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Pillows&Prayers  ピローズ&プレイヤーズ [チェリー・レッド・レコード]

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 ネオアコからエレポップまで、多彩なアーティストを擁したチェリー・レッドのコンピレーション。中にはただ大声で喋ってるだけ(Attila the Stockbroker:パンク詩人)とか俳優による朗読(Quentin Crisp)といったトラックまであり、レーベルの創設者であるイアン・マクナイの趣味が色濃く反映されている。オリジナルは1982年にリリースされ、84年には 新星堂との共同企画で『Pillows & Prayers 2』がリリースされた。さらに2003年にはCD2枚にDVDを加えた『Pillows & Prayers '03 25th Anniversary Deluxe Edition (1981 - 1984)』、2007にはレア・テイクを集めたCDを加えたCD3枚プラスDVDというボックスがリリースされた。この4枚組ボックスは2008年のMOJOアワードで 最も優れた再発に贈られるCatalogue Release of the Year を受賞し、授賞式にはイアン・マクナイと、フェルトのローレンス、モノクローム・セットのビド、そしてアイレス・イン・ガザのマーティン・ベイツが登壇したが、イアン・マクナイ以外の3人のイヤそうなスピーチが面白い。

Cherry Red Acceptance Speech - MOJO Honours List 2008


 いかにもインディーといったチープな演奏をバックにした曲が多い中、ベン・ワットにトレイシー・ソーン、そして2人によるユニットEBTGによる曲群のクオリティは他を圧倒しているが、それ以外だと1枚目で注目なのはJOE CROW の「COMPULSION」という曲。リズム・マシーンによるチープなリズムに暗めのヴォーカルが乗ったこの曲は、デペッシュ・モードのマーティン・ゴアがソロでカヴァーした。このJOE CROW、同じく1枚目に収録されているThe Nightingales のメンバーだったとのこと。

Joe Crow - Compulsion Martin L. Gore -- Compulsion


 2枚目は日本編集ということもあり、日本人好みの曲が並んでいるが、ファンタスティック・サムシングとジェーンの2組は特に人気があった。ファンタスティック・サムシングは双子の男性デュオで、当時の日本盤ライナーによると生まれはアメリカのボストンで、イギリス留学中に音楽活動をスタート。アルバムのミックスは、サイモン&ガーファンクルの『明日にかける橋』でエンジニアリングを担当したロイ・ハリーがミックスを担当ということで、「爽やかなS&G」という感じである。ジェーンはジェーン・ランカスターとエドワード・バートンの2人によるユニットで、「イッツ・ア・ファイン・デイ」は日本でティッシュペーパーのCM曲として使用された。このCM、「呪われたCM」という都市伝説が当時あったが、隷書体で印刷された日本盤ライナーには、別の曲(「なんなんなあに?」)の歌詞に「頭に槍の刺さった赤ん坊」だの「塩袋に入った皮を剥がれた赤ん坊」だのといった文言が出てくるなど、何か狙っていた印象を受ける。この都市伝説については、日本語版ウィキペディア「イッツ・ア・ファイン・デイ」の項目でも触れられている。女性ヴォーカリストのジェーンは、チャイナ・クライシスのアルバム『ワーキング・ウィズ・ファイア・アンド・スティール』に参加しているとのこと。

Fantastic Something - If She Doesn't Smile - (Official Video, 1983) Jane - It's A Fine Day - (Official Video, 1983) 1985 クリネックス ティシュー


「Its A Fine Day」のまとめサイト
http://homepages.force9.net/king1/Barton/Discogs/Barton/Jane-ItsAFineDay.htm

 チェリー・レッドのコンピレーションとしては、1986年に日英共同企画としてリリースされた『アンソロジィ』(And Suddenly It's Evening)も、なかなかよい。

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Pillows & Prayers

Pillows & Prayers

  • アーティスト: Various Artists
  • 出版社/メーカー: Cherry Red
  • 発売日: 2008/01/08
  • メディア: CD



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Ignite The Seven Cannons カスピの詩人 / Felt [チェリー・レッド・レコード]

