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1975年USツアー ロングビーチ 2days [レッド・ツェッペリン]

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 75年3月11日と12日のロングビーチ公演2days(カリフォルニア州)は、ツェッペリン75年USツアーでも有名な公演の一つ。このうち11日にはオーディエンスとSBDのソースがあり、オーディエンス・ソースの方は、かのマイク・ミラードが録ったと言われている。オーディエンスとはいうものの、素晴らしい臨場感であり、下手なSBDよりもずっといい。翌12日の音源は、前日に比べると音質は落ちる。75年ダラスや77年クリーヴランド(『デストロイヤー』)のように「2日連続公演の音源がある場合、一日目の音質はとてつもなく素晴らしいが演奏は甘くて、二日目は逆」というのがイメージとしてあって、このロングビーチもそのイメージだが、二日目の音質がそんなに酷いかというと、そうでもない。一日目に比べて....という話であり、十分楽しめる音源である。私が中学生の頃のアナログブートに比べれば、「十分聴ける」音質だ。むしろ「あの頃ブート」のようなエコーがかかってモゴモゴした音質は、私の耳にはそれなりに優しい。

 今でこそZEP75年ツアーのSB音源は珍しくないが、1990年代だとダラスくらいしかなくて(ジミーがナチス帽がぶってる紙ジャケ2枚バラ)、しかも一枚1万円くらいしていたのでとても買えるような値段ではなかった。そこでよく聴いていたのが、3月11日のロングビーチ公演である。この日の公演を収録したCDについて、『GOLD WAX』誌では「『THE AMERICAN RETURN OF LEDZEPPELIN』(FLYNG DISC)という3枚セットより、BAD GIRLS SONG盤の方が音がイイ」とあったが、BGS盤は2枚組であったため「幻惑されて」がカットされていた。その後2009年にEmpress Valleyから『LONG BEACH CALIFORNICATON』という完全SBDがリリースされ、私もコピー盤『WEST OF SUNSET』を購入してみたが、実に素晴らしい音質だった。
 11日の前半はいまひとつ。スタートの「ロックンロール」では、最初の♪ロンリロンリロンリで「タイム」までロバートは息が続かず、なんとか誤魔化しす。続く「シック・アゲイン」でも2番の出だしの歌詞が出てこない。この曲ではジミーのギターもトラブったようで、イントロの音が出ずにジーと雑音が聞こえる。「丘の向こうに」でのソロももたつきが感じられる部分がある。「死にかけて」で持ち直すが、運の悪いことに「永遠の詩」ではギターのチューニングが狂っており、ギターの音が違和感のある妙な感じになってしまった。しかし、おかげでベースラインがクリアにきこえるのも事実(全体的にこの日のSB音源はベースがよく聴き取れる)。この日は機材の調子があまりよくないようで、ハム音などがたびたびはいる。ロバートの喋りが多い感じがするのは、調整のための時間をかせぐためかもしれない。
 調子は尻上がりで、CD2枚目の「ノー・クォーター」からは好調だ。「ノー・クォ-ター」では、やや力を抜いたかのようなブルージーなジミーのソロに耳を奪われる。CD3枚目にはいって30分にわたる「幻惑されて」、ファンキーな「クランジ」完全版をインクルードした「胸一杯の愛を」などは、「これぞツェッペリン」という重厚な演奏である。

 ロング・ビーチ2日目はオーディエンス音源。音質云々よりも、所々はいるカットの方が気になる。「永遠の歌」でギターの弦が切れてしまって演奏が一時中断し、再開までの間はロバートの喋りでつないでいる。エレピのイントロがついた「ノー・クォーター」では、時に幻想的で時にジャジーなアコースティック・ピアノ・ソロが秀逸。30分間を越える「幻惑されて」では、途中にはいる「ウッドストック」における「we are stardust」のロバートの詠唱から、ペイジのバイオリン・ボウによる怪しげな雰囲気~ロバート→ボーナムとジミーの掛け合いまで、素晴らしい出来。
 この日の音源には『LONG BEACH ARENA FRAGMENT』(HOLY SH002-A)というアイテムがあり、このCDには最後の4曲(「天国への階段」「胸一杯の愛を」「ブラック・ドッグ」「ハートブレイカー」)しか収められておらず、しかも「天国への階段」は♪カット・インである。なぜこういう中途半端なアイテムがあるかというと、「天国への階段」の途中から音質が良いソースがあるからだ。一説によるとマイク・ミラードが渋滞に巻き込まれて会場のシビック・アリーナ到着が遅れたため、ラスト4曲しか録音できなかったとも言われている。
 ラスト4曲は、演奏も素晴らしい。最初の聞き所は「天国への階段」の冴えまくるギター・ソロ。ジョンジーの堅実なキーボードプレイとのマッチングも最高である。バンドの顧問弁護士への「ハッピー・バースデー」に続いて演奏される「胸一杯の愛を」では、「クランジ」パートでのファンキーさを支えるタイトなリズムセクションの力強さとグルーヴ感、さらに「ブラック・ドッグ」へとメドレー。そしてアンコールにおける10分以上の「ハートブレイカー」では、ジミーのR&Bソロから「アイム・ア・マン」に続くなど素晴らしい演奏だ。





