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THE COLDEST WINTER FOR A HUNDRED YEARS / THE WILD SWANS [リヴァプールのアーティスト]

 元ティアドロップ・エクスプローズ~ケアー~ワイルド・スワンズのポール・シンプソンが、最近ツィッター(https://twitter.com/mrpaulsimpson1)で自分の昔の写真を公開している。ウィル・サージェント(エコー&ザ・バニーメン)と一緒の写真(1998年)では、2人が組んでいたデュオ・グループ、Industrial Domesticに触れているが、そのほかA Shallow Madness(ポールのほか、ジュリアン・コープとイアン・マッカロク在籍)の写真や、ジュリアン・コープとのティアドロップ・エクスプローズ時代の写真なども見ることができる。1981年の夏に行われたライヴのポスターには、ワイルド・スワンズのほかオレンジ・ジューズとペイル・ファウンテンズの名前も見えて懐かしいが、最も目を奪われたたのは、ケアーやアイルド・スワンズを含むデモテープの山の写真(https://twitter.com/MrPaulSimpson1/status/1339884497479864327)。まさに宝の山。

 ポール・シンプソンがもっとも輝いていたのは1980年代、ワイルド・スワンズとケアーの名義で活動していた時期である。ワイルド・スワンズの歴史は、1982年、ビル・ドラモンドが設立したZooレーベルからリリースした「Revolutionary Spirit」でスタートした。この曲は、Zooのコンピレーションその他のCDで聴くことができるが、疾走感の中にも英国的な陰りを帯びたギター・ポップの名曲である。第1期ワイルド・スワンズには、後にロータス・イーターズを結成するジェレミー・ケリーと、そのサポート・メンバーのジェド・クィンが在籍しており、バンド初期のドラムはピート・デフレイタス(後にエコー&ザ・メニーメン)、ベースはロロ(後にウドゥントップス)だった[https://peel.fandom.com/wiki/Wild_Swans]。82年5月1日に収録されたジョン・ピール・セッションのライヴが公式にリリースされているが(Strange Fruit ‎– SFPS 006)、この第1期ワイルド・スワンズはジョン・ピール・ショウ出演後ほどなくしてケアーとロータス・イターズの2つに分裂してしまう。
 1986年にジョン・ピールの音源がリリースされ、シンプソンはケリー、クインとともにワイルド・スワンズを再結成して、メジャーのSireから『ブリンギング・ホーム・ジ・アッシェズ』(1988)、『スペース・フラワー』(1990)の2枚のアルバムをリリースした。ワイルド・スワンズとしての活動は90年に停止し、自分のレーベルAstral Girlを立ち上げたシンプソンはSKYRAYという退屈なアンビエントのユニットを経て、2009年に三度ワイルド・スワンズとしての活動を再開する。「English Electric Lightning」「Liquid Mercury」の2枚のシングルをリリースした。またライヴ活動も行い、その年の12月11日に行われたライヴ(ウィル・サージェントも参加)の一部は、2013年にフィリピンを襲った台風ヨランダの被害支援のチャリティーとして「For One Stormy Night Only」というタイトルでDL販売された。

 セカンド・アルバム『スペース・フラワー』からら20年の歳月を経てリリースされたワイルド・スワンズ名義のサードアルバム、『The Coldest Winter for a Hundred Years』(2011)は、彼の持ち味である優しいヴォーカルとキラキラした透明感のあるギターが全盛期のワイルド・スワンズを彷彿とさせる素晴らしい作品だ。ウィル・サージェントをはじめ、旧友ジェド・クイン(ジャケットの絵も彼の作品~ジェドは現在画家としての名前の方が有名らしい)、ヘンリー・プリーストマンらがサポートで参加している。ケアー以来の「メロディアスで、ちょっとセンチメンタル」な雰囲気も変わらず、見事な完成度だ。アルバム未収の3曲を収録したCDシングルが、「Track In Snow」というタイトルで同時にリリースされた。

IMG_1712.JPG

The Coldest Winter for a Hundred Years / The Wild Swans
 01. Falling To Bits
 02. Liquid Mercury
 03. Chloroform
 04. In Secret
 05. English Electric Lightning
 06. When Time Stood Still
 07. Underwater
 08. Intravenous
 09. Glow In The Dark
 10. My Town
 11. Lost At Sea
 12. The Bluebell Wood

When Time Stood Still



English Electric Lightning



 「English Electric Lightning」とは英空軍の超音速戦闘機の名前で、歌詞に出てくる「Thatcher sinking the Belgrano(ベルグラノを沈めるサッチャー)」とは、1982年のフォークランド戦争で当時のサッチャー英首相と、撃沈されたアルゼンチン海軍の戦艦ヘネラル(ジェネラル)・ベルグラノを指している。優しくロマンティックなメロディーに辛辣な歌詞を乗せた曲もまた、ワイルド・スワンズ~ポール・シンプソンの真骨頂である。

 ツイッターやフェイスブックには2019年にマニラ(フィリピン)で行われたライヴの写真が出ている。イッツ・イマテリアルが30年ぶりの作品をリリースしたので、ワイルド・スワンズにも新作を期待したい。



The Coldest Winter for a Hundred Years

The Coldest Winter for a Hundred Years

  • アーティスト: The Wild Swans
  • 出版社/メーカー: Occultation
  • 発売日: 2011/08/01
  • メディア: CD



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