ZIGGY STARDUST : THE MOTION PICTURE / DAVID BOWIE and THE SPIDERS FROM MARS [デヴィッド・ボウイ]
ZIGGY STARDUST : THE MOTION PICTURE
30th Anniversary 2CD Set (2003)
【Disc 1】
01. Intro (incorporating "Beethoven's Ninth Symphony")
02. Hang on to Yourself
03. Ziggy Stardust
04. Watch That Man
05. Wild Eyed Boy From Freecloud
06. All the Young Dudes
07. Oh! You Pretty Things
08. Moonage Daydream
09. Changes
10. Space Oddity
11. My Death
【Disc 2】
01. Intro (incorporating "William Tell Overture")
02. Cracked Actor
03. Time
04. The Width of a Circle
05. Let's Spend the Night Together
06. Suffragette City
07. White Light/White Heat
08. "Farewell Speech"
09. Rock 'n' Roll Suicide
音だけでも十分楽しめるが、シアトリカルなステージが魅力であるボウイのこと、一度映像を見てしまうと音だけではやはり物足りなくなってしまう。「ジギー・スターダスト」のオープニングでの「ah!」というため息、ドヤ顔とも言えそうな不敵で妖しい微笑、山本寛斎デザインの「出火吐暴威」マントを羽織ってマウス・ハープを吹く「クラックト・アクター」などカッコいいボウイが十分に堪能できる。がしかし、この映像ではミック・ロンソンもまたカッコよく撮られている。「円軌道の幅」(トニーヴィスコンティ曰く「クリーム風の曲」)で端正な顔を歪めながらひたすらドライヴ感溢れるギターを弾きまくる姿には、思わず引き込まれてしまう(この曲の最初と最後では、故リンゼイ・ケンプに師事していたボウイがパントマイム風の動きを見せる)。右手を挙げ、左手だけでギブソン・レスポール(トニー・ヴィスコンティも磨くのを手伝ったという)を弾く姿にもシビれる。
ラストの「ロックンロールの自殺者」の前では有名な解散宣言を行い、会場から悲鳴が上がるが、ヴィスコンティによれはロンソンだけは解散宣言を事前に知らされていたそうで、この点でもボウイのパートナーだったロンソンに対する「特別扱い」がうかがえる。知らされていなかったウッディ・ウッドマンジーとトレヴァー・ボルダーは、解散宣言直後の「ロックンロールの自殺者」では演奏に動揺が感じられたとヴィスコンティは語っているが、あまりよくわからない。
「グラム・ロック」というと、メイクや煌びやかな衣装から中性的~女性的な印象を持ってしまうが、このDVDを観ると、ボウイのステージは確かにグラマラスではあるが、一方ではパワフルでアグレッシヴでもある。トニー・ヴィスコンティがDVDコメンタリーで「アメリカのグラムはマッチョだった」とコメントしているが、こうしたエネルギッシュなステージもアメリカ・ツアーの成功には良い方向に働いたのかもしれない。
さてこの日のステージにはジェフ・ベックが飛び入りしたことでも知られているが、オフィシャル盤には収録されていない。飛び入りの様子は音も映像も残されており(アメリカのABCで放送された)、「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」の後にボウイがベックを紹介し、「ジーン・ジニー~ラヴ・ミー・ドゥ」、チャック・ベリーの「アラウンド&アラウンド」を一緒に演奏している(例の解散宣言は、ベックとの共演の後に行われた)。ベックとの共演部分について、ヴィスコンティはDVDのコメンタリーで興味深いエピソードを紹介している。曰く「ベックはギターソロに不満があるというので、後日スタジオでオーバーダビング用のソロを録りなおしたが、とても素晴らしい演奏で、2つのテイクを1つにつなげた」という。ベックもその演奏に満足していたようで、当然発売OKになると思っていたのだが、後日ベックから「やはり使わないで欲しい」という連絡が来た。ヴィスコンティは憤るわけだが、その理由というのが「ステージ上で自分のファッションだけが浮いている」というものだったらしい。確かに「ロック史上に残る記録」としては極めて重要なシーン&演奏だが、コンセプチュアルな映画作品という点から考えれば、やはりベックは「異物」感が強い。そのことをベックもわかっていたに違いない。
