High Land, Hard Rain / Aztec Camera 「ネオアコ」の名盤 [ラフ・トレード・レコード]
『レコード・コレクターズ』2022年7月号の特集「80年代のロック・アルバム200」では113位と、15年前の特集「80年代ロック・アルバム・ベスト100」での25位から大きく順位を下げてしまったのが、アズテック・カメラのファースト・アルバム。軽快なアコースティック・ギターに乗った優しく流麗なメロディーは時に明るく、また甘美で実に日本人好みの音作り。このアルバムがリリースされた1983年は、バウハウスのラストアルバム『バーニング・フロム・ジ・インサイド』や セックス・ギャング・チルドレンのデビュー・アルバム、U2の『WAR(闘)』などがリリースされた年でもある。エキセントリックな表現手法や強いメッセージ性には疲れを感じ始めていた耳には、このアルバムの瑞々しさはなんとも心地よく響いたのではないか(ブルー・ナイルのファーストも)。一方で、そうした優しさゆえ、時間の経過とともにインパクトが薄れてしまい順位を下げてしまったのかもしれない。
とはいえ、80年代のポスト・パンクの中でも名盤としてあげてよい一枚である。ロディ・フレームはこの作品をレコーディングしたときまだ19歳だったそうだが、凝ったコーラスワークやアレンジなど、ちょっと信じられないくらいの完成度だ。ジャズやラテン・ミュージックも取り入れた懐の深さは、一年早く1982年に同じくラフ・トレードからリリースされたウィークエンドとともに先駆者の一人としてよいと思う。影響を受けた日本のアーティストも多いようだが、このアルバムから感じられる凛々しさや、タロットカードをモチーフにした「思い出のサニー・ビート」のMVのセンスは、ちょっとマネできないのでは、という気がする。「The Boy Wonders」のイントロがダイアー・ストレイツの「悲しきサルタン」に似てる、と思ったら次作のプロデューサーにはマーク・ノップラーが起用された。
Aztec Camera - Oblivious (Official Video)
The Boy Wonders
オリジナルは10曲入りで、最初のCD化に際して3曲が追加収録された。次いで2012年にはエドセルから7曲のボーナストラックを収録した17曲盤がリリースされ、さらに2013年にはドミノから30周年記念盤として2枚組がリリースされた。このドミノ盤が現状での決定版である。ドミノ盤のCD2には16曲が収録されているが、ポストカード時代のシングルは残念ながら未収。トニー・マンスフィールドがプロデュースした「冬の散歩道」は、エドセル盤にも12インチヴァージョンが収録されていたが、7インチヴァージョンは初聴き。アルバム・ヴァージョンよりも20数秒長く、スパニッシュなギターが全面に出ていて、ギターのフェードアウトで終わる。イントロのシンセがトニー・マンスフィールド的でとても良い。「思い出のサニー・ビート」のクライヴ・ランガー&アラン・ウィンスタンレー(後に『Frestonia』をプロデュース)ヴァージョンは、特によいとは思えない。
Aztec Camera - Walk Out To Winter (Original Rough Trade 7" Tony Mansfield Version)
Aztec Camera ''Oblivious'' (Clive Langer/Alan Winstanley remix)
Original Album Series: Aztec Camera
- アーティスト: AZTEC CAMERA(アズテック・カメラ)
- 出版社/メーカー: Warner Music
- 発売日: 2010/02/27
- メディア: CD
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