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1975年5月25日  アールズ・コート最終日 ツェッペリン最強伝説 [レッド・ツェッペリン]

 1975年5月25日のアールズ・コート千秋楽は、ツェッペリンのライヴ・アクトの中でも出色のステージだと思う。大規模な北米ツアーを成功裏に終わらせた後の本国への凱旋公演であることに加え、最終日のためその後のステージを気にせず全力での演奏ができたこともあっただろう。音と同時に映像を見ていると、彼らの「うれしさ」みたいな雰囲気が感じられる。

 3月まで行われていた北米ツアーとの大きな違いはアコースティック・セットが組み込まれていることだが、そのこともあって北米ツアーでの暴れっぷりに比べると、王者の風格を感じさせるステージだ。北米ツアーでは「ノー・クォーター」の次は「トランプルド・アンダーフット」であることがほとんどだったが、アールズ・コートでは(北米ツアーではセット・リストになかった)「タンジェリン」であり、ジョンジーのキーボードが幻想的な「ノー・クォーター」からエレクトリック・ヴァージョンの「タンジェリン」と、ロバートが歌い上げる2曲が連続する様は実に端正で、品格を感じさせる(「タンジェリン」終盤の欠落が実に残念!)。アンコールには他の日に演奏されなかった「ハートブレイカー」と「コミュニケイション・ブレイクダウン」まで演奏されており、聞き所満載のステージだ。が、やはり映像のほうがずっと楽しめる。ロバートが髪を手でかき上げたり顔にかかる髪を振る仕草や、左手でマイクを持ちつつ右手は指を立てたりと細かい動きをする様、ジミーの意外にクールな様子もカッコいいが、ジョンジーの華麗なキーボードさばきに心ひかれる。「ノー・クォーター」はもちろん、「トランプルド・アンダーフット」「カシミール」でのジョンジーを見ていると、後期ZEPの屋台骨を支えていたのはジョンジーであったことを実感する。その他、ジミーがヴォーカルに参加するシーンも神。全員が参加する「タンジェリン」もいいが、「胸一杯の愛を」でロバートとジミーがマイクを分け合う姿は、クイーンなど後続のバンドへと受け継がれる英国的な華麗さを感じる

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 アールズ・コート最終日のコレクターズCDで最も早くリリースされたのは、1993年頃の『Earl's Court 1975』(MUD DOGS-024/025/026)であったがこのアイテムはオーディエンスソースである。当時の『GOLD WAX』誌には「あまり良くないオーディエンス録音」と紹介されており、ファー・イースト・レコードの広告には1万1800円という値段が掲載されていたため、購入はしおなかった。私が最初に聴いたこの日の音源は、『Shake For Me, Baby』(MISSING LINK ML-017)というタイトルで、「カシミール」「ノー・クォーター」「タンジェリン」の3曲が収録されていた(全6曲の収録で、残り3曲は77年のシアトル)。これも1990年代前半のリリースであり、当時から「タンジェリン」の終盤はフェードアウトだった。次いで『EARL'S COURT '75 FINAL COURT』(CDM016)は『Shake For Me, Baby』の3曲に加えて「永遠の詩」と「レイン・ソング」が収録されており、「もしかすると25日も24日同様の音源が残っているのではないか?」と期待が高まったものである。そしてついに2000年代にはプロショットの映像も見ることが可能となり、それをソースにしたCDの音質も90年代とは比べものにならないほど向上した。

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 現行のCDはいずれも映像のSB音源をソースとして「タンジェリン」の欠落部分を補填したものであり、とても音が良く安心して聴くことができる。私が持っているのは以下の3セットだが、どれも良い。

・『A Young Person's Guide To Led Zeppelin 』(Empress Valley EVSD 256~9)
 かつてEmpress Valleyからリリースされていた『WHEN WE WERE KINGS』のリイシューであり、ディスクには旧タイトルである「WHEN WE WERE KINGS」と印字されている。

・『Bataille De Trafalgar 』(Wendy)
 4CD+2DVDの6枚組ボックス。DVDは3種類の音源(「SB」「オーディエンス」「SB+オーディエンス」)を切り替えることが可能。欠落部分の映像はなし(音声のみ)。
  メーカーインフォ https://www.giginjapan.com/led-zeppelin-bataille-de-trafalgar/

・『EARL'S COURT 1975 FINAL NIGHT』(LIGHTHOUSE)
個人的には、イコライジング的に私の好み。
  メーカーインフォ  https://www.giginjapan.com/led-zeppelin-earls-court-75-final-night/

・映像
 元ソースの映像も「タンジェリン」終盤が欠落している。WendyのDVDでは欠落部分はブラックアウトで、Empress Valley盤(『レッド・ツェッペリンの歴史』収録盤)は、スローモーション映像になっている。