トニー・ヴィスコンティは、ボウイとマーク・ボランという2大グラム・スターのどちらにも深く関わっており、DVDコメンタリーでもたびたびボランに触れている。ヴィスコンティはボウイについて「完全燃焼した」とコメントしてるが、片や完全燃焼できなかったボランは、ボウイがジギーに終止符を打った後もグラム路線からキャラクターの変更が出来なかった。結果的に、アメリカ市場でも着々と成功したボウイと明暗を分けてしまったのだろう。
音源の方は良好なSBで、開演前にキーボードのマイク・ガーソンがピアノでボウイ・ナンバーのメドレーを華麗に弾く様子や、ジャック・ブレルのシャンソン・ナンバー「マイ・デス」を弾き語りする際に、静かにするように観客に求め、ざわめきがおさまらないため、スタートした演奏を中断する様子も記録されている(ABC版にも収録)。
この日のコレクターズ盤としては、解散宣言中の言葉を引用したタイトルのEmpress Valley Supreme Disc『THE LAST SHOW THAT WE'LL EVER DO』(2CD+1DVD)が、音も映像も楽しめるよいアイテムである。
Ziggy Stardust
The Width of a Circle
David Bowie & Jeff Beck - The Jean Genie / Love Me Do,Round And Round
ジギー・スターダスト・ザ・モーション・ピクチャー(CCCD)
- アーティスト: デヴィッド・ボウイ
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2003/03/29
- メディア: CD
DAVID BOWIE AT THE BEEB ~ ボウイのBBC音源 [デヴィッド・ボウイ]
ボウイのBBC音源がオフィシャルでリリースされたのは2000年。当然音質はよく、お宝アイテムであった。が、しかしボウイのBBC出演は多く、CD2枚に収めることは不可能である。当然オミットされた曲も少なくなく、結果として「オフォシャルには収録されなかったBBCモノ」という新たなコレクターズアイテムを生んでしまったのも否定できない。
ボウイのBBC音源で初めてCDとして出回ったのは、1989年にリリースされたとされる『AT THE BEEB 1969-1972』(Archive Productions:AP 89004)である。リリースしたArchive Productionsはツェッペリンの77年クリーヴランド公演『DESTROYER』(LZ 69801)や『SOMETHING ELES』(AP 89002)等を出したレーベルで、ジャケットに「Made In W. Germany」と印刷されていたせいか、たいへん高価であった(コレクターズ専門誌『GOLD WAX』No.5の広告には、4600円とある)。確かに『DESTROYER』のジャケットには「Made In W. Germany」とあるものの、『SOMETHING ELES』のジャケットには「Made In Italy SIAE」とあることから、実際にはイタリア製だったのだろう。『DESTROYER』と『SOMETHING ELES』は別業者がプレスしたという可能性もあるが、『AT THE BEEB 1969-1972』と『SOMETHING ELES』は番号から判断するに同じ業者によるプレスだと思われる。
Archive Productionsの『AT THE BEEB 1969-1972』とまったく同じ内容なのがTSP(The Swingin' Pig)からリリースされた『WHITE LIGHT / WHITE HEAT』(TSP CD 053)である。リリース元のTSP(The Swingin' Pig)は、かのビートルズ『ULTRA RARE TRACKS』シリーズをリリースしたレベールで、ヨーロッパを拠点にハーフオフィシャルながら良質アイテムを数多くリリースしていたレーベルである。WIkipediaドイツ語版に記事があり、またJim Berkenstat著(セバスチャン夏樹訳)『Black Market Beatles』(バロック出版)でもビートルズ絡みで紹介されている。ヨーロッパで訴訟となったこともあり現在は活動していないが、安価な良質アイテムを多数リリリースしていたこともあり、このレーベルのファンも多かった[http://www.theswinginpig.net/index.php]。当時の値段は『AT THE BEEB』の約半分くらいで、私もこちらを買った。『WHITE LIGHT / WHITE HEAT』の盤面には1990年のリリースとあるため、『AT THE BEEP 1969-1972』の方が1年早くリリースされたと言えそうだが、どっちがコピーかなどは不明である。『White Light / White Heat』収録テイクのほとんどは公式盤に収録されているが、「Unwashed And Somewhat Slightly Dazed」は別テイクで、エレクトリック・ギターが入ったバンド形態で演奏される『White Light / White Heat』収録版の方が公式版よりもよい。また選曲と構成もよいため、私の場合はオフィシャルよりも聴く回数は多い。『AT THE BEEB』・ 『WHITE LIGHT / WHITE HEAT』の内容は以下の通り。
