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The Isolar Ⅱ Tour の音源(その1:オフィシャル・リリース) [デヴィッド・ボウイ]

 1977年、デヴィッド・ボウイは『ロウ』・『ヒーローズ』という大傑作をリリースしている。これだけのハイクオリティなアルバムを、1年間に2枚立て続けにリリースするとはまったく信じられない。私は「ヒーローズ」をNHKの『新・映像の世紀』とともに高校2年生の世界史Aの授業で取り上げているが(今年はコロナ禍で実施できなかったのが残念)、ビートルズがセンター試験でも出題される今日、これらの作品が社会に与えたインパクトについてもより一層評価されることを願う。

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 『ロウ』・『ヒーローズ』リリースの翌1978年3月から、ボウイは北米を皮切りに大規模なワールド・ツアーを敢行する。「The Isolar II」と名付けられたこのツアーは12月12日の日本武道館まで続き、オフィシャル『ステージ』『ウェルカム・トゥ・ザ・ブラックアウト』を始めとして様々な優良音源が残されている。中でも千秋楽となった12月12日のNHKホールでの公演はNHKテレビでも放送された。KISSの武道館公演と並ぶNHK「ヤング・ミュージック・ショー」の名作ライヴである。

The Isolar II Tourにはカルロス・アロマーのほかエイドリアン・ブリューやユートピアのロジャー・パウエルなどの名手が同行した。ボウイ自身の復調もさることながらバック・バンドもスパイダース・フロム・マーズ以降では最強と言ってよい布陣であり、充実したステージが展開されている。実はブライアン・イーノもツアーに同行する予定であったが、健康上の理由から帯同を断ったという話も残っている。

 まず『ステージ』だが、この2枚組ライヴ・アルバムに収録されているのは、1978年4月28・29日のフィラデルフィア、5月5日のプロヴィデンス、5月6日の ボストンからの抜粋。1991年リリースのRYCO盤は、CD1にコンサートの後半、CD2に前半が収録されており、オリジナル・アナログ(全17曲)にはなかったクルト・ヴァイル作の「アラバマ・ソング」が収録されており全18曲である。2005年のリマスター盤では本来の曲順に変更されたうえ、「Be My Wife」、「Stay」の2曲が追加収録されて全20曲の収録である。そして最も新しいリマスターは2017年に行われ、「The Jean Genie」と「Suffragette City」の2曲がさらに追加されて全22曲となった。改めてライコ盤を聴くと、お馴染みのヒット曲の連射でオープニングから先制ノックアウトというセールス戦略がかいま見えて面白い。しかしやはり現行盤のように、重厚な「ワルシャワ」からスタートして徐々に盛り上がる流れで、CD2→CD1の順に聴いていくのがいいと思う。

STAGE(1991 Ryko Disc )/ DAVID BOWIE
【CD 1】
  01. Hang On to Yourself
  02. Ziggy Stardust
  03. Five Years
  04. Soul Love
  05. Star
  06. Station to Station
  07. Fame
  08. TVC 15
【CD 2】
  01. Warszawa
  02. Speed of Life
  03. Art Decade
  04. Sense of Doubt
  05. Breaking Glass
  06. "Heroes"
  07. What in the World
  08. Blackout
  09. Beauty and the Beast
  10. Alabama Song (Bonus Track)


STAGE 2017 REMASTER / DAVID BOWIE
【CD 1】
  01. Warszawa
  02. "Heroes"
  03. What in the World
  04. Be My Wife
  05. The Jean Genie (Previously unreleased)
  06. Blackout
  07. Sense of Doubt
  08. Speed of Life
  09. Breaking Glass
  10. Beauty and the Beast
  11. Fame

【CD 2】
  01. Five Years
  02. Soul Love
  03. Star
  04. Hang On to Yourself
  05. Ziggy Stardus
  06. Suffragette City" (Previously unreleased)
  07. Art Decade
  08. Alabama Song
  09. Station to Station
  11. TVC 15

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 The Isolar II Tourのオフィシャルとしてはもう1枚、2018年にリリースされた『WELCOME TO THE BLACKOUT』がある。これは6月30日と7月1日のロンドン公演を収録したもので、レコーディングはトニー・ヴィスコンティ、ミックスはボウイ自身とデヴィッド・リチャーズ(クイーンなど)が共同で行っている。地元ロンドンで、おまけに場所がアールズ・コートということもあって素晴らしい演奏だ。このツアーはボウイのコンディションがよいうえにバックの演奏も安定してるので、どの公演もあまり差がつかないが、このロンドン公演は群を抜いている。『STAGE』には未収録だった「Rebel Rebel」がカッコいいし(故ショーン・メイズ?のピアノがファンキー!)、「The Jean Genie」でのギターなど『STAGE』よりもこちらのほうがいいと感じられる演奏も少なくない。『STAGE』と聴き比べてその違い最もが解りやすいのは、「Station to Station」だろう。冷気を切り裂くようなロジャー・パウエルによる列車走行音シンセと、それに被さってくるエイドリアン・ブリューの警笛のようなノイジーなギターの絡みは、『STAGE』収録版を圧倒する。収録されている曲も全24曲収録で『STAGE』よりも2曲多い。このツアーにおける最優良音源だと思う。もちろん『STAGE』も密度の濃い、ライヴ盤としては稀有な作品でありリマスターのたびに購入してきたが、どちらか選べと言われたら私は『WELCOME TO THE BLACKOUT』に軍配を上げる。収録曲のうち、「Sound and Vision」と「Be My Wife」の2曲は、権利の関係からボウイの許可無くリリースされた『Rarest One Bowie』(1995年)に収録されていたが、音質は比べものにならないほど良くなっている。



WELCOME TO THE BLACKOUT (Live London '78)
【CD 1】
  01. Warszawa
  02. "Heroes"
  03. What in the World
  04. Be My Wife
  05. The Jean Genie
  06. Blackout
  07. Sense of Doubt
  08. Speed of Life
  09. Sound and Vision
  10. Breaking Glass
  11. Fame
  12. Beauty and the Beast
【CD 2】
  01. Five Years
  02. Soul Love
  03. Star
  04. Hang On to Yourself
  05. Ziggy Stardus
  06. Suffragette City" (Previously unreleased)
  07. Art Decade
  08. Alabama Song
  09. Station to Station
  10. TVC 15
  11. Stay
  12. Rebel Rebel



ステージ(2017ミックス) <2017リマスター>

ステージ(2017ミックス) <2017リマスター>

  • アーティスト: デヴィッド・ボウイ
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2018/02/23
  • メディア: CD



ウェルカム・トゥ・ザ・ブラックアウト~ライヴ・ロンドン’78

ウェルカム・トゥ・ザ・ブラックアウト~ライヴ・ロンドン’78

  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2018/07/25
  • メディア: CD



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