅白歌合戦」の会場)である。そのためスタッフが撮影慣れしておりカメラワークが的確で、さらにハコのサイズ(キャパは武道館の1/3)・音楽イベント仕様(NHK交響楽団の本拠地)といった条件のせいか、音も近く聞こえる。



 カルロス・アロマーのタクトがリードする重厚かつ荘厳な「ワルシャワ」でコンサートは幕を開ける。最初に少し笑みをうかべて会釈するボウイがカッコいい。縦横無尽にギターを弾きまくるエイドリアン・ブリューの奇才ぶりと、大きな役割を果たしているサイモン・ハウスのエレクトリック・ヴァオリンが目を引くが、中でも「ステイション・トゥ・ステイション」オープニングでのロジャー・パウエルとエイドリアン・ブリューの絡みは圧巻である。曲によっては照明のせいでステージが暗く、バックメンバーにカメラが当たっても姿が見えないことがあるが、『ステージ』のジャケット写真と同じライトが背景で点滅しているので、曲によっては意図的にステージの照明を暗くしていたのだろう。ドラマーのデヴィス・ディヴィスが映画『猿の惑星』のザイアス博士っぽい被り物をつけて演奏しているのが面白い。テレビ放送時につけられた「"ヒーローズ"」の訳詞は、歌とあってない部分も多く、個人的には邪魔である。音源だけを収録したCDの方が音が良いが(FM音源?)、撮影に慣れたスタッフが手掛けたこともあり、音が少々悪くても映像アリのほうがはるかに楽しめる。

 雑誌『レコード・コレクターズ』の増刊号『デヴィッド・ボウイ・アンソロジー』では大鷹俊一さんが「日本公演ではドラムスがチェスター・トンプスンだったから、もっとオイシかった」(30㌻)、保科好宏さんが「この年の暮れ、ドラマーのみチェスター・トンプソンに替わって2度目の来日公演を行った」(103㌻)と述べているが(いずれもライヴ盤『ステージ』の項)、NHK放送版を見る限り最終日のドラムはデヴィス・デイヴィスである。チェスター・トンプソンが叩いたのは、いつのステージだったのだろう。

 日本公演以外では、ヨーロッパ・ツアー中の5月にドイツのブレーメンで収録されたスタジオ・ライヴが面白い。口パクではなく実際に演奏している点でも貴重だが、なによりメロディ度外視のノイジーなギターを弾きまくるエイドリアン・ブリューのエキセントリックなプレイが見ものだ。しかもそれを楽しそうにプレイしており、誰も止められず手が付けられない感じである。






 オススメのアイテムは、NHKとブレーメンに加えてダラスの映像も収録した『1978 LIVE TOKYO-DALLAS-BREMEN』(SOUND & VISION ARCHIVE COLLECTION )。CDのみ、DVDのみもあるが、CD2枚+DVD1枚の3枚組仕様もあり(CDとDVDは同内容だが、CDの方が音が良い)。

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【CD 1】TOKYO
 01. WARSZAWA
 02. "HEROES"
 03. FAME
 04. BEAUTY AND THE BEAST
 05. FIVE YEARS
 06. SOUL LOVE
 07. STAR
 08. HANG ON TO YOURSELF
 09. ZIGGY STARDUST
 10. SUFFRAGETTE CITY
 11. STATION TO STATION
 12. TVC15
 13. JAPANESE TV INTERVIEW

【CD 2】DALLAS(1-6)&BREMEN(7-14)
 01. WHAT IN THE WORLD
 02. BLACKOUT
 03. SENSE OF DOUBT
 04. THE SPEED OF LIFE
 05. HANG ON TO YOURSELF
 06. ZIGGY STARDUST
 07. SENSE OF DOUBT
 08. BEAUTY AND THE BEAST
 09. "HEROES"
 10. STAY
 11. THE JEAN GENIE
 12. TVC15
 13. ALABAMA SONG (MOON OF ALABAMA)
 14. REBEL REBEL





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The Isolar Ⅱ Tour の音源(その2:マイク・ミラード音源) [デヴィッド・ボウイ]

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L.A. FORUM 1978: MIKE MILLARD 1ST GEN (Wardour-389)

 Disc 1
  01. Warszawa
  02. "Heroes"
  03. What In The World
  04. Be My Wife
  05. The Jean Genie
  06. Blackout 
  07. Sense Of Doubt
  08. Speed Of Life
  09. Breaking Glass
  10. Beauty And The Beast
  11. Fame

 Disc 2
  01. Band Introductions / Five Years
  02. Soul Love
  03. Star
  04. Hang On To Yourself
  05. Ziggy Stardust
  06. Suffragette City
  07. Rock ’n’ Roll Suicide
  08. Art Decade
  09. Station To Station
  10. Stay
  11. TVC15
  12. Rebel Rebel

 78年3月末にスタートしたThe Isolar II Tourの最初期、4月4日のフォーラムのステージを捉えた音源。マイク・ミラードによる録音とされている。同じく北米レグ中盤~後半の模様を納めたオフィシャルの『ステージ』とほぼ同じ曲構成だが、『ステージ』では「アートの時代」と「ステイション・トゥ・ステイション」の間に収録されていたクルト・ヴァイルの「アラバマ・ソング」は収録されておらず(実際演奏されていない)、代わりに「ロックン・ロールの自殺者」が演奏されている。好調なスタートを切った北米レグ初期の模様がよくわかる。オーディエンスの反応が素晴らしくよいためか、長めのイントロがカッコいいアンコール「美しき反抗」では♪“You’ve got your mother in a whirl”の 「mother」を「guitar」に替えて歌い始める。
 
オーディエンスならではの臨場感あふれる優良音源であるが、『ステージ』『ウェルカム・トゥ・ザ・ブラックアウト』といったオフィシャル盤がある現在ではマニア向けの域を出ない。『FORUM STAGE 1978』というタイトルでMoonchild Recordsからリリースされているので、興味がある方はそちらをどうぞ。

メーカーインフォ
https://www.giginjapan.com/david-bowie-la-forum-78-mike-millard-1st-gen-bonus/


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