01. White Light / White Heat
02. Let Me Sleep Beside You
03. Unwashed And Somewhat Slightly Dazed
04. Wild Eyed Boy From Freecloud
05. Bombers
06. Looking For A Friend
07. Almost Grown
08. Kooks
09. The Supermen
10. Ziggy Stardust
11. Five Years
12. Starman
13. Rock'n'Roll Suicide
14. Hang On To Yourself
15. Waiting For The Man
・1969年10月20日放送「Dave Lee Travis Show」:02/03
・1970年 4月 6日放送「Sounds Of The 70s:Andy Ferris」:04
・1971年 6月20日放送「In Concert:John Peel」:05/06/07/08
・1971年10月 4日放送「Sounds Of The 70s:Bob Harris」:09
・1972年 2月 7日放送「Sounds Of The 70s:Bob Harris」:10/11/14/15
・1972年 5月23日放送「Sounds Of The 70s:John Peel」:01/12/
・1972年 6月19日放送「Sounds Of The 70s:Bob Harris」:13
2000年にオフィシャルリリースされたのが2枚組『BOWIE AT THE BEEB』(2000年のライヴ盤が付属した3枚組もあり)で、基本はこの公式盤である。内容は以下の通り。ディスク2の2曲目「Oh! You Pretty Things」は日本盤のみの収録で、その後2016年にリリースされたアナログ盤4枚組に「目玉テイク」として収録された。日本盤ライナーではDISC2の14と15が09~13と同じ収録日になっているが、そうではなく16・17と同じ日の収録である。
[DISC1]
【1968年5月26日放送「Top Gear」】
01. In The Heat Of The Morning
02. London Bye Ta Ta
03. Karma Man
04. Silly Boy Blue
【1969年10月26日放送「The Dave Lee Travis Show」】
05. Let Me Sleep Beside You
06. Janine
【1970年2月8日放送「The Sunday Show」】
07. Amsterdam
08. God Knows I'm Good
09. The Width Of A Circle
10. Unwashed And Somewhat Slightly Dazed
11. Cygnet Committee
12. Memory Of A Free Festival
【1970年4月6日放送「Sounds Of The 70s:Andy Ferris」】
13. Wild Eyed Boy From Freecloud
【1970年6月20日放送「In Concert:John Peel」】
14. Bombers
15. Looking For A Friend
16. Almost Grown
17. Kooks
18. It Ain't Easy
[DISC2]
【1971年10月 4日放送「Sounds Of The 70s:Bob Harris」】
01. The Supermen
02. Oh! You Pretty Things
03. Eight Line Poem
【1972年 2月07日放送「Sounds Of The 70s:Bob Harris」】
04. Hang On To Yourself
05. Ziggy Stardust
06. Queen Bitch
07. I'm Waiting For The Man
08. Five Years
【1972年 5月23日放送「Sounds Of The 70s:John Peel」】
09. White Light / White Heat
10. Moonage Daydream
11. Hang On To Yourself
12. Suffragette City
13. Ziggy Stardust
【1972年6月5日放送「The Johnnie Walker Lunchtime Show」】
14. Starman
15. Space Oddity
16. Changes
17. Oh! You Pretty Things
【1972年 6月19日放送「Sounds Of The 70s:Bob Harris」】
18. Andy Warhol
19. Lady Stardust
20. Rock 'n' Roll Suicide
