NURSERY CRIME / GENESIS [ジェネシス]
ジェネシス3枚目のアルバム(1971年)。前作『侵入(トレスパス)』(70)年から、アンソニー・フィリップス(ギター)とピーター・メイヒュー(ドラムス)が抜け、新たにスティーヴ・ハケット(ギター)とフィル・コリンズ(ドラム)が加入し、ピーター・ガブリエル以下、ジェネシス黄金期のメンバーがそろった。
『怪奇骨董音楽箱』
01. ザ・ミュージカル・ボックス
02. フォー・アブセント・フレンズ
03. ザ・リターン・オブ・ザ・ジャイアント・ホグウィード
04. セヴン・ストーンズ 4. セヴン・ストーンズ
05. ハロルド・ザ・バレル
06. ハーレクイン
07. ザ・ファウンテン・オブ・サルマシス
原題の『Nursery Cryme』は、 Nursery Rhymes=童謡(いわゆるマザー・グースを指すこともある)をもじったもので、綴りからは「cry=叫ぶ」、また発音からは「crime=犯罪」を連想させるタイトルだ。nurseryは本来「子供部屋」の意味なので、ジャケットの絵そのままのホラー的要素も感じられる。『怪奇骨董音楽箱』とは、なかなか言い得て妙の邦題ではなかろうか。
前2作と比べると、当然ながら演奏力は格段に向上した。オープニングの長尺「ザ・ミュージカル・ボックス」後半におけるギターとドラム、キーボードのせめぎ合いはそのことをよく示している(ドラムのピーター・メイヒューは、技術的な問題から解雇されたとのこと)。立川直樹さんは「ハケットのギター・ソロの魅力は、内向的な人間がなかば捨て鉢となったときにみせるような屈折した攻撃性」と評し、3曲目の「ザ・リターン・オブ・ザ・ジャイアント・ホグウィード」をあげているが、1曲目にもそうした雰囲気が感じられる。他のプレイヤーにひきずられて徐々にアグレッシヴになっていく感じ。「ザ・ミュージカル・ボックス」は、「ファンタジックでドラマティック」というジェネシスの持ち味が確立された曲。フルートとギターによる幻想的な前半から、徐々に狂気じみた世界に没入していくような起伏に富んだ構成。楽しそうだと思って入り込んだ場所は、実は怖かった....という感覚とでも言おうか。
ジャケットの内側には、歌詞と物語が載っている。CDになって字が小さくなり、老眼の身には拡大鏡を使わないと読めないが、不気味なジャケットは「ザ・ミュージカル・ボックス」に付随する物語を視覚化したものである。シンフォニックなまとめ方だけでなく、「ハロルド・ザ・バレル」の脚本のような歌詞に見られるシアトリカルな部分もこの作品によって確立されたと言える。
その他、牧歌的な小品「ハーレクイン」(コーラスはフィル・コリンズ??)、メロトロン炸裂の「ザ・ファウンテン・オブ・サルマシス」も印象深い。
コメント 0