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Fine Young Cannibals ファイン・ヤング・カニバルズ [ザ・ビート(イングリッシュ・ビート)]

 ザ・ビートは1983年に解散し、ジェネラル・パブリックとファイン・ヤング・カニバルズの2つのバンドに分裂する。ザ・ビートのフロント・マンだった2人、ヴォーカルのデイヴ・ウェイクリングとトースターのランキング・ロジャーはジェネラル・パブリックだったので、一方のアンディ・コックス(ギター)とデイヴィッド・スティール(ベース)が結成したファイン・ヤング・カニバルズは相対的に地味な印象を受けた。しかし、FYCが迎えた新しいヴォーカリスト、ローランド・ギフトのインパクトは強烈で、セカンド・アルバムから2曲を全米No.1に送り込み、大成功を収めることになる。

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 FYCが1985年にリリースした1stアルバム『ファイン・ヤング・カニバルズ』は、伝統的なR&Bを現代的に解釈したような作品で、とりわけ独特なヴォーカルが印象的な作品だ。ローランドのヴォーカルは単にソウルフルというだけではなく、ガムを噛みながら歌っているような不思議な感じで、さらにはV字型に大きく切り込んだヘアスタイルの容姿もインパクトが強かった。彼はもともとサックス奏者だったそうで、ブラスの使い方もいい。特にオープニング・ナンバー「ジョニー・カム・ホーム」のイントロにおけるもの悲しいトランペットは、雰囲気抜群。

Fine Young Cannibals - Johnny Come Home


 2枚目のシングル、「サスピシャス・マインド」(プレスリーのカヴァー)では、当時人気だったジミー・ソマーヴィルがファルセットでバック・ヴォーカルに参加。モノクロのPVもカッコいいが、アントン・コービンによるダークなソフト・フォーカスのジャケットとも相まって、ノスタルジックなイメージを出すことに成功している(バンド名は、1960年の映画「All the Fine Young Cannibals~夜が泣いている」からとったという)。12インチのシングルにカップリングされた「マザーレス・チャイルド」「ウェイド・イン・ザ・ウォーター」「ラヴ・フォー・セール」といったカバーの選曲も渋い(この3曲はベスト盤『ファイネスト』の日本盤に収録され、その後再発盤『ファイン・ヤング・カニバルズ』に収録された)。全10曲のうちの6曲には、プロデューサーとしてEBTGやシャーデーを手がけたロビン・ミラーがクレジットされている点からは、洗練されたブラック・ミュージックの方向性へ向かおうとしていたことがうかがえる。



「恋とはおかしなもの」のサックスは、ザ・ビート時代にバンド仲間だったサクサ。

Fine Young Cannibals - Funny How Love Is


 2枚目はエレ・ポップ的な要素も強まるが、このファースト・アルバムは、正攻法なギター主体の音作りで、アメリカンなR&Bをベースにしつつも英国的な暗さと哀感を感じさせる点がカッコよし。2013年にエドセルから2枚組の「デラックス・エディション」で再発されたが、2020年にリリースされた「35周年記念盤」の方が収録曲も多い。

2013年版: https://www.discogs.com/ja/release/4362538-Fine-Young-Cannibals-Fine-Young-Cannibals

2020年版: https://www.discogs.com/ja/release/16541781-Fine-Young-Cannibals-Fine-Young-Cannibals
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All the Rage / General Public [ザ・ビート(イングリッシュ・ビート)]

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 ザ・ビートは1983年に解散し、ジェネラル・パブリックとファイン・ヤング・カニバルズの2つのバンドに分裂する(ジェネラル・パブリックは明るく、ファイン・ヤング・カニバルズは暗かった)。明るい方のジェネラル・パブリックは、ランキング・ロジャーとデイブ・ウェイクリングの2人の元ビート組を中心に、元デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズのドラマー&キーボード、元スペシャルズのベーシスト、そして元クラッシュのミック・ジョーンズによって結成された(ミック・ジョーンズはファ-スト・アルバムのレコーディングには参加したものの結局正式メンバーにはならず、名前だけがアルバムにクレジットされている)。当時としては「スーパーグループ」と言ってよいと思う。1987年に解散するまでに2枚のアルバムをリリースし、94年の再結成時に、さらにアルバムを1枚リリースした。2000年代には、ランキング・ロジャーの The Beat feat. Ranking Roger と、デイヴ・ウェイクリングのThe Beat Starring Dave Wakelingの2つのザ・ビートが存在したが、2019年にランキング・ロジャーが亡くなり、 The Beat feat. Ranking Roger は消滅した。


 ジェネラル・パブリックのファースト・アルバム『オール・ザ・レイジ』(84年)は、本国イギリスよりもアメリカの方でヒットした。『ビルボード』のナショナル・チャートでは26位、シングル「テンダネス」も27位とともに30位以内と、なかなかのチャート・アクションである。「テンダネス」はその後様々な映画で使われるが、確かに軽快で覚えやすいダンス・チューンだ。途中の手拍子とホーンがいいアクセントで、ピアノの音色が「明るく軽快だけど、なんだかノスタルジック」という不思議な印象の曲。