公式盤とほぼ同時期に登場したのが、『The Rise And Rise Of Ziggy Stardust Volume 1ー4』(SHOUT TO THE TOP 086/087/088/089)。これは2枚組×2の計4枚セットで構成されたセットで、中には当時のラジオを録音したものがソースと思われる音質もあり、また放送・収録された時系列に並んでいないという欠点もあるが、この4枚があればボウイのBBC音源はほぼコンプ出来るというスグレモノである。★は公式盤に未収のテイク。
The Rise And Rise Of Ziggy Stardust Volume 1 And 2
[DISC1]
【1967年12月24日放送「Top Gear」】
01. Love You Till Tuesday ★
02. When I Live My Dream ★
03. Little Bombardier ★
04. Silly Boy Blue ★
05. In The Heat Of The Morning ★
【1968年5月26日放送「Top Gear」】
06. When I'm Five ★
【1970年2月8日放送「The Sunday Show」】
07. Amsterdam
08. God Knows I'm Good
09. Buzz The Fuzz ★
10. Karma Man ★
11. London Bye Ta-Ta ★
12. An Occasional Dream ★
13. The Width Of A Circle
14. Janine ★
15. The Wild Eyed Boy From Freecloud ★
16. Unwashed And Somewhat Slightly Dazed
17. Fill Your Heart ★
18. The Prettiest Star ★
19. Cygnet Committee
・1968年5月26日放送の「Top Gear」では5曲が収録された。本作収録の「When I'm Five」と公式盤の4曲を併せてコンプリートとなる。
・1970年2月8日放送の「The Sunday Show」では全14曲が放送された。本作収録の13曲と公式盤の「Memory Of A Free Festival」を併せてコンプリートとなる。演奏されたものの放送されなかった「I’m Waiting For The Man」が収録されておらず、音質もいまひとつのため、当時のエアチェックテープが元ソースだと思われる。
[DISC2]
【1969年10月26日放送「The Dave Lee Travis Show」】
01. Unwashed And Somewhat Slightly Dazed ★
02. Let Me Sleep Beside You
03. Janine
【1970年4月6日放送「Sounds Of The 70s:Andy Ferris」】
04. Waiting For The Man ★
05. The Width Of A Circle ★
06. The Wild Eyed Boy From Freecloud
07. The Supermen ★
【1970年6月20日放送「In Concert:John Peel」】
08. Queen Bitch ★
09. Bombers
10. The Supermen ★
11. Looking For A Friend
12. Almost Grown Vocals – Geoffrey Alexander
13. Kooks
14. Song For Bob Dylan Vocals – George Underwood ★
15. Andy Warhol Vocals – Dana Gillespie ★
16. It Ain't Easy
・1969年10月26日放送「The Dave Lee Travis Show」では全3曲が演奏された。本作のみでコンプリート。公式盤には未収録だった「Unwashed And Somewhat Slightly Dazed」は、TSPの『WHITE LIGHT / WHITE HEAT』にも収録されていたテイクで、素晴らしい演奏である。
・1970年4月6日放送「Sounds Of The 70s:Andy Ferris」では全4曲が演奏され、このうち「The Wild Eyed Boy From Freecloud」のみが公式盤に収録された。本作のみでコンプリート。7曲目の「The Supermen」は放送されなかった。音はこもり気味だがベースラインがハッキリ聞こえて、いい感じである。
・8-16は「John Peel's Sunday Concert - 5 July 71」となっているが、正しくは71年6月3日収録・6月20日放送である。公式盤には5曲が収録されていたが、本作のみでコンプリート。
The Rise And Rise Of Ziggy Stardust Volume 3 And 4
[DISC1]
