Counterfeit e.p. / Martin L. Gore マーティン・ゴア [デペッシュ・モード]
デペッッシュ・モードの6枚目のアルバム『ミュージック・フォー・ザ・ザ・マスィズ』(87年)と7枚目の『ヴァイオレーター』(90年)の間には3年間のブランクがあるが、このインターバルにはメンバーのソロ活動も行われた。このうちマーティン・ゴアが89年にリリースした6曲入りのミニ・アルバム『カウンターフィットe.p.』はカヴァー集であり、DMのルーツを考える上でも大変興味深い。なおカウンターフィットとは、ブートレッグのうちライヴを隠し録りしたコレクターズ盤ではなく、オフィシャル盤を完コピした偽造盤を一般的には指す。
収録曲は、
01. Compulsion (ジョー・クロウ)
02. In A Manner Of Speaking(タキシードムーン)
03. Smile In The Crowd(ドゥルッティ・コラム)
04. Gone(コムサット・エンジェルズ)
05. Never Turn Your Back On Mother Earth(スパークス)
06. Motherless Child(プリンスも取り上げた黒人霊歌のスタンダード・ナンバー)
曲のチョイスはとんでもなくヴァラエティに富んでおり、にもかかわらず全体的には統一感があるというマーティン節にあふれたカヴァー集。01はチェリー・レッドのコンピ『ピローズ&プレイヤーズ』に収録されていた曲で、よくもまぁこんなマイナーな曲を選んだモノだと感心する。オリジナルのチープさを損なわない程度に音を重ねている点がグッド。ドウルッティ・コラム(2枚目『アナザー・セッティング』に収録)とコムサット・エンジェルズ(2枚目『Sleep No More』に収録)という選曲もツボだが、なんと言ってもタキシードムーンの「In A Manner Of Speaking」のカヴァーが素晴らしく良い。
タキシードムーンは70年代にサンフランシスコで結成されたバンドだが、80年代にはいると活動拠点をベルギーに移し、ベルギーのクレプスキュールやクラムド・ディスクと言ったレーベルからヨーロッパ的耽美感に満ちた作品をリリースしていた。ここでカヴァーされている「In A Manner Of Speaking」(当時の邦題は「言うなれば」)は彼らの4枚目のアルバム『ホリー・ウォーズ』(当時の邦題は『聖戦』)のA面ラストを飾る曲で、ペシミスティックでメランコリック、まさにヨーロッパの黄昏といった趣の曲である。ヴォーカルをとっているウィンストン・トンはアジア系というのも当時は面白く感じたものだ。『聖戦』は日本盤が初めて紹介されたタキシードムーンの作品で、当時のSMSレコードが立ち上げた、WAVE(最近復活したレコードショップ)レーベルからアインシュトゥルツェンデ・ノイバウテンらとともにリリースされた。雑誌『フールズ・メイト』の表紙裏などにはWAVEレーベルの大きな広告が掲載されていたが、当時のSMSはコクトー・トゥインズやトーンズ・オン・テイルなど、英国ニューウェーヴ系のマニアックなアーティストをリリースしていたのでなかなか重宝したものである。
SMSレコードについて(ニッポン放送 MUSIC ONLINE)
https://news.1242.com/article/165896
「In A Manner Of Speaking」は、ヌーヴェル・ヴァーグ(Nouvelle Vague)もカヴァーしているが、こちらもよい。
Violator / Depeche Mode [デペッシュ・モード]
ザ・キュアーと並んで「この1枚」を選ぶのが難しいバンドが、デペッシュ・モード。1980年にデビューしてから40年以上、この間14枚のアルバムを発表しているが、一般的には彼らが自分たちのスタイルを確立した3枚目『コンストラクション・タイム・アゲイン』(1983) が代表作として取り上げられることが多いようだ。他にも「ピープル・アー・ピープル」「マスター・アンド・サーヴァント」という2大名曲を含む『サム・グレート・リウォード』を推す声もあるが、7枚目の『ヴァイオレーター』(1990年)を代表作としたい。商業的にも成功したこの『ヴァイオレーター』を最高傑作とする意見も結構多いようだが、デペッシュ・モードというと「80年代のバンド」というイメージが強いせいか、雑誌などではあまり取り上げられないのが残念。
このアルバムを聴くと、「硬質」「ダーク」「ストイック」「端正」といった言葉が思い浮かぶ。アイドル感が強いバンドが多いエレポップ勢の中で、スタイリッシュでクールながらも力強い彼らの魅力が最もよく表れている作品だと思う。エンジニア出身のフラッド(マーク・エリス)をプロデューサーに迎えたことも、アントン・コービン(「エンジョイ・ザ・サイレンス」のPVも監督)による秀逸なジャケット・デザインとも相まって、クールで骨太なイメージづくりに成功している。
このアルバムからは「Personal Jesus」、「Enjoy The Silence」、「Policy Of Truth」、「World In My Eyes」の4枚のシングルがカットされ、ファースト・シングル「Personal Jesus」は、マリリン・マンソンやロック界のレジェンドであるジョニー・キャッシュにカヴァーされた。ジョニー・キャッシュ版が収録されているアルバムは、彼の死の前年(2002年)にリリースされた『American IV: The Man Comes Around』。リック・ルービンがプロデュースしたこのアルバムにはドン・ヘンリーやニック・ケイヴなどが参加しているが、「Personal Jesus」でピアノを弾いているのは伝説のピアニスト、故ビリー・プレストンである。「枯淡の味わい」とは、こういう感じか。
Depeche Mode - Personal Jesus (Official Video)
Johnny Cash - Personal Jesus
Marilyn Manson - Personal Jesus (Official Music Video)
Depeche Mode - Personal Jesus [The Stargate Mix] (Official Video)
directed by Patrick Daughters
Depeche Mode - Personal Jesus (ZDF HD 1989)
Depeche Mode - Enjoy The Silence (Official Video)directed by Anton Corbijn
【Enjoy The Silence】 Y12-3
01. Enjoy The Silence (7" Version)Remix – Daniel Miller
02. Enjoy The Silence (Ecstatic Dub)Remix – François Kevorkian
03. Enjoy The Silence (Ecstatic Dub - Edit)Remix – François Kevorkian
04. Sibeling
05. Enjoy The Silence (Bass Line)Remix – François Kevorkian
06. Enjoy The Silence (Harmonium)
07. Enjoy The Silence (Ricki Tik Tik Mix)Remix – Daniel Miller
08. Memphisto
Violator Remixes 2010 [CD] (20周年記念版)(ボーナストラック)(完全生産限定盤)
- 出版社/メーカー: デペッシュ・モード
- 発売日: 2021/08/12
- メディア: CD
Violator Remixes 2000 [CD] (10周年記念版)(ボーナストラック)(完全生産限定盤)
- 出版社/メーカー: デペッシュ・モード
- 発売日: 2021/08/12
- メディア: CD