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LISTEN TO THIS, EDDIE / LED ZEPPELIN [レッド・ツェッペリン]

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 1970年代後半から80年代にかけて、米国西海岸ロサンゼルスを中心にマイク・ミラードというテーパーが活動していたという。彼がLAフォーラムで隠し録りしたライヴはどれも素晴らしく、「会場の雰囲気を最もよく伝える究極のオーディエンス録音」である。いわゆる「ミラード音源」として私の手元にあるのは、ローリング・ストーンズ、デヴィッド・ボウイ、そしてツェッペリンだが、いずれもがフォーラムを舞台にした素晴らしい音源だ。

 彼の名前とマイクロフォンをかけて「Mike The Mike(Mic)」とも称された、マイク・ミラードについて説明したサイト(いずれも英語)。
 https://en.wikipedia.org/wiki/Mike_Millard
 https://kernelmag.dailydot.com/features/report/6498/the-tragic-tale-of-a-legendary-concert-taper/

要点は以下の通り。
・障がい者を装って協力者とともに車椅子で会場入りしていた。
・車椅子にレコーダー、帽子にマイクを仕込んでいた。
・カセットテープのレコーダーは日本製ナカミチ550。
・マイクはドイツ製AKGアコ-スティック・マイクロフォン。
・彼はフォーラムで録音に最も適した位置を知っており、それは6または8列目であった。
・騒がしい客にはお金を握らせて黙らせた。
・親しい友人には録音テープのコピーをプレゼントしていた。
・友人に渡したカセットのレーベルには、手の込んだデザインが施されている。
・彼は自分のテープがブートレッグとして拡散するのを嫌っていた。
・友人に渡すコピーには、一本ごとに異なるマーク(特定の場所でボリュームを変動させたり、カットするなど)が施されていた。
・彼は鬱病に苦しみ、1990年に自殺した。
・オリジナルのテープは自殺の直前にすべて廃棄された。
・『レッド・ツェッペリンDVD』のメニューに使用されている「永遠の詩」は、マイク・ミラードが録音したものがソースである。

 アメリカのバンド、ザ・ナショナルが2019年にリリースしたカセット・ボックス『Juicy Sonic Magic』は、マイク・ミラードが用いたとされる手法(The Mike Millard Method)で録音されたという。その制作をまとめた短編ドキュメンタリーでは、マイク・ミラードが作ったと思われるTDKのカセットテープの山やマイクの友人の証言を見ることができ、たいへん興味深い。

 レッド・ツェッペリンのミラード音源としては、77年USツアーでのLA6日間公演における初日6月21日の『Listen to This, Eddie』と3日目『For Badgeholders Only』は特に有名だ。私は両日の「テン・イヤーズ・ゴーン」「カシミール」「アキレス最後の戦い」計6曲をCDにして(ちょうど60分くらい)、車の中でよく聴いたものである。

【『Listen to This, Eddie』について】
 タイトルの『Listen to This, Eddie』におけるエディーとは誰のことかについては、2つの説がある。一つ目はエドワード・ヴァンヘイレンだというもので、彼が雑誌『ギター・ワールド』1981年1月号におけるインタビューで「Jimmy Page is an excellent producer. Led Zeppelin and Led Zeppelin II are classics. As a player, he's very good in the studio. I never saw him play well live. He's very sloppy. He plays like he's got a broken hand and he's two years old. But if you put out a good album and play like a two-year-old live. What's the purpose?"」と述べたことに対する「ライヴでもこんなにスゴいプレイなんだぞ~」という反論だという説である。そしてもう一つは、ツェッペリンのアルバムのレコーディング・エンジニアだったエディ・クレイマーのことで、「こんないい音で録れるんだぞ~」という意味であるというものだが、果たして真相は。

