ORIGINAL ALBUMS COLLECTION / EYELESS IN GAZA：「英国ロックの深い森」の入り口：SSブログ

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ORIGINAL ALBUMS COLLECTION / EYELESS IN GAZA　[アイレス・イン・ガザ] [編集]

　アイレス・イン・ガザが名門チェリー・レッドからリリースした初期４枚のアルバムはボックス・セットになっており、容易に聞くことができる（2014年リリース）。

https://www.discogs.com/ja/Eyeless-In-Gaza-Original-Albums-Collection/release/6065422

　６枚目の『Back from the Rains』（1986）がネオアコの名盤としてよく知られており、「明るく爽やか」のイメージの彼らだが初期のアイレスはダークで実験的で、特に1stアルバム『Photographs As Memories』（81年）にネオアコ的な要素はほとんど感じられない。マーティン・ベイツのヴォーカルはかなりエモーショナルで、曲によっては絶叫に近い。2ndアルバム『Caught In Flux』は1stと同じく81年のリリースだが、前作に比べるとヴォーカルも「主張する」感じから「聴かせる」感じになった。とはいうものの、ややエキセントリックなヴォーカルと不安を駆り立てるようなシンセとの組み合わせは、６枚目から入った人には相当キツいのではないだろうか。正直、私も初期の２枚はチョット苦手だ。
　しかし３枚目（4枚目？）の『Drumming The Beating Heart』（1982）からは曲調にも変化が現れ（ネオアコっぽい曲もアリ）、ヴォーカルも洗練されて格段に表現力を増した。また初期はミニマル・ミュージックのようだったシンセも、憂いを感じさせる叙情的なヴォーカルとうまくマッチするようになった。現在この『Drumming The Beating Heart』は、同年リリースの『Pale Hands I Loved So Well』とともに2in1仕様になっているが、『Drumming ～』がチェリー・レッドからのリリースだったのに対して、『Pale Hands ～』はノルウェーのレーベル、ユニトンから最初にリリースされた。ユニトンと言えば、耽美派だったころのフラ・リッポ・リッピ（北欧のジョイ・ディヴィジョンと呼ばれた時期もあった）の『スモール・マーシーズ』をリリースしていたレーベルだが、『Pale Hands ～』は収録曲の多くがインストで、グレゴリオ聖歌をモチーフにした曲や後のデヴィッド・シルヴィアンにも通じるようなアンビエントな曲もある。これまで割と無機的だったバックの演奏がヴォーカルとうまくマッチして表情豊かになってきたのは、この『Pale Hands ～』のリリースが大きかったと思う。『Pale Hands ～』収録のヴォーカル入りの２曲はいずれも素晴らしいが、『Drumming ～』にはＡ面の終わりに７分近いインスト大作が収録されており、この２作品はやはりワンセットという気がする。

　３枚目のアルバム『Drumming The Beating Heart』のタイトル曲「Drumming The Beating Heart」はなぜかアルバム本体には収録されず、アルバムリリースの翌年（83年）に出た４曲入りシングル「New Risen」にひっそりと収録されている。CD時代になって名盤『Back from the rains』にボーナストラックとして収録されたり、ベスト盤にも収録されたりしているのでレア曲というわけではないが、マーティン・ベイツの深く叙情的なヴォーカル、エコーを適度に効かせた音響処理、ヴォーカルを引き立てる抑制されたバックの演奏は、短いながらも素晴らしい曲である。この曲は、ボックスではアルバム未収のシングル曲などを集めた『recollections / rarities』に収録されているが、このボーナスディスクには彼らが自身のレーベルから1980年にリリースしたデビューシングル「Kodak Ghosts Run Amok」なども収録されており（これも別に入手困難というわけではないが）、ボックスの中では聴く頻度が一番高い。