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TUBULAR BELLS / MIKE OLDFIELD [マイク・オールドフィールド]

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   『チュブラー・ベルズ』マイク・オールドフィールド
    1. パート・ワン
    2. パ-ト・トゥー

 「新しい音楽を作り出す要因となるのは、時代の潮流の変化と、新しいテクノロジー、そしてミュージシャン同士による密室的作業の三つである」とは、『レコード・コクターズ』誌2000年1月号の中で立川芳雄氏が述べている文章。立川氏は『クリムゾン・キングの宮殿』に対する評価に絡めて、このように述べているワケですが、この指摘を目にしたとき、私は『チュブラー・ベルズ』を思い起こさずにはおられませんでした。しかも「小さな巨人」マイク・オールドフィールドは、「新しいテクノロジー」に基づく「密室的作業」を、ほとんど一人で行ったのです。

 プログレッシヴ・ロック(プログレ)の指標としては、クラシックからの影響だの哲学的な歌詞だのメンバーの超絶技巧だの、はたまたメロトロンだのいったものがあげられてきました。しかし「プログレッシヴ=前進的」という言葉の意味からすれば、この『チュブラー・ベルズ』以下マイク・オールドフィールドの作品は、まさにプログレッシヴと呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。

 不安をかきたてるようなイントロから、夢見るような牧歌的優しさ、そして荒々しさまでを感じさせる移り変わりは、聴き手のイマジネーションを刺激せずにはおきません。おそらく聴き手のそのときの気分や、育った環境など様々な要因で心像風景は変わるだろうと思います。五感によって感じられる変化は生じても、本質的には変化しない。そのような自然の偉大さを音で表現したらこうなるだろうという作品です。まさに「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。」

 ほとんど楽器演奏だけで作られたこの作品が「ロック」なのかと問われたら返答に困りますが、ケヴィン・エアーズのザ・ホールワールドでデヴィッド・ベッドフォードから受けた影響や、共同プロデューサーとしてクレジットされている2人のエンジニア、マナー・スタジオのトム・ニューマン(『妖精交響楽』)、サイモン・ヘイワース(ゴング、スティーヴ・ヒレッジ)など、ロックがなければ生まれなかったのも確かです。
 ヴィヴィアン・スタンシャル(ボンゾ・ドッグ・バンド)による印象的な楽器紹介で、徐々に楽器の音色が積み重ねられ、クライマックスでタイトルの由来となったチューブラー・ベルズの音色が響き渡るA面が目立ってしまうのは致し方ないでしょう。しかし、かつてトラッドのバンドを組んでいた姉サリーのコーラスや、エンディングのトラッド「Sailors' Hornpipe」、「パート・トゥー」前半で感じられる牧歌的雰囲気には、「ミニマル・ミュージック+ロック+トラッド」という新しい世界の広がりが感じられます。ロックの重要なファクターであった黒人音楽からの影響がまったく感じられない、現代音楽の発展形態という点では、新境地を開いた「パート・トゥー」の方がより興味深く感じます。

 2009年には、マイク自身の手で新たにリミックスされました。単体でもリリースされていますが、2009年リミックスとオリジナルの1973年ヴァージョンのCD2枚に、DVD(オーディオ部分には5.1chサラウンド、映像は73年のライヴ)を加えたデラックス・エディションがおすすめ。またデモを加えた「アルティメット・エディション」もリリースされています。





Tubular Bells (Dlx)

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Mercury UK
  • 発売日: 2009/06/09
  • メディア: CD



Tubular Bells: Ultimate Edition (Bonus Dvd) (Bonv)

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