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Our Favorite Shop / The Style Council [スタイル・カウンシル]

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 スタイル・カウンシル2枚目のアルバム『アワ・フェイヴァリット・ショップ』(85年)は、スタカン唯一の全英No.1アルバムで、ポール・ウェラーの作品中最もソフィスティケイテッドな作品である。「今やりたい音楽をやってる」みたいな、いい意味で肩の力が抜けた作品だと思う。ヴォーカルも、シャウトよりもファルセットの曲がいい。音楽的な志向とも併せて、「ジャケットに何が写っているのか」を観るのも面白い(やっぱりビートルズ!)。
 当時は都会的でジャジーなこの作品の雰囲気から、「スタイル・カウンシルを聴いているひと=オシャレなひと」みたいな感じもあったので、ちょっと「スタカンが好き」というのが私には躊躇われたものである。歌詞を読むと結構辛辣で、ワーキング・クラスの怒れる若者の気持ちを代弁するかのようであるし、「シャウト・トゥ・ザ・トップ」のPVは、カウンシル・コレクティヴ以来支援をしてきた炭鉱労働者への支持を改めて表明している。中でも「Come To Milton Keynes」のPVは、ポップなメロディーに乗せてMTVやハンバーガーなどアメリカを揶揄するようなシーンが次々に登場する。極めつけは、アメックスのクレジット・カードで手首を切る自由の女神。流れる血は、スキン・ヘッズの若者(たぶんイギリス人)の頭に滴り落ちる。またアルバムには収録されていないが、「Walls Come Tumbling Down!」のシングルに収録された「Blood Sports」は、ブラッド・スポーツ(狩猟や闘牛など動物の血を流して楽しむ娯楽)を批判した内容になっている。歌詞の内容がストレートに伝わりにくい日本では、こうした真意は伝わりづらかったと思われるが、その中でひときわ輝いているのが、明るいラヴ・ソングの「ラック」。ポールのヴォーカルも、ミックのピアノともども何やら楽しげな感じだ。



「Come To Milton Keynes」


 『アワ・フェイヴァリット・ショップ』のオリジナルUK盤には、「シャウト・トゥ・ザ・トップ」は収録されず、全14曲であった。しかし、「シャウト・トゥ・ザ・トップ」を入れればアルバムの売れ行きが伸びることは目に見えている。そのため日本盤やオーストラリア盤ではA面6曲目「The Stand Up Comic's Instructions」が、またカナダ盤やアメリカ盤ではB面6曲目「Our Favourite Shop」がカットされ、それぞれ「シャウト・トゥ・ザ・トップ」に置き換わっている。インスト・ナンバーとはいえ、アルバムのタイトル・ナンバーをカットするのはマズいのでは....と思ったのか、北米では『アワ・フェイヴァリット・ショップ』ではなく、『Internationalists』というタイトルになり、ジャケットも変更されてリリースされた(日本盤『Walls Come Tumbling Down!』のジャケ写真の別カット)。以前は、「シャウト・トゥ・ザ・トップが入っていないオリジナルUK盤がいちばん音がイイ」(=UK盤以外は余計な曲を入れたせいでカッティングが不安定となった)という話があったが、実際のところどうだったのだろう。「The Stand Up Comic's Instructions」は1分半足らずの短い曲なので、別にオミットしなくてもよかったのではないかと思うが、「収録曲数を同じにしなければならない」等の契約でもあったのだろうか?



The Style Council - Walls Come Tumbling Down! (Official Video)


 そういえばピーター・ガブリエルの『Us』(1992年)に東芝EMIが日本独自でボーナス・トラック「BASHI-BAZOUK」を入れたところ、ガブリエル本人は許可していなかったことから回収騒ぎになったことがある。当時の新聞記事によると、ヴァージン・レコード側からOKをもらってリリースしたが、本人の抗議で回収となり、「約6万枚を出荷、店頭在庫はその2割ほどと見られ」「ガブリエルは回収した現物をすべて自分に返品せよと求めているという」。これが逆に宣伝になったようで、買うつもりがなかった私もつい買ってしまい、新聞記事の切り抜も保存していたが、聴いてみて「ボーナス・トラックにするなら、もうちょっとイイ曲いれろよ」と思ったものである。


 Our Favourite Shop (UK POLYDOR TSCLP 2)
 【SIDE A】
  01. Homebreakers
  02 All Gone Away
  03. Come To Milton Keynes
  04. Internationalists
  05. A Stones Throw Away
  06. The Stand Up Comic's Instructions
  07. Boy Who Cried Wolf
 【SIDE B】
  01. A Man Of Great Promise
  02. Down In The Seine
  03. The Lodgers (Or She Was Only A Shopkeeper's Daughter)
  04. Luck
  05. With Everything To Lose
  06. Our Favourite Shop
  07. Walls Come Tumbling Down!


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 「シャウト・トゥ・ザ・トップ」には様々なヴァージョンがある。
  ①7インチヴァージョン(『シンギュラー・アドヴェンチャーズ』に収録)
  ②12インチヴァージョン(『コンプリート・アドヴェンチャーズ』に収録)
  ③「ヴィジョンクエスト」サントラ・ヴァージョン(『アワ・フェイヴァリット・ショップ』の初期CDに収録)
  ④USAリミックス(『アワ・フェイヴァリット・ショップ』の現行CDに収録)


 ③はヴォーカル違い。④はバックの演奏(ドラムとベース)が差し替えられ、また第2ヴァースの終わり「nothing certain in these days of mine」にバック・コーラスが加わっている。小柳ルミ子もカヴァーしたが、歌詞の内容はまったく違っている。



7インチ・ヴァージョン



Vision Quest サントラ・ヴァージョン



USA Remix



小柳ルミ子ヴァージョン

ロング・ホットサマーズ:ザ・ストーリー・オブ・ザ・スタイル・カウンシル(SHM-CD)

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  • アーティスト: ザ・スタイル・カウンシル
  • 出版社/メーカー: Universal Music
  • 発売日: 2020/10/30
  • メディア: CD
アワ・フェイヴァリット・ショップ

アワ・フェイヴァリット・ショップ

  • 出版社/メーカー: USMジャパン
  • 発売日: 2011/11/09
  • メディア: CD


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