 この日はメンバー全員がとてつもなくハイテンションなのだが、なかでもボンゾのキレ具合は異常でオープニングの「永遠の詩」(『レッド・ツェッペリンDVD』のメニューBGMに使用された)から機関銃のようなフィルインの嵐。これがラストの「ロックンロール」(最初の♪ロンリロンリロンリでのフィルインと言ったら....)まで続くのだから、常軌を逸した演奏である。2曲目の「シック・アゲイン」では、スタートで観客をじらすようなモタつくような不思議な間があるが、おそらくギターの弦が切れてしまい、別のギターと交換しているのだろう。個人的にはしっとりした「テン・イヤーズ・ゴーン」とフィルインが飛びまくる激しい「アキレス」がいい。77年では珍しい「ハートブレイカー」も素晴らしい演奏。「アキレス」後のMCでは、ロバートがフィル・カーソンの紹介をしている。フィル・カーソンはアトランティック・レコードでツェッペリンを担当していたディレクターで、たびたびライヴに参加している(80年のフランクフルトでは、ビートルズ・ナンバー「マネー」でベースを弾いていた)。71年の初来日のときに日本刀を振り回したのはボンゾではなく、フィル・カーソンらしい(https://mora.jp/topics/interview/takumi07/)。『エディー』では、「ダスティ・スプリングフィールドと一緒に日本に行ったことがある」と紹介されており、「JAPAN」という単語がロバートの口から出てきて、おおっとなってしまう。次の「天国への階段」では、ジョンジーはエレピにまわってフィル・カーゾンがベースを弾いたのかもしれない。
 
手元にある『エディー』は以下のアイテム。
①『OUT ON THE TILES』(TALANTURA HB-001/002/003)
②『LISTEN TO THIS, EDDIE』(EMPRESS VALLEY EVSD-465/466/467)
③『L.A.FORUM 1977 THE FIRST』(LIGHTHOUSE)
④『Winston Unmarked 1st Gens from Millard Masters』(CD-R)

 この日の凄まじいドラミングに敬意を表して、①のジャケットはボンゾの写真。「テン・イヤーズ・ゴーン」は名演で、エコーがかかった♪And you knew you would~はまさに詠唱というにふさわしいが、ジミーのドリーミーなソロの途中で欠落があり、①は補填されていない。②は別ソースで補填。LIGHTHOUSEは販促用に「ギフトCD-R」をしばしば配付しているが、数年前には『Los Angeles 1977 1st Night:Winston Unmarked 1st Gens From Millard Masters』という3枚組が配付された。このCD-Rのディスク3には、補填に使用された「テン・イヤーズ・ゴーン」が収録されている。ミラード音源を「ソース1」、補填に使用された「テン・イヤーズ・ゴーン」を「ソース2」とするようで、ソース2は「テン・イヤーズ・ゴーン」1曲のみ。


 ところが、『エディー』の日から40年もたった2017年になってこの日の新たなソースがYoutubeにアップされた。その名も『LISTEN TO THIS, ERIK』。投稿者はゲイリー・バウアーという人物で、その後彼は自分が持っていたマスターをJEMSに渡してテープスピードの修正やリマスタリングが行われた。JEMSというのはリマスタリングを行うグループで、4人の頭文字がグループ名の由来らしい。そのうちのS=Stan氏はマイク・ミラードと親交があったとのこと。タイトルの『LISTEN TO THIS, ERIK』のエリックとは、この日ゲイリー氏と一緒に会場に足を運んだ友人で、今はロケット工学のエンジニアをしているという。

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・ゲイリー・バウアー氏の回顧
https://forums.ledzeppelin.com/topic/25142-listen-to-this-erik-a-looong-story-of-why-it-took-40-years-to-be-released/
・JEMSのメンバーによる解説
https://www.guitars101.com/forums/f145/led-zeppelin-1977-06-21-inglewood-garyb-master-via-jems-487761.html


ゲイリー・バウアー氏が録音したオリジナル・テープ版



JEMSによるリマスター版



 LIGHTHOUSEはこの第3のソースを使って、2つのアイテムをリリースしている。一つはゲイリー音源をミラード音源で補填した『LISTEN TO THIS, ERIK』、もう一つはミラード音源をゲイリー音源で補填した『LISTEN TO THIS, EDDIE』である。『LISTEN TO THIS, ERIK』を聴いてみると、演奏の音のこもり感はあるものの近くの観客の声(ERIKさん?)がリアルに入っていて、独特の臨場感がある。「テン・イヤーズ・ゴーン」でカット箇所に近づくと、つい「さあ、そろそろだ」と身構えるものだが、そのままの音で続いていくのは正直新鮮であった。