Led Zeppelin - Live at Earls Court (May 25th, 1975) - Video (Official Songs Removed)



Led Zeppelin - Rock And Roll (4K AI Upscaled) - May 25, 1975




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伝説 / ヘンリー・カウ  反体制と反商業主義 [カンタベリー系]

 「カンタベリー系」にはソフト・マシーンとキャラヴァンの二大バンドをはじめ、ゴングやハットフィールド&ザ・ノースといった個性的なバンドが多い中、ひときわ異彩を放つのがヘンリー・カウ。メロディアスで美しいフレーズやフリー・ジャズ風の演奏、さらにはハイテクニックなギターソロも現れる変幻自在なサウンドは、一聴成り行き任せのような印象も受けるが、おそらくかなり緻密な計算のもとに曲構成が考えられていると思われる。混沌と秩序、緻密さとラフさが同居したまさにフリーキー(風変わり)なサウンドであり、しかもメンバー全員が凄腕という「通好み」なバンドである。そのせいか、「カンタベリー系」以外にも「エクスペリメンタル・ロック」、「チェンバー・ロック」「アヴァン・ロック(からのアヴァン・プログ(レ))」などのカテゴリーでも語られる。反体制運動RIO(Rock in Opposition)からのレコメンデッド・レコード設立により「レコメン系」とも呼ばれるが、その思想的・政治的な部分から伝説のトラッド・シンガーであるフランキー・アームストロングとも結びつく(The Orckestra)など、音の間口は広い。とかく前衛的な部分が目立ってしまうのでプログレ界隈では敬遠する人も多いようだが、最初「なんだこりゃ」と思っても何度も聴いているうちにその魅力に引き込まれるバンドである。

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 ヘンリー・カウのデビュー・アルバム『LEGEND』は、1973年にヴァージン・レコードからリリースされた(レコーディングもマナー・スタジオで、エンジニアはトム・ニューマンというヴァージン系の人たち)。後にオリジナルのタイトルが『Leg End』という表記に変更になったものの、邦題は74年の日本コロムビア盤から2015年のベル・アンティーク盤まで一貫して『伝説』という邦題が使用されてきた。

 彼らの魅力を伝える代表曲とも言える1曲目の「Nirvana For Mice」には、 First Bit Of 'Nirvana For Mice'のエンジニアとしてマイク・オールドフィールドがクレジットされている。「First Bit」とは、冒頭のドラムの一音から2つのホーンによるアンサンブルの部分(約1分間)だと思われるが、立体感のあるピアノが隠し味。このわずかな部分だけにマイク・オールドフィールドが手を加えたという事実からも、ヘンリー・カウの曲が緻密な計算のもとに制作されたことがうかがえる(91年にEast Side DigitalからリリースされたCD(ESD 80482)はメンバーであるティム・ホジキンソンとフレッド・フリスによってリミックスされ、全体的に強いリバーブ処理が加えられているが、この最初の部分だけで違いがハッキリとわかる)。最初はメロディアスだったな曲がサックスのリードでどんどん混沌に向かっていく様は、聴いてる自分が吸い込まれていくような気分になるが、一方でバックの冷静なベースラインと手数は多いがブレないドラムがなんともクール。唐突に終わる1曲目から、一転してフルートが美しい次の「Amygdala」への流れもよい。「Amygdala」は牧歌的でユーモラスな部分も含めてハットフィールド&ザ・ノース的な部分も感じられ、ヘンリー・カウがカンタベリー系であることを改めて感じる曲。「Nine Funerals Of The Citizen King」のロバート・ワイアット的なヴォーカルとクラシカルな演奏は、まさに「チェンバー・ロック」。なお91年EDS盤のクレジットによれば、この曲には次作からメンバーとなったリンゼイ(リンジー)・クーパー(フランキー・アームストロングとともにFeminist Improvising Groupを結成する)によるバスーンが新たにオーバーダビングされている。

Nirvana for Mice


 オリジナルは9曲で、リミックスされた91年のESD盤には「Bellycan」というボーナス・トラックが収録されて10曲入りになっていた。2015年にベル・アンティークからリリースされたSHM-CD盤(ミックスはオリジナル仕様)には4曲のボーナス・トラックが収録されているが、いずれも40周年ボックスに収録されていたテイクであり、初出の発掘音源ではない。このうち「Teenbeat」の別ヴァージョンは10分を越える大作で、(もちろん元ハットフィールド&ザ・ノースの方の)デイヴ・スチュワートが参加している。




伝説(LegEnd)

伝説(LegEnd)

  • アーティスト: ヘンリー・カウ
  • 出版社/メーカー: ベル・アンティーク
  • 発売日: 2015/06/25
  • メディア: CD



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