箱根アフロディーテ [ピンク・フロイド]
ピンク・フロイドが初めて来日したのは1971年、レッド・ツェッペリンの初来日と同じ年である。私は1966年(ビートルズが来日した年)の生まれなので1971年というと、5歳。ツェッペリンもフロイドも、後追い体験である。箱根アフロディーテについては雑誌などの断片的な記事から「なんだかスゴそうだ」という印象があったが、このたびリリースされた『原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤)』に伴う企画 デジタル・ブックレット『追憶の箱根アフロディーテ1971』[https://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Special/PinkFloyd/Aphrodite/book.html ]を読むにつけ、ああやはりスゴかったのだなぁと改めて実感する。
「箱根アフロディーテ」目撃者が語る真相(保科好宏)
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/36315/4/1/1
『50周年記念盤』付属のブルーレイだが、観た当初はその時間的短さとコラージュ映像だったことにかなりガッカリした。音と映像がシンクロしていない.....しかし見ているうちに思いは変わっていく。風でメンバーの髪がなびく様子や霧が出ている様子など会場の雰囲気はよく伝わってくるし、そのほかの映像もなかなか面白い。記者会見の様子はともかく、新幹線を待っている様子や列車内での様子、さらには箱根のバックステージ(屋外)で何やら食べている様子など、よくもまぁこんな様子をバンド側が撮らせていたもんだと驚く。
『原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤)』の内容
https://www.110107.com/s/oto/page/pinkfloyd_AHM50th?ima=3921
ブルーレイには「Scott & Watts」と題された2人のツアークルーを追いかけたドキュメンタリーが収録されている。3分くらいの短い映像だが、これはスペシャル・ブックレットの亀渕昭信氏による「覚書」と併せて観ると面白さが倍増する。亀渕氏が書いている、雨の中を機材を運ぶ様子をカメラが捉えていたのである。NHKでビートたけしがやっている「その時カメラは捉えた」(かつてウッドストックの特集があった)という番組で特集して欲しい。
「Scott & Watts」でもっとも印象深いのは、フロイドの機材を積んだトラックをブルドーザーが先導しているシーン。悪天候で泥濘となった道に車が足を取られるため、立ち往生しないようブルの後ろをトラックが走っている。トラックの上で見守るスタッフ、ブルを運転するオペレーターの真剣な表情、彼らとは対照的になぜか楽しそうな笑顔を見せ、上半身裸でタオルを首にかけて走る男性作業員。NHKには、「あの日、偶然そこにいて」で、ここに写っている人たちに当時の証言をとって欲しい。世界文化遺産レベルの映像だと思う。
〈箱根アフロディーテ〉発掘秘話 https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/29269
この『50周年記念盤』リリースにより、コレクターズ市場はまた盛り上がるのではないかとも思う。これまで初日(8月6日)とされてきた音源はすべて翌日7日の音源だったという事実がEmpress Valleyによって昨年明らかとなり、コレクター界隈がざわついたのは記憶に新しい。
私が最初に「アフロディーテ」を耳にしたのは、『Echoes Of Japanese Meddle』(STTP153)というCD。演奏された曲順が実際とは異なるといった点はあるものの、良質なオーディエンスで十分満足できるアイテムだった。その後リリースされた様々なアイテムのうち、『Aphrodite 1971 Remaster』(Sigma210)という3枚組が、なかなか良かった。これは8月7日の代表的な2つ(モノラルのソースと、ステレオのソース)をベースに、欠落部分を他のソースで補填したもの(8月7日のソースは、全部で6種類あるらしい)。このアイテムのディスク3を初めて聴いたとき、そのクリアーさに驚いたものである。「グリーン・イズ・ザ・カラー」の歌い出しの部分と、「エコーズ」の歌いだしの部分には幻想的なエコーがかかっていいて、特に好きな部分。71年という時代、しかも屋外でここまでクリアーに録音できたことは奇跡としかいいようがない。最近GRAF ZEPPELINからも同企画の『HAKONE APHRODITE 1971 2ND NIGHT』がリリースされている。
メーカーインフォ https://www.giginjapan.com/pink-floyd-aphrodite-1971-remaster-stereo/
ピンク・フロイド ライヴ・ツアー・イン・ジャパン 1971-1988
- 作者: -
- 出版社/メーカー: シンコーミュージック
- 発売日: 2021/05/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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