General Public - "Tenderness"



GENERAL PUBLIC -tendernass 12" remix


 アルバムがリリースされた1984年ころのイギリスというと、サッチャー政権の時代。ポール・ウェラーがカウンシル・コレクティヴで支援した炭坑ストライキが始まったのも1984年。希望のないイギリスで、音楽で若者をハッピーにしたいという彼らの真面目な気持ちが伝わってくるアルバムだ。オープニング・ナンバー「Hot You're Cool」でのクールなサックスはサクサ(Saxa)のプレイ。打ち込みも少なくないが、ブラス系の楽器を多用することで、暖かみのある雰囲気になっている。



Tenderness" - General Public on ITVs Razzmatazz
 何やらカッコいいベーシスト、元~現スペシャルズのホレス・パンターは、芸術の教師としてのキャリアを持ち、アーティストとしても高い評価を得ている。このアルバムでは「Burning Bright」でのベースも印象的。https://www.horacepanterart.com/



The English Beat - Tenderness (General Public cover) - 8/9/19

 デイブ・ウェイクリングのトレード・マークは、ブライアン・ジョーンズも使っていたVox ティアドロップ(Mark III)。年をとっても、彼の声はソウルフルだ。toasterは、Antonee First Classというシンガーが務めている。



Starvation 1985 - Pioneers, UB40, Madness, Special AKA & The Beat

ランキン・ロジャーというと、ジャケ写真にもなっている金髪と黒髪のシマシマ頭が印象深い。




choir! choir! choir! sings General Public - Tenderness

 カナダのトロントを拠点に活動するコーラス・プロジェクトChoir! Choir! Choir!(トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンとともに、デヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」を歌ったことが話題となった)による「テンダネス」。素晴らしい。


 フレッド・ペリーの公式サイトにある「サブカルチャー」のページには、ランキング・ロジャーのインタビューとプレイリストが掲載されている。
https://www.fredperry.jp/subculture/playlists/ranking-roger/
 ランキング・ロジャーの「ランキング」はニックネームで、「トップ・ランキング」の意味だという。日本語では「ランキン・ロジャー」「ランキング・ロジャー」両方の表記があるが、発音的には「ランキン」が近いと思う。彼のソロ・アルバムの日本盤は、「ランキング・ロジャー」表記になっている。toastingというプレイがあることを知ったのは、彼がきっかけだった。2019年に56歳で死去。





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I JUST CAN'T STOP IT / THE BEAT [ザ・ビート(イングリッシュ・ビート)]

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1. Mirror In The Bathroom
2. Hands Off...She's Mine
3. Two Swords
4. Twist & Crawl
5. Rough Rider
6. Click Click
7. Big Shot
8. Whine & Grine / Stand Down Margaret
9. Noise In This World
10. Can't Get Used To Losing You
11. Best Friend
12. Jackpot





先日(2017年5月3日)、サックス奏者のSaxaが亡くなったというニュースを目にした。彼の名前を初めて意識したのは、『ミュージック・マガジン』1985年11月号に掲載されているジェネラル・パブリック来日の記事の中にあった、「風変わりなサックス吹き」という見出し。当時の表記は「サクザ」となっている。ミュージック・マガジン増刊『パンク・ロック・スピリット』では、ザ・ビートのこのアルバムの項目に「ジャマイカ人のサックス奏者サクサがサウンドの要」という記述があり、あの記事のサックス奏者だなと思い出した。 http://amass.jp/88263/

 2トーン/スカ全盛期の頃はクールなスペシャルズの方が好きだったが(シマあつこさんの「8ビートギャグ」~今は亡き『音楽専科』に連載されていた~での「割れたレコードの前で笑うテリー・ホール」を思い出す!)、その後ファイン・ヤング・カニバルズとジェネラル・パブリックから遡ってザ・ビートを聴き、けっこう好きなバンドの一つとなった。ちなみにこのザ・ビート、アメリカにも同名のバンドがいたため、当時アメリカでは「The English Beat」、オーストラリアでは「The British Beat」と表記されていた。

 この1stアルバムはポップでいい曲が並んでおり、明るい感じは耳当たりもよい。「恋のスカ・ダンス」の邦題でヒットした「Hands Off...She's Mine」や、メロディアスな「Can't Get Used To Losing You」などがキラー・チューン。全編でザクサのサックスがイイ感じで流れている。この「流れてくる」という感じが実に絶妙。
 デビュー曲はスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの「涙のクラウン」で、このあたりの選曲にも割と広く受け入れられる要素が感じられる。「涙のクラウン」はオリジナル・アルバムには未収録だが、現行の2枚組デラックス・エディションには収録されている。

Hands Off... She's Mine Mirror In The Bathroom Mirror In The Bathroom (Top Of The Pops) I Cant Get Used To Losing You Tears Of A Clown

I Just Cant Stop It

I Just Cant Stop It

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Edsel Records UK
  • 発売日: 2012/07/03
  • メディア: CD



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