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トニー・マンスフィールドの仕事① ネイキッド・アイズ Naked Eyes [トニー・マンスフィールド]

 トニー・マンスフィールドがプロデュースしたアーティストのうち最も成功したのが、イギリス出身のデュオ、ネイキッド・アイズ(a-haの「テイク・オン・ミー」もトニマンのプロデュース作品だったが、ヒットしたのは別人による再プロデュース作)。ネイキッド・アイズの2人サイモン・フィッシャーとピーター・バーンはもとネオンというバンドのメンバーで、ネオン解散後にサイモンとピートはネイキッド・アイズを、残る2人のローランド・オーザバルとカート・スミスはティアーズ・フォー・フィアーズを結成する。

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 1982年にシングル「Always Something There to Remind Me (邦題:僕はこんなに)」でデビューしたネイキッド・アイズは、2人組として活動した2年間に2枚のアルバムを残しているが、アメリカでリリースされた4枚のシングルすべてが全米トップ40にチャートインした。フェアライトやシモンズ、リン・ドラム、ヴォコーダーなど80年代テクノ~エレポップの雰囲気に満ちてはいるが、それでいてアコ-スティックなホーンの入り方が絶妙で、今聴くと不思議にノスタルジック。ポップでメロディアス、ちょっと哀愁という素敵なサウンドはトニマンの音作りに見事にハマっていた。アメリカではデビュー・シングル「僕はこんなに」が8位、2枚目のシングル「プロミセス・プロミセス」が11位と成功したものの[https://billboard.elpee.jp/artist/Naked%20Eyes/]、本国イギリスではさっぱり売れなかったというのが不思議で、「僕はこんなに」が59位、「プロミセス、プロミセス」が95位止まり。この間に(イギリスだけで)リリースされたシングル「Voices in My Head」はチャートインすらしていない。「僕はこんなに」はアメリカでの成功の勢いで本国でも83年に再リリースされ、このときはチャートには入ったものの59位にとどまった。

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 デビューシングル「僕はこんなに」は、バート・バカラック&ハル・デイヴィッドの曲で、多くのアーティストが取り上げている。最初のレコーディング(1963)は大御所ディオンヌ・ワーウィックで、翌64年にサンディー・ショー版が全英1位となり日本でもリリースされたが、そのときの邦題は「愛のウエイトリフティング」というとんでもないタイトルだった。なんでも、その年に開催された東京オリンピックにあやかったネーミングだというが.....。カーペンターズも「バカラック・メドレー」の中でこの曲をカヴァーしており、邦題は「愛の思い出」。色々と意見のある「僕はこんなに」という邦題だが、「僕は今も君のことをこんなに想ってる」という心を表現した、絶妙なタイトルだと想う。

Naked Eyes - Always Something There To Remind Me (Official Video)

[There's] Always Something There to Remind Me / Dionne Warwick


  サンディ・ショウ 愛のウエイトリフティング


 「僕はこんなに」はUSヴァージョンとUKヴァージョンはイントロが微妙に違っていて、USヴァージョンはタイトなシンセドラムでスタートするが、UKヴァージョンにはシンセドラムが入っておらず、USヴァージョンに比べると、心に響くような鐘の音が際だつ入りになっている。日本盤7インチはUKヴァージョンになっていたので、僕はUKヴァージョンに愛着があったが、雑誌ロッキング・オンが監修した『ロッキン・オン・セレクション・エッセンシャル・ロック・オブ・UK・80’s』というコンピレーションCDを買ったところ、収録されていたのはUSヴァージョンだった。なんかビミョーだったし、さらに解説とはいえないレベルの解説のクズさには、ずいぶんとガックリきた記憶がある。

Naked Eyes - Always Something There to Remind Me (AB '83)

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 アビー・ロード・スタジオでレコーディングされたファーストアルバムは英盤と米盤ではタイトルとジャケットが違っていて、英盤は『Burning Bridges』、米盤は『Naked Eyes』というタイトル。米盤は、英盤に収録されていた12曲のうち「The Time Is Now」「A Very Hard Act to Follow」の2曲がオミットされて10曲となっていたのは、この2曲がそれぞれ「僕はこんなに」「プロミセス、プロミセス」のB面曲だったからと思われる(リイシュー盤『Naked Eyes』には「The Time Is Now」「A Very Hard Act to Follow」の2曲も収録されている)。 チェリー・ポップ(チェリー・レッドの再発専門レーベル)からリイシューされた『Burning Bridges』は全18曲、クリサリスからリイシューされた『Naked Eyes』は全15曲の収録となっており、「僕はこんなに」はそれぞれUKヴァージョンとUSヴァージョンで収録されている(良かった!)。

以下はノート。 
①「 Always Something There To Remind Me 」に関して
 ・『Everything And More』に収録の「Tony Mansfield 12'' Mix」
 ・『Burning Bridges』収録の「U.S. Remix 」
 ・『Naked Eyes』収録の「Jellybean Extended Remix」
 これら3つはすべて同じヴァージョンで、『Everything And More』に収録されているのはトニマンによるミックスではなく、ジェリービーンによるミックスである。「Tony Mansfield 12'' Mix」はオリジナルの英盤12インチに収録されたヴァージョンで、米盤プロモSPRO-9891 に"Long Version" として収録されているヴァージョンである(Jellybeanがリミックスしたヴァージョンを収録しているプロモ盤はSPRO-9924)。ビートルズの「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」風の金属パーカッションとか、これこそがホワイト・ノイズの名手、トニマンらしいミックスに仕上がっている。トニマンによるオリジナルの12インチミックスの方が、ジェリービーンのリミックスよりもよい。この「ロング・ヴァージョン」が収録されているCDはないものか。
Always Something There To Remind Me(Tony Mansfield 12'' Mix)


