SNOW BORNE SORROW / NINE HORSES [デヴィッド・シルヴィアン]
小山田圭吾とデヴィッド・シルヴィアンが共演したのが、教授との「ワールド・シチズン」だったというのがなんともブラ....という話はさて措き、ナイン・ホーセスである。15年前の2006年にリリースされたこのアルバムが傑作だと思っているのは私だけだと思っていたところ、偶然にアマゾンのレビューを目にしたら意外に高評価多でちょっとビックリだった。
私がデビシルの作品で一番好きなのは『シークレッツ・オブ・ザ・ビーハイヴ』(1987年)だが、彼がスティーヴ・ジャンセンと組んだナイン・ホーセスの『スノー・ボーン・ソロウ』はそれに劣らず好きなアルバム。両者はデビシルの美意識に裏打ちされた歌モノという点では共通しているが、アコースティック色が強い『シークレッツ~』に対し、本作はクールなジャジーさと隠し味的なエレクトロニクスのブレンド具合が絶妙な作品だ。『シークレッツ~』は歌と曲の印象が強いため、BGMとして聴き流すことが難しい作品だったが、ギリギリポップなこのアルバムは仕事しながら流すアルバムとしてもフィットする。
Nine horses - Wonderful World
このアルバムがリリースされた当時のインタビューによれば、ナイン・ホーセスは2つのプロジェクトが融合したものだという(https://www.barks.jp/news/?id=1000020067)。異なるプロジェクトが融合した作品とはいえ、全体を通した空気感は一貫している。インタビューにもあるが、「統一するのに時間がかかった」のも宜なるかな。
時おりはいるスティーナ・ノルデンスタムの、ちょっとアンニュイなヴォーカルもよい。スウェーデン出身の彼女はヴァンゲリスの作品にも参加しており、アルヴェ・ヘンリクセンのトランペットと彼女のウィスパー・ヴォイスはともにちょっと退廃的で、ピッタリとハマっている。両者はデヴィッドの声とも相性抜群。これに薄めのエレクトロニカを被せたサウンドは「ギリギリのポップさ」という感じで、なんとも耳に馴染む。
Nine Horses - Atom And Cell
Nine Horses - Recording Sessions
4曲入りシングル「ワンダフル・ワールド」には、アルバム未収の「When Monday Comes Around」という曲が収録されているが、デヴィッドの声が印象深い佳曲である。
Nine Horses - When Monday Comes Around
続いてリリースされた『マネー・フォー・オール』は、リミックスや別ヴァージョン等を収録した8曲入りのミニ・アルバム。リミックスは原曲の良さを生かしながらもクールな躍動感が感じられる仕上がりとなっており、暑い夏の夜によく聴いた。
Nine Horses - Wonderful World (Burnt Friedman Remix)
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