FRIED / JULIAN COPE [リヴァプールのアーティスト]
ティアドロップ・エクスプローズ解散後にジュリアン・コープが発表した3枚はいずれも傑作と呼ぶにふさわしい作品群だが、中でもセカンド・ソロ『フライド』を最高傑作としておきたい。
「fried」とは「My brain is fried(脳みそが揚げられてる).」の意味で、普通には「疲れた」、スラング的には「イカれてる」「ラリってる」「ヤク中」などの意味もあるそうだが、「fried」と書かれた壊れた玩具を目の前に亀の甲羅を被って裸で蹲るとはなんともイってるジャケットである。これは内容も相当....という予想とは裏腹に、60~70年代テイストを感じさせるノスタルジックでドリーミーな作品。英国トラッドの影響も感じられて興味深いが、時おり垣間見える狂気もまたこのアルバムを魅力的にしている。「亀」つながりで、シド・バレットと比較されることも多かった。ドラマーとして腕利きセッション・ドラマーのクリス・ウィッテンが参加しており、また「Search Party」等での美しいオーボエは元ドリーム・アカデミーのケイト=セント・ジョン(クレジットはされていない)。2015年には、ジョン・ピール・セッション(84年)などを含んだ2枚組のデッラクス・エディションがリリースされた。
Reynard The Fox (Live 1986)
Sunspots (Live 1987)
ポップな前作『ワールド・シャット・ユア・マウス』(84年)、本作、そしてパンキッシュな次作『セイント・ジュリアン』(87年)と、80年代のジュリアン・コープは本当に充実していた。とりわけ初ソロ『ワールド・シャット・ユア・マウス』(84年3月リリース)から本作までのインターバルはわずか6カ月であり、充実ぶりがうかがえる。ヨーロッパの中世説話「狐物語」に題材をとった「Reynard the Fox」や北欧神話の主神オーディンをイメージした「O King of Chaos」など後の古物志向も明確になっている。
『フライド』をリリースした頃のジュリアンは日本での人気が高く、雑誌『フールズ・メイト』の表紙を飾ったり、来日公演を行ったりしている(博多の伝説的バンドであるルースターズとのジョイント)。ラジオ日本の「サウンドプロセッサー(サンプロ)」でもよく彼の曲が流れていた。その後古代文明研究やジャパニーズ・ロックの研究・評論など、なんだかよく解らない人になっていったが、意外にも(?)まだしっかりステージに立っている。外見はアレだが、声も出てるし、12弦ギターもしっかり弾いている。日本ロック好きのようでうれしい。
Sunspots (Live 2020)
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