【1971年10月 4日放送「Sounds Of The 70s:Bob Harris」】
01. The Superman
02. Oh! You Pretty Things / Eight Line Poem
03. Kooks ★
04. Fill Your Heart ★
05. Amsterdam ★
06. Andy Warhol ★
【1972年 2月7日放送「Sounds Of The 70s:Bob Harris」】
07. Hang On To Yourself
08. Ziggy Stardust
09. I'm Waiting For The Man
10. Queen Bitch
11. Five Years
【1972年 1月28日放送「Sounds Of The 70s:John Peel」】
12. Ziggy Stardust ★
13. Queen Bitch ★
14. Waiting For The Man ★
15. Lady Stardust ★
・1971年10月 4日放送の「Sounds Of The 70s:Bob Harris」は全7曲(うち2曲はメドレー)が収録され、本作のみでコンプリート。
・1972年 2月07日放送の「Sounds Of The 70s:Bob Harris」は全5曲が演奏され、公式盤にもすべて収録されている(なぜか曲順が一部入れ替わっている)が、音感が全く違う。おそらくリマスタリング前のテイクと思われるが、「Hang On To Yourself」の凶暴なギターのドライヴ感と唸りを上げるベースは、公式盤よりもこちらの方がよいのでは....思えるほど。バックはロンソン、ボルダー、ウッディ・ウッドマンジーのスパイダーズ・フロム・マース。『ジギー・スターダスト』(72年6月16日)のリリース直前の収録(1月18日)であり、バンドとしての勢いが感じられる演奏。収録日の72年1月18日は、手元の資料によれば英国シェフィールドでのライヴ。忙しいスケジュールだが、いい演奏である。
・12-15は、1972年1月11日に収録された全4曲コンプリート。07ー11の一週間前に収録されたテイクだが、音はよくない。バックのメンバーも同じで、この日は英国ハイ・ウィカムでのステージ。やはり忙しい。
[DISC2]
【1972年 5月23日放送「Sounds Of The 70s:John Peel」】
01. White Light, White Heat
02. Moonage Daydream
03. Hang On To Yourself
04. Suffragette City
05. Ziggy Stardust
【1972年6月5日放送「Johnny Walker Lunch Time Show 」】
06. Starman
07. Space Oddity
08. Changes
09. Oh! You Pretty Things
【1972年 6月19日放送「Sounds Of The 70s:Bob Harris」】
10. Andy Warhol
11. Lady Stardust
12. White Light, White Heat ★
13. Rock 'N' Roll Suicide
【Bookended By DJ Talking With Rick Wakeman 21 Sep 1972】
14. John I'm Only Dancing
15. Lady Stardust
16. Star
・ディスク2に収録されているテイクは、ほとんどが公式盤にも収録されているが、これもまた音感が公式盤とはまったく異なる。端正なオフィシャルもよいが、攻撃的なミック・ロンソンのギターのカッコよさを堪能できるリマスタリング前のナマの響きもまたよい。ディスク2収録の各セッションにはピアノ(ミック・グラハム)が加わっており、公式盤に比べるとピアノが若干オフ気味のテイクもある。『ジギー』リリース前後の約1カ月という短い間に録音された3つのスタジオ・ライヴの記録であり、まさしくキラキラ時代のボウイの記録。1-5は「Top Gear 16 May 1972」とクレジットされているが、番組は「Top Gear」ではなく「Sounds Of The 70s:John Peel」である。いずれもイギリス・ツアーの合間を縫って収録された演奏だが、ボウイのエネルギーが伝わってくる演奏で、素晴らしい。
1968-72-Bowie at the Beeb: Limited Edition
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Virgin Records Us
- 発売日: 2000/09/26
- メディア: CD
Bowie At The Beeb: The Best of the BBC Radio Sessions 68-72 by DAVID BOWIE
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Virgin Records