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"Heroes" / DAVID BOWIE [デヴィッド・ボウイ]

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 01.美女と野獣(Beauty and the Beast)
 02.ライオンのジョー(Joe the Lion)
 03.ヒーローズ("Heroes")
 04.沈黙の時代の子供たち(Sons of the Silent Age)
 05.ブラックアウト(Blackout)
 06.V-2 シュナイダー(V-2 Schneider)
 07.疑惑(Sense of Doubt)
 08.モス・ガーデン(Moss Garden)
 09.ノイケルン(Neuköln)
 10.アラビアの神秘(The Secret Life of Arabia)
〔ボーナス・トラック〕
 11.アブドゥルマジード(Abdulmajid (Previously unreleased track recorded 1976–79))
 12.ライオンのジョー(リミックス・ヴァージョン)(Joe the Lion (Remixed version 1991))


 NHKのドキュメンタリー番組『新・映像の世紀5』によれば、東ベルリン市民が体制に対して反旗を翻すきっかけとなったのが1987年(ベルリン壁崩壊の2年前)に西ベルリンで行われたボウイのコンサートであり、タイトルナンバーの「ヒーローズ」だった。このときボウイは設置されたスピーカーの4分の1をベルリンの壁の向こう側の東ベルリンに向けており、壁を隔てて彼の声を聴こうと東ドイツの若者たち数千人が集結したという。若者たちは当局による解散命令に従わず、このエネルギーがベルリンの壁崩壊へとつながっていったのである。2016年1月にボウイが亡くなったとき、ドイツ外務省の公式ツイッターが #Heroes のハッシュタグをつけて「Good-bye, David Bowie. You are now among #Heroes. Thank you for helping to bring down the #wall.」とツィートしたのは、このエピソードによる。
https://twitter.com/germanydiplo/status/686498183669743616

 77年10月にリリースされたこのアルバムは、前作『ロウ』(77年1月リリース)から短いインターバルで発表された。プロデュースはトニー・ヴィスコンティで、ブライアン・イーノやカルロス・アロマーなどの参加ミュージシャンは『ロウ』とほぼ同じ。重いインストがはいる点など、アルバム全体の雰囲気も『ロウ』と似ているが、こちらのほうがバンドとしてのまとまりが感じられ、演奏もロック寄り。ロック寄りになった理由の一つは、ロバート・フリップがギターで参加していることかもしれない。当時ニューヨーク在住だったフリップは、イーノから「hairy rock 'n' roll guitar」を弾いてくれという国際電話を受け、(「俺は3年ほどギター弾いてないけど」と言いつつ)ルフトハンザ航空のファーストクラスでベルリンに赴き、時差ボケでフラフラしながら「美女と野獣」にギターを入れたという。ジョン・レノンは遺作『ダブル・ファンタジー』のレコーディング中、「ボウイの”ヒーローズ”みたいな作品を作りたい」と漏らしていたというが、ボウイ+フリップ+イーノの化学反応がもたらした結果は、(一聴すると聴きやすいが)聴き込むと底知れぬ深みを感じる傑作を生み出した。

 タイトル・ナンバー「ヒーローズ」は、"Heroes"と複数形で、コーテーションマークで囲われている。ボウイは特別な意味を持たせたかったのだろうか。この曲はまた、アルバム・ヴァージョンとシングル・ヴァージョンで大きく雰囲気が異なる。よく耳にするのはシングル・ヴァージョンだが、徐々に盛り上がるアルバム・ヴァージョンのドラマティックさも捨てがたい。

 イーノ色が強く感じられるB面も興味深い。クラフトワーク風リズムの「V-2 シュナイダー」、タイトルからしてジャーマン・ロックの影響が明らかな「ノイケルン」、日本的なアンビエント・ミュージック「モス・ガーデン」など。私の中ではこの「モス・ガーデン」と「ワルシャワ」の違いが、『ヒーローズ』と『ロウ』のイメージの違いに直結している。B面の出色は「アラビアの神秘」。気怠げなヴォーカルが退廃的な魅力を漂わせる佳曲。これぞボウイ。


ヒーローズ <2017リマスター>

ヒーローズ <2017リマスター>

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2018/02/23
  • メディア: CD




ヒーローズ──ベルリン時代のデヴィッド・ボウイ (ele-king books)

ヒーローズ──ベルリン時代のデヴィッド・ボウイ (ele-king books)

  • 作者: トビアス ルター
  • 出版社/メーカー: Pヴァイン
  • 発売日: 2017/03/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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