 エヴリシング・バット・ザ・ガールとならびチェリー・レッド・レコードのレーベル・カラーのイメージを担っていたのがフェルト。1989年に解散するまで、チェリー・レッド→クリエイション→エルとそれぞれのレーベルが最も輝いていた時期に所属しており、80年代のUKインディー・シーンを象徴するようなバンドである。彼らは10枚のアルバムを残しているが、そのうち初期の4枚がチェリー・レッドからのリリース。中でもジョン・レッキーがプロデュースしたネオアコ色の強い3rdアルバム『The Strange Idols Pattern And Other Short Stories』(『彩霞(さいか)』)と、4枚目の『Ignite The Seven Cannons』(『カスピの詩人』)の2枚はチェリー・レッド時代のみならず、キャリア全体を通じての代表作である。

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 チェリー・レッド期のフェルトはリーダーのローレンス(ヴォーカル&ギター)とモーリス・ディーバンク(ギター)の双頭バンドで、ローレンスのスポークン・サングとモーリスの流麗なギターが売りのバンドだった。バンド名はテレヴィジョンの曲「ヴィーナス」からとられたそうだが[https://pitchfork.com/reviews/albums/felt-forever-breathes-the-lonely-word/]、だとすれば毛氈ではなくfeelの過去形ということになる。4枚目の『カスピの詩人』(1985年)からはキーボードのマーティン・ダフィ(後にプライマル・スクリームに加入)が加わり、音の厚みが2ランクアップ。さらにプロデュースが当時コクトー・トゥインズのロビン・ガスリーだったので、幽玄さも2ランクアップ。ポスト・パンクの名盤の誉れ高い1枚である。このアルバムを最後にオリジナル・メンバーのモーリスが脱退したため、ローレンス+モーリス+マーティン・ダフィという黄金メンバーによる唯一の作品となってしまった。

 現行盤は大幅なリミックスが施され曲数も違っているため、アマゾンでは批判的なレビューも見られる。一方で外国からのレビューの中には「ローレンスは、自分のベストソングがロビン・ガスリーによって台無しにされたと言っていたが、これはまったくその通りで、ガスリーはこの作品をコクトー・トゥインズの作品のように仕上げてしまった。」と書いてあるものがあった。ソースを探してみたところ、なるほど、ローレンスは確かにそのように語っている(He kind of ruined some of my best songs, which I’m sure he’d agree with now he’s a lot more experienced!)。こうした結果になってしまったのはロビン・ガスリーがプロデュース契約の際に「ローレンスはミックスに参加しないこと」という項目を入れていたためで、それをローレンスが自嘲気味に「正しかった」と言っているのは面白い。確かに今聴いてみるとコクトー・トゥインズのカラーが強すぎる気がする。
https://clashmusic.com/features/strong-melodies-for-humdrum-lives-the-singular-vision-of-lawrence

Felt - Primitive Painters


 リマスター/リミックス盤ではギターとヴォーカルがクリアーになり、キラキラしたリリカルな響きがが心地よい仕上がりとなっている。ただし、ピアノとギターが印象的な美しいインスト曲「Serpent Shade」がオミットされたのはいただけない。またオリジナルでは5分を超える(彼らにしては)長い「Elegance (of an Only Dream)」は編集されて1分以上短くなり、タイトルも「Elegance in D」と変更された。

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 オリジナルのタイトルは『Ignite the Seven Cannons』だが、アナログ盤のB面のレーベルには、「Ignite the Seven Cannons and Set Sail for the Sun」と印刷されているため、こちらをタイトルにする場合もある。Discogsでは ”and Set Sail for the Sun”アリ盤とナシ盤があるので、リリース年・国によって違うのだろう。
https://www.discogs.com/ja/master/4464-Felt-Ignite-The-Seven-Cannons-And-Set-Sail-For-The-Sun



Ignite the Seven Cannons

Ignite the Seven Cannons

  • アーティスト: Felt
  • 出版社/メーカー: Imports
  • 発売日: 2018/03/02
  • メディア: CD



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