②「Promises, Promises」に関して
 ・『Burning Bridges』にはオリジナル・アルバム・ヴァージョンで収録
 ・『Naked Eyes』ではオリジナルよりもイントロが短いUSシングル・ヴァージョンで収録されているが、これは『Burning Bridges』にボーナス・トラックとして収録されている「Promises Promises (U.S. 7" Remix)」 、『Everything And More』に収録の「Promises, Promises (Jellybean 7'' Mix)と同じヴァージョンである。
 ・『Everything And More』『Burning Bridges』『Naked Eyes』に収録されている「Jellybean~」はすべて同じヴァージョン。当時ジェリービーンの恋人だったマドンナの語りがフィーチャーされている。
 ・「Promises, Promises (Tony Mansfield 12'' Mix)」は、現状『Everything And More』だけでしか聞けない。

 ③トニー・マンスフィールドが担当した楽器について、『Burning Bridges』は「Guitars, Simmons Drums and Linn Programming」というクレジットなのに対して、『Naked Eyes』では「Bass Guitar, Simmons Drums and Linn Programming」となっている。ギターなのかベースなのか、それとも両方担当したのか。

 2枚目のアルバム『Fuel For The Fire』(邦題:イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ、84年)は前作ほどのヒットとはならず、全米では83位にとどまり、イギリスではチャートの記録が残っていない。全10曲のうちトニマンのプロデュースは8曲で、残りの2曲はアーサー・ベイカーのプロデュース。アーサー・ベイカーがプロデュースした2曲に関しては、クレジットされているギタリストやドラマーが他の8曲とは違っている。アーサー・ベイカーが手がけた2曲のうちの1曲で、先行シングルとしてリリースされたオープニング・ナンバーの「イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ」(全米39位)は、悪くはないがトニマンが持っていたアコースティックな暖かみといった感覚が感じられず、時流に乗ったダンサブルなエレクトロ・ナンバーに終わってしまったのが惜しい。こちらもチェリー・ポップから7曲のボーナス・トラック入りで再発されている。

ネイキッド・アイズのYoutubeチャンネルでは、シングル・カットされた5曲すべてのPVを見ることができる。
https://www.youtube.com/channel/UCCJxcvDa-JOgDk62F7hoLsQ

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 解散後、ピーター・バーンはアメリカに拠点を移して活動し、スティーヴィー・ワンダーの全米No.1「パート・タイム・ラヴァー」(1985年)にバック・ヴォーカルでクレジットされている。またロブ・フィッシャーは、サイモン・クライミーとともにクライミー・フィッシャーとしてイギリスではネイキッド・アイズ以上の成功を収め、日本でも自動車(スズキ・カルタス)や家庭用ビデオカメラのCMに起用されていた。舘ひろしさんの「オレ・タチ・カルタス」で有名だったスズキ自動車のカルタスと言えば、ティアーズ・フォー・フィアーズの「シャウト」やペット・ショップ・ボーイズの「ウェスト・エンド・ガールズ」など洋楽使用では定評のあった車で、カルタスのCMに起用されたことは、クライミー・フィッシャーの楽曲クオリティの高さを物語っていた(クライミー・フィッシャーについては、ゆっくり聴き直してみたい)。残念ながらこちらもアルバム2枚で解散し、ロブはリック・アストリーへの曲提供(1991年の『FREE』に収録)などを行っていたが、1999年にガンのため亡くなった。リイシューされた『Burning Bridges』と『Naked Eyes』には、ロブ・フィッシャー追悼のクレジットがはいっている。
 
東芝VHS-Cムービー AI-30AF

SUZUKI ニューカルタス GT-i


 ピ-ター・バーンは、現在も1人でネイキッド・アイズの名前で活動中である。

NAKED EYES - ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME (LIVE)



Naked Eyes "Always Something There To Remind Me", Lost 80's Live, Salt Lake City, 9/7/2017

Naked Eyes - Always Something There To Remind Me Live 2021




BURNING BRIDGES ~ SPECIAL EDITION

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  • アーティスト: NAKED EYES
  • 出版社/メーカー: CHERRY POP
  • 発売日: 2012/11/05
  • メディア: CD



バーニング・ブリッジズ:スペシャル・エディション

バーニング・ブリッジズ:スペシャル・エディション

  • アーティスト: ネイキッド・アイズ
  • 出版社/メーカー: SOLID
  • 発売日: 2012/12/05
  • メディア: CD



Naked Eyes

Naked Eyes

  • アーティスト: Naked Eyes
  • 出版社/メーカー: Chrysalis
  • 発売日: 2018/08/31
  • メディア: CD



FUEL FOR THE FIRE: EXPANDED EDITION

FUEL FOR THE FIRE: EXPANDED EDITION

  • アーティスト: NAKED EYES
  • 出版社/メーカー: CHERRY POP
  • 発売日: 2013/08/26
  • メディア: CD



イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ

イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ

  • アーティスト: ネイキッド・アイズ
  • 出版社/メーカー: SOLID/CHERRY RED
  • 発売日: 2013/12/04
  • メディア: CD



Everything & More

Everything & More

  • アーティスト: Naked Eyes
  • 出版社/メーカー: One Way Records Inc
  • 発売日: 2002/10/22
  • メディア: CD



Promises Promises: Very Best of

Promises Promises: Very Best of

  • アーティスト: Naked Eyes
  • 出版社/メーカー: Capitol
  • 発売日: 1994/05/17
  • メディア: CD



The Best of Naked Eyes

The Best of Naked Eyes

  • アーティスト: Naked Eyes
  • 出版社/メーカー: Capitol
  • 発売日: 1991/04/23
  • メディア: CD



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