- メディア: CD
Bowie At The Beeb [12 inch Analog]
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Plg
- 発売日: 2016/02/26
- メディア: LP Record
SONGS FROM THE WOOD / JETHRO TULL [ジェスロ・タル]
ジェスロ・タル『神秘の森~ピブロック組曲 』
01. Songs from the Wood / 大いなる森
02. Jack-in-the-Green / 緑のジャック
03. Cup of Wonder / カップ一杯の不思議~クリムゾン・ワンダー
04. Hunting Girl / 女狩人
05. Ring Out, Solstice Bells / 至高の鐘
06. Velvet Green / 優しい緑
07. The Whistler / 森の笛吹き
08. Pibroch(Cap in Hand) / ピブロック組曲
09. Fire at Midnight / 真夜中の灯
09. Beltane 【2003 Remastered Edition Bonus Tracks】
10. Velvet Green / 優しい緑 (Live)【2003 Remastered Edition Bonus Tracks】
初めてジェスロ・タルを聴いたのはNHK-FMで流れていたライヴ。伊藤政則氏がDJだったが、ヒョロヒョロと流れる奇妙な音が印象的で、それがジョン・アンダーソンが吹くフルートだった。中学生の頃に雑誌『ミュージック・ライフ』で見たジェスロ・タルの写真というのが、老人のような風貌のジョン・アンダーソンが短パンにハイソックス姿で片足上げてフルートを吹いているという白黒写真で、「これはきっとキワモノに違いない」と思ったものである。それに当時は「ロックにフルート」というのも違和感があった(後にキング・クリムゾン~プログレを聴いてからはそうした偏見もなくなったが)。
ジェスロ・タルは多様な音楽性を持っている。多様な音楽性を一つにまとめてあげているのがジョン・アンダーソンの唯一無比の強烈な個性であり、アルバムごとに異なるジェスロ・タルの音楽性は、その時点でのジョン・アンダーソンの興味や関心を体現しているのかもしれない。アルバムごとにカラーが違っているとはいえども、どの作品にも共通して感じられるのがトラッド/フォーク的な部分で、それが彼らに英国らしさを感じる所以だろう。そうしたトラッド/フォーク色がもっとも強く感じられる『神秘の森』(77年)の日本盤ライナーには「英国トラッド/フォーク的な方向へと大きくシフトチェンジ」とあるものの、トラッド/フォーク的な部分はこれまでの作品にも感じられたことであり、「大きくシフトチェンジ」という感じではない。
トラッド色の強い『神秘の森』だが、牧歌的ではなくロック色の強い作品でもある。「Hunting Girl」や「Pibroch(Cap in Hand)」のようにロックなギターとドラムに、フルートをはじめリュート、ホイッスル(「The Whistler」)などのトラディショナルな楽器がはいるという不思議なサウンドがこのアルバムの聞き所。これまでの難解で韜晦な歌詞とは異なり、「Jack-in-the-Green」(イギリスの May Dayの祭りで使われる伝統的なキャラクター)といった伝承や、森や緑など自然をイメージしたものが目立っており、この点でもトラッド的な部分が強く出ている作品となっている。なかでもアルバムのオープニングを飾るタイトル・ナンバー「大いなる森」はこのアルバムのエッセンスが詰まった名曲(ニュージーランドだけシングルとしてリリースされた)。冒頭のコーラスが印象的だが、コーラス以外のアレンジも凝っており、フルート・ソロへ向かって徐々に厚みを増していく楽器のアンサンブルも技巧的で素晴らしい。
この作品には正式メンバーとしてキーボードが2名クレジットされている。新たに加わったのがデヴィッド・パーマー(ディー・パーマーDee Palmer名義でソロ作品をリリースしている)で、タルのデビュー作から前作『ロックンロールにゃ老だけど』(76年)までオーケストラアレンジでクレジットされていた。この作品で感じられるアレンジ面での進化は、彼の正式参加によるところが大きいように思われる。「Hunting Girl」や「Ring Out, Solstice Bells」ではシンセが活躍しているが、これも彼の参加によるものだろう。特に「Ring Out, Solstice Bells」は転調や手拍子を使った変拍子のリズムが「いかにもジェスロ・タル」という感じで、最後の鐘の音まで一気に聴かせてくれる名曲だ。
ジェスロ・タルの最高傑作というと、まずは『ジェラルド』(72年)、次いで『アクアラング』(71年)か『パッション・プレイ』(73年)というのが順当だが、本作も捨てがたい。エレクトリック・トラッド・ロックの名盤である。2017年には40周年記念の5枚組(CD3枚+DVD2枚)がリリースされた。