・『LISTEN TO THIS, ERIK』のメーカーインフォ
https://www.giginjapan.com/led-zeppelin-listen-to-this-erik/
・『LISTEN TO THIS, EDDIE』のメーカーインフォ
https://www.giginjapan.com/led-zeppelin-listen-to-this-eddie-3rd-edition/




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LIVE ON BLUEBERRY HILL / LED ZEPPELIN [レッド・ツェッペリン]

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 オフィシャル「伝説のライヴ」(72年)を始め、「ボンゾズ・バースティ・パーティー」(73年)、そして「エディー」「バッジホルダーズ」(77年)など名作の舞台となってきたLAフォーラム(行政区的にはロサンゼルス市ではなくイングルウッド市らしい)。中でも1970年9月4日のステージは「LIVE ON BLUEBERRY HILL」として有名な音源で、ロバート・ゴドウィンの『The Illustrated Collector's Guide To Led Zeppelin』(3rd ed.)には、" This is the first & most famous Led Zeppelin bootlegs ever."とある。ルイス・レイの『LED ZEPPELIN LIVE』に"mistaken as a legal record by many!"とあるように、1970年に隠し録りされたオーディエンス音源とは思えないほど音が良い。



 私が初めて「ブルーベリー・ヒル」をはじめて聴いたのは、1990年のことである。雑誌『GOLD WAX』(バロック出版)No.5の特集で「どんな手段を使っても入手しなければならない」と紹介されていたため、同誌の広告を見ながら通販で安価なハーフオフィシャル盤を買った。確かLIVING LEGENDだったと思うが、以来30年間にわたって「ブルーベリー・ヒル」を聴き続けている。現在手元にある「ブルーベリー・ヒル」は次の4種類。
 ・①TARANTURAの2枚組(T2CD-4)
 ・②EMPRESS VALLEYの2枚組(EVSD-1158/1159)
 ・③EMPRESS VALLEYの4枚組(EVSE-530~533)
 ・④WENDYの2枚組(WECD-21/22)
 ・⑤WENDYの9枚組(WECD-279~287)

 WENDY9枚組には6つのソースが収録されているが、2018年にGRAF ZEPPELINからリリースされた「ブルーベリーヒル」のメーカーインフォ[https://www.navyblue-sound.jp/product/34]によれば、どうやら7つのソースがあるらしい。そのうち最初にリリースされたソース1(モノラル)と1990年代にCDが主流となってから発掘されたソース3(ステレオ、WENDY盤ではソース2)はともに「定番音源」とされている。私としては、長らく愛聴してきた①(ジャケットには「RUBBER DUBBER」とある)がソース3なので一番愛着がある。③はディスク1と2がソース1、3と4がソース3という構成になっているのでで聞き比べができて面白い。但し、欠落部は補填されている(例えばMCやソース2の「幻惑されて」など)ので、それぞれ単一のソースで収録されているわけではない。②と④は複数のソースを使って完全収録を目指しているが、②の方が良い。②と③をあわせた6枚組もあり。
 ところでGRAF ZEPPELINのメーカー・インフォで使われているソース番号と、WENDY9枚組で使われている番号とはナンバリングが違っているのでややこしい(例えばRUBBER DUBBERソースはGZ盤ではソース2、WENDY盤ではソース5とされている)が、GZ盤でもコメントされているとおり「海外専門サイトなどでは、どうやら上記のようなカウントが一般的」のようである。例えばココ→ http://www.argenteumastrum.com/1970.htm#19703
 WENDY盤のメーカーインフォ https://www.mellow-yellow.jp/product/627

 この日は演奏自体もとても良く、ハイトーンのヴォーカルが炸裂するオープニングの「移民の歌」、ライヴでは珍しい「アウト・オン・ザ・タイルズ」、ジミーのソロが素晴らしい「サンキュー」「ハートブレイカー」など聞き所も多い。なかでもアンコールの「コミュニケイション・ブレイクダウン」は、メドレーで「グッド・タイムス・バッド・タイムス」~バッファロー・スプリングフィールドの「フォー・ホワット・イッツ・ワース」~ビートルズの「アイ・ソーハー・スタンディング・ゼア」に続くという珍しい展開。客席とのコミュニケーションもよく、「ブリング・イット・オン・ホーム」や「胸一杯の愛を」での客席との掛け合いは、オーディエンス録音ならではの臨場感に溢れている。




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